オーバーフローは汚染の発生源

投稿日: 2013/05/02 3:33:45

オーバーフロー付きのシンクが日本の工場や厨房では一般的だ、というよりも、何も言わずにそうなっている。新しいシンクが来たらオーバーフローが当たり前のように付いている。

このオーバーフローの中の汚染がどうなっているか、ある工場で調べてみた。

「オーバーフローの中を洗浄したことがありますか?」

「え?! 考えたことありません」

ということで、カバーを外して高圧洗浄機を入れたら「すごい臭いが飛び出して来た!」

とんでもない汚染にびっくりして、工場中のシンクを洗浄することにした、ということを聞いたので、「洗浄後、カバーはどうするつもりですか?」と質問したら、

「もちろん元に戻しますけど……?」

この対策の正解は、元に戻してはいけない、だ。

カバーを取り去る

オーバーフローに入る溢れる水は汚染されている。それが通るから当然内部は汚れる。しょっちゅうオーバーフローになっているシンクは毎日洗浄しなければならない。オーバーフローにならないシンクでも汚水は跳ね水としてオーバーフロー内を汚染するから、定期的に、例えば毎週洗浄しなければならない。でないとオーバーフローから汚染が拡散して行く。しかし、カバーを外すのが面倒だ。それならカバーを取り去って使えば良い。

さて、それなら、無い方がいいのではないか?

オーバーフロー無しのシンクが標準

米国ワシントンDCのあるレストランに行ったとき厨房を見せてもらったが、シンクにオーバーフローは付いていない。ニューヨークのサウスブロンクスに2005年頃に魚卸売市場が移転したので見に行ったら、設置してあるシンクは全てオーバーフローが付いていない。

衛生管理を考えたら、オーバーフロー付きのシンクは使ってはいけない。欧米の食品施設では当たり前だ。汚染はひどいし、洗浄しにくいからだ。オーバーフロー無しならコストも安いし洗浄する必要もないからこれもコストダウンになる。

流水解凍などで常にオーバーフローを使うなら別だが、そうでない場合はオーバーフロー無しのシンクにするべきだ。

塞げば洗浄しなくてよい

では、今あるオーバーフローつきのシンクはどうしたら良いか。オーバーフローの中をしっかり洗浄してから厚手のステンレステープを貼って塞いでしまえば良い。これが最初のパラグラフの解決方法だ。

洗浄不要になる。そして新しく購入する時はオーバーフロー無しを指定する。

洗浄しやすいオーバーフローは出来ないか

オーバーフローはシンクの背面に入り込んでいるから洗浄しにくい。直接こすれないから汚れが蓄積してしまう。

オーバーフローを使う作業で毎日洗浄するなら泡洗浄をする。泡をオーバーフロー内に充分送り込み、20分以上置いておき、汚れを充分浮き出させてから水を流す。こうすればいつもツルツルなので、ブラシを入れられなくてもいつもきれいだ。

汚れが蓄積してしまっている場合、パイプ内洗浄ブラシを入れて充分磨き上げれば、あとは毎日の泡洗浄さえ怠らなければ、ブラシ無しできれいに洗浄出来る。

さて、厨房機器の製造販売社に提案したい。密閉されず、外側を伝って落ちるオーバーフロー機能を持ったシンクは出来ないだろうか? 安く。

設置は、壁面に接着するか、離す、あるいは離せるように

シンクを壁面に設置すると、シンクの背と壁面の間に隙間が出来るが、ここがカビ、細菌汚染になる。わずかな隙間はカビも細菌も大好きだ。

新フルトン魚卸売市場のシンクの写真をよく見て見ると、シンクの壁面側になる場所の、シンク水面よりも上、10センチほどせり出ている部分が壁面に接着して設置してある。接着面にはシリコンで目詰めしてある。ていねいな仕事だ。

接着してあれば洗浄不要だ。そしてその下は当然10センチほど壁面から離れているので、これなら洗浄しやすい。まとめて泡洗浄する時ここも一緒にやればいい。

パイプ類は壁面側に浮いている。床を這っていないので洗浄しやすい。このシンク部分で床に設置しているのはシンクの4本の足だけだ。よく見ると脚の先端は細くなっていて、設定面積を出来るだけ少なくしている。欧米は大ざっぱなように見えるが、こういう所、健気に神経使っていて面白い。

もう一つの方法は、壁から離すことだ。壁面側に設置する場合でも、15センチ以上空ければ間が洗浄しやすい。あるいは壁面ではなく、壁を背にして作業が出来るように作業室の中央に置く。

オーバーフロー無しシンクの低価格化を

2013年初頭、オーバーフロー無しシンクを価格を調べてみると「標準では無い」ということで、オーバーフロー付きよりも高いようだ。製造コストからいったらオーバーフロー無しの方が安くなるにもかかわらず、現実は反対。

これから業界標準になって行くことを期待する。

著作:株式会社 フーズデザイン 加藤光夫