トイレの衛生管理

投稿日: 2013/04/01 4:28:55

「トイレに入る時は着替えていますよね?」と保健所の方に言われた工場長は「え〜〜、あの、その……」

こういう経験をした人は最近多い。

ノロウイルス食中毒の増大が止まらない中、2012年1月に名古屋市でノロウイルス食中毒注意報・警報が出されたりと、対策に大わらわで、トイレの使用について厳しく要請されて来ている。

これにはどこも苦慮していて、実際どう対応しているかというと、上着を脱いで、トイレの外なり更衣室にかけて入る、

あるいは更衣室で着替えてからトイレに行き、また更衣室に行って作業衣に着替えてサニタリールームに向かいという大変なことを行っている工場もある。

個室内のロックが汚染される

ノロウイルスを持っている人が用便のあと手を良く洗わないと億単位のウイルスが手に付着しているという。

それが取っ手などを通じて他の人に移り、食品に入れば食中毒につながって行く。

ここで「良く手を洗わないと」という所だが、それなら手を洗う前にはもっとウイルスが付いているわけで、そうすると、用便を終えて個室を出る時にロックを外すが、そのロックは手を洗う前の最も汚染された状態で触る……

そう、ロックが最も汚染されるのだ。

そして、ノロウイルスを持っていない健康な人がその個室に入り、出る時そのロックに触る。

「手を良く洗いましょう」と活動はしても、個室を出る時はその手洗いの前なのだ。

ノロウイルスを持っている人は食中毒になっていて休んでいるはずだから、工場内には居ない、と思うかもしれないが、症状が出ないで仕事をしている人も居る。普通の人は対処療法で静かに寝ているが、症状の出ない人は、本人も知らないうちに治ってしまう。

ノロウイルスを持っている人が工場内にたとえ居なくても、大腸菌は誰でも持っているから、ロックは汚染される。

ロックが汚染されていて、それで手が汚染されても、そのあと手洗いするから大丈夫、とはなるが、手を完全に洗うことは出来ないので、危険は充分に残る。

この対策は手袋をしてからのとどめの消毒と、トイレ個室内の肘開けロックだ。

手袋の上からの塩素系消毒でとどめ

一つは、やっぱり基本で、トイレを出る時良く手を洗い、消毒し、そのあとサニタリールームに入ってももう1度手洗いをして、消毒することだ。

このサニタリールームでの手洗い後の消毒はアルコールで一般的には行われている。しかしノロウイルスにはアルコールは効きにくく、塩素系なら効く。

そこで塩素系で手の消毒をすると、今度は手荒れの問題が出て、黄色ブドウ球菌の発生につながってしまう。

もう一つの問題は、このあと手袋を付ける時、手でつまんで手袋を取り出すが、この時手袋の表面を手で触れ、ウイルスと細菌が残っていれば汚染されてしまう。表面が汚染された手袋を付けることになる。そしてその手で食品を触ることになる。大変だ。

それならどうするか……

手袋を付けてから、塩素系の殺菌水に浸して殺菌する。そして拭いてから作業に入ればいい。しかし塩素の臭いが食品に付着しては困る作業も多いので、この場合は水道水で流してから拭いて乾燥させて作業に入る。

面倒だが、これだけノロウイルス被害があれば、ここまで注意するに越したことは無い。

駅のトイレなど頑丈な構造の必要なトイレのロックは大型で肘開けが出来るものになっていることが多い。

扉は使っていない時には開いた状態で、中のロックが肘開けならば、手を使わないで開け閉め出来る。水を流すレバーを膝で押すなどの対応が出来れば完全だ。

個室を出て、手洗いの水道栓を肘開けにする。ISO22002の「13.2 要員の衛生の設備及び便所」では「手動ではない手洗い用のシンクをもっている」とある。

あとは出入り口だが、自動ドアかスイングドアならいい。アプローチが長ければ扉無しにしている所もある。もちろんこの場合のトイレの場所は製造作業室から完全に離れた所でなければならない。

設備と場所

ISO22002では「直接製造、包装、又は保管区域に通じていない従業員衛生施設をもっている」とある。

作業室に直接通じる場所にトイレがある工場は結構あり、とりあえず「緊急用」として対応し、工場の改修時などに撤去や移動などをしていた。

1階が製造、2階が事務所や更衣室などの工場なら、1階にトイレは作らずに2階にすべきだ。1階に設置する場合でも、サニタリールームからいったん出てからにする。

新設する場合なら、更衣室に併設あるいは奥にしてトイレを作れば、更衣室で作業衣を脱いで、下着状態でトイレに入り、終わったら作業衣を着てサニタリールームに行くことが出来る。