カビ対策事例いろいろ

投稿日: 2012/12/11 8:21:20

カビに悩んでいる食品工場は非常に多い。先日のセミナーでは、4社の方からカビ対策をどうしたらいいかの質問があった。

カビといってもいろいろあり、専門的に分析をすると大変なことになるが、食品工場で困っているのはいわゆる黒カビで、壁や天井に付着し始めるとどんどん増殖していき、大掃除やカビ防除剤、薬品などを使って除去しても、しばらくしたらまた出て来る。カビはゴミも含めた異物混入の元になるし、製品のカビ問題になれば回収まで発展してしまうような深刻な問題にもつながってしまう。

新築の工場でも1-2年ほどの間に天井や壁にカビが発生してしまうことが実に多い。これは湿度が多いまま、多湿のまま使っていくと発生してくる。カビというのは空気中にいくらでもあり、目には見えないが、これが付着して増殖を始めると目に見える形に増えてくる。

カビ問題を根本的に無くすには、湿度対策をすることである。いくら清掃をしても、カビが増える環境のままなら、またすぐに増殖をする。カビを増殖させないためには、湿度43%を、毎日3時間以上キープすることである。この環境を維持させると、カビは増殖をしないという研究データがあり、こういったデータを元に家電メーカーは除湿機の設計をしているようである。

湿度43%まででなくても、出来るだけ低湿にすればかなり増殖は防げる。55%ぐらいでもかなりの効果があるようだ。

除湿機と扇風機を使う

ある食肉加工工場では、冷蔵庫の隣の部屋と廊下の壁が、夏場に汗をかき、水滴となって流れ落ち、びっしょりとぬれている状態が続いていた。当然カビ問題にもなっていた。長年こんなものかとあきらめてその都度カビ清掃をしていたのだが、除湿器を勧めたところ、簡単に解決してしまった。約3万円也の家庭用除湿機を買ってきて、試しに汗をかく廊下側の壁の横に置いた。除湿して乾燥した空気が出るほうを壁に向けておいたところ、壁の汗はすぐに無くなってしまった。

別の食肉カットセンターでも、冷凍庫の横の包材置き場、冷蔵している生ゴミ置き場の廊下側の壁に汗をかき、床に水たまりとなっていた。そこで、包材置き場の方は汗をかく壁側の棚をキャスターの付いた篭車にして、壁から15センチほど離して置き、空気の流れをよくすると同時に、動かして簡単に清掃できるようにしてから、除湿機を入れた。この部屋は小さいのでこれで解決したが、生ゴミ置き場の廊下側の方は長く広いので、扇風機を併用することにした。塗装後の乾燥等に使う業務用の扇風機を5千円で買ってきて、首振り状態で問題の壁全体に風が当たるようにし、横に除湿機を置いたら解決した。

ある豆腐工場では、壁から天井にびっしりと黒カビが定着し、保健所や販売先のバイヤーが視察に来ると「じっと壁を見られる」状態だった。全てのカビを除去するための清掃業務の見積もりを取ったらかなりの金額になったので、どうしたらよいか相談を受けた。しかし、清掃しても湿度がそのままならまた元通りになってしまうのは確実だ。そこで、今までは温度しかモニタリングしていなかったので、同時に湿度を見るようにした。カビ対策として湿度を見るのにいい時間は朝の工場稼働前である。結果、70%以上、雨でも降ったら更に10%も多いことがわかった。これではカビが増えるのは当たり前である。

かなり除湿した水が出るはずなので、ホースを付けて排水溝に直接落とせるタイプの除湿機を3台入れた。動かしっぱなしにしてしばらく湿度データを見てみたら、十分に効果が出ていることを確認したので、安心してカビ清掃が出来るようになった。これなら費用をかけて清掃する価値がある。

蒸気を拡散させない

あるコンニャク工場では高い天井のカビがひどく、元は白かったのがほとんど黒くなっている。特にひどいのは最終殺菌をするスチーマーのある天井一帯で、ミキシングをする下処理側の天井はそんなに汚れていない。明らかにスチーマーの蒸気が原因だ。カビ清掃をしても、蒸気がこのままではまた元にすぐに戻る。

スチーマーからの蒸気の状態を見てみたら、スチーマーの上にダクトはあるのだが、蒸気の半分はそこから漏れて天井に向かって上っていく。スチーマーの天井からダクトまでは1.5メートルほどあるので、ダクトからスチーマーの天井のすぐ上までビニールカーテンを下ろして囲った蒸気が漏れないようにしたのだ。

ビニールカーテンの設置前との湿度差は何と15%もあり、たったこれだけの設置で十分な効果が出たことがわかった。そして、除湿機を入れ、カビが増殖しない状態に出来てから業者によるカビ清掃を行なった。

ムースやジャムなどを作っている工場では、パッケージ機のちょうど上に冷房の吹き出しがあり、そこに結露が溜まり、下に落ちて困っていた。同じ作業室の横のエリアには蒸気釜が数台並んでいて、これから出る蒸気が冷房吹き出し口に行き、そこで結露になっていたのだ。蒸気釜のある側の天井には排気口があるのだが、そこからあふれた蒸気が冷房吹き出し口に行ってしまっていたのだ。

そこで、パッケージエリアと蒸気釜エリアの間に天井から2メートルぐらいの吊り壁を設置した。こうすると、冷房吹き出し口から出た空気は、蒸気釜から出て来た蒸気を押し戻して、蒸気は蒸気釜エリアの上の排気口に全て行く。結果、パッケージ機上の結露も無くなったのである。