回収訓練による記録の効率化とコストダウン

投稿日: 2013/02/01 5:38:53

ISO22000では回収手順が要求されているが、同時に訓練も求められている。

回収手順はフローチャートなどで文書化しているところが多いが、実際に回収まで行ってしまったところはそれほど多くないだろう。そんなにしょっちゅう回収していたら企業はつぶれてしまう。

しかしながら、クレームはどの企業でもあり、内容によってはそのロットがどこにあるのかを慌てて調べた所はかなりあるだろう。

ある惣菜製品で、臭いがあるという連絡が顧客から来たが、食品の安全性が心配になっている最近の状況から、このような連絡は時々あり、今度の場合もそうでは無いかとのんびり構えていたら、第2報が別のところからあり、慌てて対象のロットが何か調べ、どこに行っているかを探り出そうと作業を開始したが、記録が煩雑で、あちこちに連絡と確認を取らなければならず、特定するまでにかなり時間がかかってしまった。

そんなことをしている間に第3報が来て、わかっている販売店に行って買い集めてきてチェックしてみたら、一部に確かに問題があり、これまでに結構時間がかかっていた為、回収についてどうするかを検討し始めたところに回収指示が来てしまった。

2.訓練をしないと有効性がわからない

このような事例は、回収に至るまで行くことはあまり多くは無いと思われるが、その手前までは経験した企業はあるだろう。結果的に問題無かった例も多いと思われるが、騒ぎが済んでしまえば、ああよかったで終了、ではせっかくの経験が活かされない。

そこで回収訓練を行なう。ISO22000では回収訓練まで行なわれていないと不適合になる。

回収訓練の目的は、手順化した回収訓練が正しいかの検証になるが、重要なことはロットの特定から、その製品が今どこにあるかを、出来るだけ短時間に突き止めることだ。

早くわかればわかるほど対策が早くとれる。遅くなればなるほど、その製品に本当に問題があれば、それがどんどん拡散し、食中毒の危害があるとなったら、人的被害がどんどん広がることになる。

以前、イカの珍味にサルモネラ汚染があり、その原因が分からないまま時間が経って行ったら、複数のメーカーの製品にも広がり、広範囲に影響が出てしまったことがある。原因はイカ珍味用の原料を出荷したメーカーが元だったが、分かった時には何週間かの時間と、この製品群の大きな回収、そしてこういった製品への消費者の不安と不信が残った。

3.回収訓練の方法

製品が小売りしている例では、工場担当者が小売店の一つに行って製品を購入し、店を出たら「この製品に問題がある」と仮定して「回収訓練」をスタートする。

まず、ロット番号を工場に電話で知らせてから時間を記録する。

工場側は、そのロット番号から、対象製品がどれだけの範囲になるかまず推定しなければならない。その訓練が、ガラスなどの異物の混入だった場合、その製造日のロットになるが、漬け込みや熟成をした原材料からだと、その製品の原材料準備段階まで遡り、そこから製造したロットが数日間に及ぶこともあるだろう。

そして、対象ロットが判明したら、その対象製品がどこにあるかを突き止めることになる。また同時に、原材料に問題があると仮定されれば、トレーサビリティ追跡にもなって行く。

もちろん販売先への連絡までの訓練はできないし、しない方がいいので、これは電話番号と担当者の特定までで良い。

そして、最終的に、その時点で、そのロットが、どこにあるのかを追跡することになる。ある程度倉庫に残っているのか、出荷した分はまだ卸売り問屋か配送センターにあるのか、一部又は全部が店頭にまで行ってしまったのか、最初の販売先への電話をしなくても、今までの流通サイクルから推定することは出来る。

ある流通グループでこの回収訓練を行なったら、最初は数日かかってしまったので、これではダメだと改善にかかった。

何がうまく行かないかは、多くのところで複合している。

トレーサビリティシステムが機能していない、原材料の検収・保管・使用日の記録がつながっていない、下処理や使用前の解凍などの記録ができていない、製品と使用原材料の記録がつながっていない、出荷伝票と製品ロットのつながりが掴みにくい、出荷先とロット番号がつながっていない、いちいち記録をファイルから探しだして追いつめて行かなければならない、そのファイルが現場にまだあり、全部集めなければならないしその間の記録はどうする……

ロットの追跡は、記録をよく分析すればわかるようになっていても、それには時間を要するのでは、いざという時に役立たない。そしてこれは、記録がバラバラで、連動せず、結果的に手間がかかり、効率の悪いシステムになっているということになる。

このことは、ロットの追跡だけでは無く、全ての記録の非効率化ということで、運営コストがかかっているということになる。

ということは、回収訓練により、記録の状況を評価出来ることになり、ダメなら改善し、効率化とコストダウンを実現出来ることになる。

第一回目に数日かかってしまったグループでは、半年に一回ほどの訓練を数回行ない、3年ほど後には数十分ですむようになり、結果的に記録の効率化に成功した