効果的な監査を費用をかけないでやる

投稿日: 2013/05/20 5:29:35

HACCPの運営で重要なことは検証と監査だ。

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検証→製品や原材料の検査、厨房内の汚染調査、安全性の点検と維持、HACCP計画が正しいか

監査→決められたことが行われているか、ごまかしていないか、より良く出来ないか

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HACCP7原則の6番目に「検証:検証方法の設定」が入っているが、監査は明確には入っていない。そのためCodexの一般原則では「ISOのようなシステムを使って」監査を行ったほうが良いとの記述がある。これはISO22000構想の考え方の1つでもある。

監査は「内部監査」と、「会計監査」と同じで外部から行う「外部監査」の両方が必要で、これはISOと同じだ。内部監査だけでは第三者の目がないので欠陥がある、外部監査を厳重にすればよいが費用がかかる。そこで内部と外部をどう組み合わせて監査をするかと、そのための費用のバランスを考えなければならない。出来るだけ低コストで効果的な監査をやりたい。

内部の相互監査

内部監査は、HACCPチームや、チームが担当者を選んで定期的に行うことが多い。簡易的なのを「衛生パトロール」などと呼んで毎月、本格的なのを「内部監査」として半年ごと、といった頻度になる。

内部監査の1つの方法として、内部のグループがお互いに監査をする「内部相互監査」がある。ある総菜工場では、調理、寿司、盛りつけ、値づけと振り分け、配送、事務所、の5ブロックに別れていて、このグループ間での相互チェック機能を持たせている。寿司を調理が、寿司が盛りつけを、盛りつけが値づけと振り分けを監査するわけだ。清掃がされているか、記録をごまかしなく付けているか、運営が決まり通り行われているか等をチェックする。相互の組み合わせは時々変え、新鮮な目で監査できるようにされている。

この方式は、いくつもの自社工場を持っているところが、相互に監査する方法にも使えるし、協力工場まで含めて行うことも出来る。

複数の工場や、リテイルで多店舗を持つ工場の、ファックス監査

数十以上の小売り店舗を持つ本部が、各店舗での衛生管理が行われているかを監査あるいは監視するにはスーパーバイザーを巡回させたりといった手間がかかる方法になってしまう。こういう場合ファックスを利用する手がある。

毎月、日を決めないで、指定日のチェックリスト、記録を、ファックスで提出させる。例えば、4/1に、「3/15の清掃チェックリストを送ること」というファックスを、本社から各店舗(工場でも可能)に一斉に発進する。きちんと実施、記録していないと、すぐに返信できない。その次は、5/10に、「5/1のCCPの記録を送ること」という方法。費用がかからない。いつ、どんな指示が来るかわからないので、きちんと行うようになる。

施設が大型の場合の監査例

監査者は、工場内を6つの区域にあらかじめ分けておく。監査の始めにサイコロを転がし、出た数字の場所を集中して監査する。こうすると、どこを集中して監査されるかわからないので、いつもしっかり衛生管理を行うようになる。

これは外部監査でも同じで、ニュージーランドの保健所の監査担当者は、大型の輸出工場を毎日数ヶ所監査しなければならない。1ヶ所にいられる時間はせいぜい1時間なので、工場内をくまなく見れない。そこで自分の担当の工場内を6ヶ所に分け、工場に着いたらサイコロを転がすわけだ。日本の保健所の方もこういった方法はどうだろうか?

グループ相互監査

著者のコンサルティング方法の一つに「グループ構築」がある。これは異業種10工場を1つのグループにして、研修とお互いの視察チェックを毎月交互に行いながら、現場中心の活動を通じて構築をする2年間のコースだ。2年終了後、3工場を組んでお互いの監査を年に2回行う。A工場をBとC工場が協力して監査し、BをAとCが監査するという形になる。

これは相互監査の効果だけでなく、自社の工場でなかなか現場に定着しかなったり、内部の担当者の言うことをなかなか理解できない状況がある場合、外部の2社から言ってもらうという「外圧」を利用することまで出来る。他社から言われると納得するわけだ。また、他業種の工場をいろいろ視察できるので、孤独でなくなり、視野が広くなり、アイデアや工夫がいろいろ出て来る。異業種をグループにするということは、競争相手がいないために、気楽につきあえるからだ。HACCPの土台となる一般的衛生管理はどのような工場でも基本的には同じなので、違う業種でも問題はない。

いくつかの監査方法を組み合わせる

例えば、毎月「衛生パトロール」をHACCPチームが行い、年に2回監査チームを組んで本格的な監査を行ない、それとは時期をずらせて「工場相互監査」を年2回行ない、さらに時期をずらせて外部監査機構の監査を行う、といったプログラムを組めば、多方面から監査が出来、欠点や問題点も見つけやすくなる。