ISO22000方式と総括表方式

投稿日: 2012/12/28 7:08:41

HACCPと一般的衛生管理(PPまたはPRP)の構築を、総合衛生管理製造過程で行ってきたところは、製造工程のすべての段階における危害分析を行ったあと、防止処置、PPかCCPか、管理基準、モニタリング方法、改善処置、検証方法、記録文書名、の、一連の内容を決定し、表内をすべて書き込んだいわゆる「総括表」を完成させている。

そして異物混入対策で重要な一般的衛生管理については「7.衛生管理の方法」の10項目について構築する。

ということは「7.衛生管理の方法」で一般的衛生管理を構築してから、次にもう一度総括表の作成時に、各製造工程における詳細に検討する、ということになる。

「7.衛生管理の方法」での検討は、製造環境をクリーンにするために、図面、現場、衛生管理の行動、ルールなどの視点から行う。そしてCCPの決定を検討するために「総括表」を作成するのだが、同時にこの時、各製造工程で行う一般的衛生管理の方法を詳細に検討する。

つまり、一般的衛生管理の検討を、製造環境面と、製造工程別と、2つの面から行うことになる。違う面からダブルチェックすることになり、緻密な一般的衛生管理が構築できるようになる。

これに対してISO22000の方法は、製造工程別に、現存の管理手段(7.3.5.2)、ハザードの明確化(7.4.2.1~2)、許容水準の決定(7.4.2.3)、ハザード評価(7.4.3)で「除去または低減が必須か」と「危害の重大さ起こりやすさ」の両面を検討してから、管理手段の判定(7.4.4)において7つの面から検討して、PRP(PP)かOPRPかCCPか、どれになるかを決める。そしてこの後の検討は、OPRPとCCPのみについて進めていく。

OPRPとCCPは、管理内容(工程、ハザード、管理手段、許容限界、6項目のモニタリング手順、修正是正処置)を決めていくことだ。そしてPRPについて、これらの管理項目は要求されていない。

なぜなら、PRPについては[7.2.3]の[a)〜k)]で詳細に検討しているからだ。

一言で言えば、一般的衛生管理は、総合衛生管理製造過程ではダブルチェック、ISO22000では[7.2.3]だけで行うようになっている。

さてそこで、多くの食品工場にとっては、クレームの多くは異物混入や、生鮮であればドリップ、変色、鮮度劣化で、これらの対策は一般的衛生管理だ。加熱工程が無い生鮮製品は金属探知機以外は一般的衛生管理でやるしかない。加熱工程があっても、加熱後、冷却してからパッケージするまでの工程の環境が汚染されていれば、菌では食中毒の危険、異物が入ってしまえば異物混入クレームになるからだ。一般的衛生管理の構築は安全対策の少なくとも8割以上になるだろうし、それだけの活動が必要だ。

あるISO22000の認証取得した総菜や弁当の工場は、取得後2年して認証を返上してしまった。理由は審査がCCP、OPRP、そしてマネジメントを重視した審査で、最も重要な一般的衛生管理について、直接の指摘や改善への掘り起こしがあまり無いと受け取ったからだ。この業種はほとんどが一般的衛生管理での管理になり、審査はその参考にあまりならないと判断したようだ。ならば審査にかかる費用とエネルギーを、自主的な一般的衛生管理の強化に使った方がよいとなったわけだ。

それでは、一般的衛生管理を強力にするためにどうしたらいいかだが、ISO22000に、総合衛生管理製造過程のダブルチェックの方式を入れる方法がある。

ISO22000の[7.2.3]で、11項目ある一般的衛生管理の構築をする。

そして次に、製造工程別にハザード分析からOPRPとCCPを決定するが、この後そのまま一般的衛生管理になった工程についての管理内容も検討していくのだ。

ISO22000の管理内容についての要求は、CCP、OPRP、PRP、それぞれについて、CCPは全項目、OPRPは許容限界だけ無くても良いがあとはすべて、PRPはすべて無くても良い、となっている。

しかし、一般的衛生管理においても、作業場の温度、冷蔵庫の温度、ふき取り検査の許容限界、これらの手順と頻度は決められるなら決めた方がよい。それなら、製造工程すべてにおいて(PRPについても)、可能であればその管理内容を検討することで、より強固な一般的衛生管理になる。

このことはISO式に言うと「プロセスコントロール」になる。

工場全体の「5S」だけでなく、更にそれぞれの工程(プロセス)、あるいは作業室の中で、どのような安全対策を取るかを更に追求することになる。

例えば冷蔵庫の取っ手は汚染されているが、原材料受入担当は取っ手をさわってもそのままでいいが、下処理室の担当は、原材料を出すのに取っ手をさわったら、原材料を直接さわる前に手洗いをしなければならない、ということになる。でないと下処理した原材料に取っ手の汚染が移ることになるからだ。

食材を入れるバットの洗浄後検査では、加熱調理に使うものと、加熱後パッケージまでの間に使うバットでは、許容限界は後の方が当然厳格でなければならない。ATP検査でなら、加熱工程の器具の許容基準は1000以下で、逸脱した場合は注意。加熱後では200以下で、逸脱したら再洗浄をし原因解明と改善。バットだけではなく、トングやスコップなどの調理道具や、従事者の手指も同じだ。

プロセスごとに一般的衛生管理の管理内容、基準を詳細に検討し、出来る管理内容を追加することで、より安全な一般的衛生管理が構築できる。