投稿日: 2012/12/28 5:52:14
HACCPの内容:一般的衛生管理を土台に、HACCP本体を行う
食品工場における衛生安全管理の目的は、
1. クレームを無くす → 異物混入などの「不快」な製品を出さない
2. 製品を安全にする → 食中毒やけがを無くす(食中毒菌が強くなってきている)O-157、サルモネラ、SRSV、黄色ブドウ球菌・・・というものになるが、この活動が確立されていくと、
3. 製品を安定させる → 品質を安定させる → いつも美味しい製品にする
ということまで出来るようになる。
例えば、揚物焼き物製品では、調理後の中心温度を「72℃以上」にすることで、食中毒菌を死滅させることが出来る。この温度が「安全温度」になるのだが、同時に、何度まで温度を上げても良いかも同時に行うことになる。これ以上高温だと、何度まででも安全になるが、高くなるにつれて、ジューシーでなくなり、硬くなり、美味しくなくなり、重量も減っていってしまい、ろくなことはない。そこで、例えば「85℃以下」で止めることにすると、72〜85℃の間で安定して調理が出来るようになり、安全で、なおかつ美味しい製品が出来ることになる。「85℃」は「品質限界」あるいは「美味しさ限界」になるわけだ。このことが、
4.製品が売れるように → 競争力を高める(取引基準になっていく)
という企業として非常に良い結果にすることが出来る。
また、衛生安全管理というのは「効率が悪くなるのではないか?」という誤解があるが、決してそんなことはない。
HACCPを行うための物理的なものに「動線とゾーニング」があるが、これを整備することは、動線によって製造工程が一方方向に流れ、製品の動きが最短になり、人の動きが少なくなる。人の動きは「1歩が0.6秒」といわれるが、これが少なくなるということは、生産効率が高まるということになる。また、ゾーニングとの相乗効果で交叉汚染の危険性が減る。
安全で美味しい製品が安定して出来ることは、不良品が減り、ロスが減り、ミスが減り、失敗が減り、工場の稼働率が高くなることにつながる。このことは、
5.企業力を高める → 効率化、収益性を高める
ということになるのだ。これがHACCPの効果で、要するに良いことだらけになる。
HACCP構築の基本は、衛生的な工場にし、そこで安全な製品を作るようにする。
家庭で言えば、きれいな台所にしてから、美味しくて安全な料理をする、ということになる。
衛生的な工場にすることを「一般的衛生管理」といい、ピラミッドの土台の多くの部分を占める。これがしっかり行えるということは、異物やバクテリアが少なくなることなので、異物混入のクレーム減少につながり、品質劣化が少なくなるので鮮度向上になり、美味しく安全になる環境が整うことになる。この土台が出来てから、72〜75℃に調理をする、ということを行うことで、安全で美味しい製品が出来るが、これがHACCP本体なのである。
したがって、一般的衛生管理は、全ての食品工場や厨房で共通のことになる。
一方HACCPは、製品ごとに違ってくる。
なぜならば、食品によって製造方法は違うからである。揚物焼き物は72〜85℃だが、食パンは96℃、牛乳は130℃で2秒あるいは75℃で20分、ハムやソーセージは63℃で30分、となる。
一般的衛生管理でやることは、手洗い、清掃、洗浄、教育、水、排水廃棄物管理など、基本的なことがかなりのものになるが、HACCPは、調理後温度チェックと金属探知機など、劇的に危害を防止できる、その製品特有のことになる。
一般的衛生管理とHACCP本体の組み合わせで安全に美味しくするわけだ。
ISOとHACCPの関係
一般的衛生管理とHACCPを運営管理するために重要なことは、きちんと運営されているかを「監査」することである。
監査には内部監査と外部監査があるが、HACCPの12手順に監査は入っていない。
そこでこれを行うために、独自の監査方式を構築するか、あるいはISO9000の品質マネジメントシステムで行う方法がある。
一般的衛生管理とHACCPを構築して運営をするが、それが正しく行われているかどうかを監査するのをISO9000で行うわけだ。
そして、これを一緒にしたものが、多分来年ぐらいに発効するISO22000(食品安全管理マネジメントシステム)になる。
ということは、これから食品企業がISOを考えるということは、ISO22000を目指せばよいことになる。
でも、これはまだスタートしていないので、構築リストはまだでていない。
ではどうすればよいかというと、まずこれから一般的衛生管理とHACCPを構築し始めることだ。
構築には1〜2年はかかるので、その間にISO22000が発効する。
そうしたら、その中に、構築したHACCPを組み込めばよいわけである。