投稿日: 2012/12/12 6:04:50
IEは、インダストリアルエンジニアリングで、製造を効率的に行い、コストダウンまで実現出来る科学的手法だ。
HACCPは安全を追求するので、製造効率が悪くなったり、コストアップになってしまう、と考えている人は多いのだが、決してそんなことはない。
安全性と生産効率、更にはコストダウンも実現することも出来る。
一時保管を無くして、生産効率とコストダウンを実現
ある加工食品の製造工場では、下処理したあと、加熱工程に入り、その後冷却工程に入ったあと、インナーパックをする。
その後外包装に入るのだが、外包装作業の場所が離れているために、インナーパックをしたあと、コンテナに入れ、フィルムをかぶせ、キャスターに乗せ、冷蔵庫にいったん保管したあと、しばらくしてから外包装ラインに運んでいた。
HACCP構築で、製造動線とゾーニングを検討していたら、このインナーパックから外包装に持って行く動線が、作業場横の通路を通るため、問題があることがわかった。
現場を見てみると、インナーパックが終わってから出て来る場所に、手作りの別の製品の場所がある。そこで、この手作り製品の場所をもし別の場所に移動出来れば、ここで外包装が出来る。長い製造の歴史の中で、いつの間にかこうなってしまっていたことに気が付いた。
検討したところ、手作りはラインで流しているわけではないので、作業台と機器を別の空いている場所に移動しても問題無い。
そこで、改善にかかることにした。
改善事項は、
今までゾーニングのことは考慮しないままやっていたが、HACCP構築のためゾーニングをしたら問題点がわかった。
手作り製品の製造場所を移動し、この場所に外包装ラインを入れた。
これによって、一時保管作業という無駄が無くなり、同時に保管と移動時の安全確保のために行っていた一時的なフィルムかぶせ作業の作業と時間コスト、フィルムの使用が無くなった。
一時保管冷蔵庫を、製品冷蔵庫に転換した。
ゾーニング間を簡易隔壁やビニールカーテンで仕切り、交差汚染を無くした。
この結果、何が出来たかというと、
製造時間の短縮によるコストダウン。
一時保管作業関連の大幅なコストダウン。
移動時間とコストの大幅なコストダウン。
安全性のアップ。
といったことだ。
移動時間やそのための作業は製品に付加価値を生まないので、無い方が良い。
HACCPを実施すると交差汚染や安全管理のために、新たなコストが発生してしまう場合もあるが、この例のように、逆に大幅なコストダウンが出来ることも多い。
移動が長いということはそれだけ異物混入場所があることになる。この例で出来たように、移動の距離の短縮は、コストダウンになるだけでなく、異物混入危険率のダウンにもつながる。
コストダウンと安全性のアップを同時に実現したことになる。
ボトルネックを無くすことで、コストダウンと安全性アップを実現
ボトルネックとは、飲料の入っているボトルは首(ネック)のところが細くなっていて、中の飲料を出すとき、一気に出ない。
飲料はこれでいいのだが、製造で大きな「待ち受け」があると、その工程での待ち受け時間が増え、ここのネック一つだけで製造効率を落としている。
こういう場所をボトルネックと呼んでいる。更に待機中に異物混入の危険がある。
ある総菜工場では、加熱後の急速冷却工程の前に、待ち受けのキャスターがいつも渋滞している状態だった。ここがボトルネックなのはわかっていたのだが、どの程度問題になっているのかを検証してみることにした。もう一台急速冷却機を入れるかどうかの検討のためだ。
このようなとき、製造工程それぞれで、何分で作業をしているか観察計測をしてみる。
この例の製造工程では、分かりやすくごく概略で書くと、
原材料出し(約30分)→下処理(約30分)→加熱調理準備(約30分)→加熱調理(約30分)→冷却(約60分)→パッケージ(約30分)→外包装(約30分)、
となっていた。
全製造工程で、冷却だけが60分で、あとは大体30分ぐらいで終わっている。
こんな状態だから、製造作業の始めは冷却前の待ち受けはそれほどではないが、次第に溜まりだし、長蛇の列になって行き、置き場所が無くなってくるので、その前の工程で調整するしかなかった。だから前工程で無駄な作業者のコスト、つまりは待ちながら何もしていない時間コストがかかっていた。この無駄な待ちコストは、冷却後も同じだ。なかなか冷却が終わらないので、作業者は手持ちぶさたで、何もしていない時間が多い。
この冷却60分の部分が、製造時間を決めていたことになる。
学校の先生がよく言う言葉で「一人が5分遅れたら、それ掛ける人数分の時間を奪っている」というのがあるが、同じことだ。
冷却機を一台追加し、ここを30分にすれば、全ての工程を30分にすることが出来る。
製造コストが半減するわけだ。おまけに待ち受けの滞留中での異物混入の危険性も大幅に低減することになる。
まとめ
製造工程に無駄が無いか?
移動を減らすか無くすことが出来ないか?
ボトルネックは無いか?
どこか、これらを調べるために
各工程の製造時間を調べてみたらどうか?
ボトルネックを見つけたら、
機械を入れる、人を増やす、その工程を分割してみるなどの処置が出来ないか?
ゾーニングと製造動線の改善と一緒にこれらの改善は出来ないか?
製造時間が逆に短い部分があったら、
前後の製造工程に移行出来ないか?
IEに関する書籍はたくさん出ている。
HACCPにIEを統合することで、安全性とコストの両方を追求出来る。