カルフォルニアの監査システム

投稿日: 2013/04/26 2:06:23

先日サンフランシスを訪問し、在住のセーフティーアドバイザー、安田健彦氏から、カリフォルニアのフードサービスの衛生管理に関する興味深い話を聞いた。

安田氏は、全米で唯一人、米国食品衛生管理資格者証書を全て日本語で講義、試験を行う公認講師で、実際にレストランの監査活動も行っている。

それは、テレビ局スタッフのレストラン潜入取材から始まった。

1997年11月ロスアンゼルスのテレビ局が「厨房の裏事情」と言う題で、隠しカメラ潜入レポートが放映された。

結果はひどいものだった。

手を洗わないで食材に触る。食べ残した皿にあった、潰していないレモンを、次の料理に入れて出す。出来た料理をつまみ食いする……

これに対する市民の反応はすごいものだった。衛生を管理しなければいけない保健所が「一体何をやっているんだ!」

保健所の面子まるつぶれ。

意地をかけた検査、監視が開始され、ロスアンゼルスカウンテイの全レストランの衛生度合いにより、A.B.C.のランク分けにしていった。

そしてこれがラベル泥棒の出現になった。最低の「C」ラベルを貼られた店が「A」ラベルの店に夜中行き、ラベルを剥がして持って行ってしまう事件だ。(これは現在も続けられているが、最近ではほとんど「A」になり、衛生管理が良くなってきているという)

そして2000年1月1日よりカリフォルニア全州の食品衛生管理資格者制度(食品営業施設のHACCPシステム)になっていったのである。

更に2005年よりサンフランシスコがグレードシステム制度「74の検査項目」を採用、全てのレストランが衛生の度合いが点数で分かるように表示され、お客に良く見える店頭に掲示する事を義務付けている。

具体的にどう行われているかというと、まず、74項目で、百点満点の監査をおこなう。

70点以下は、営業停止。

そして、監査結果シートと、点数を、店の店頭に表示する。というものだ。

店頭に表示された監査結果シート

スコアカード:左の枠に点数が表示される

74項目は、いくつかのパートに別れていて「食品の温度」「食品」「有害小動物・害虫」「水・消毒」「下水」「営業・運営」「什器、機器、棚、キャビネット」「嘘の無い表示」「壁・天井・床」「配管設備・機器排水」「便器・トイレ・更衣室」「廃物・店・雑役」といった分類で、ソフト面、ハード面、管理面と、立体的なものになっている。

いくつかの項目と違反例をあげてみると、(監査番号.内容:違反例)

6. 食品の安全が脅かされ緊急を要する状態:何種類もの違う種類の貝類が雑然と一緒の容器に入っている。生の食品と調理済み食品と、食品間汚染が起きるような作業をしている。

21. 間違った方法で行われた解凍違反:冷凍食品が溜め水で解凍されている。

22. 許可されていない作業場での調理リスク:水洗い用シンクに飛沫除けが無い。

23. 食品の保存:食品が床から6インチ(15センチ)以上の高さに保管されていない。

25. 食品が顧客から保護されていない:スニーズガード(咳やくしゃみなどから食品を保護するカバー)なしで食品がディスプレイ、提供されている。

31. 什器、機器、棚、キャビネットなどの不衛生:残渣が付いたり汚れがこびり付いている。

32. 食品が接触する表面の銃器類の消毒:食品が触れる表面を、4時間毎に洗浄消毒がされていない。

36. 不正表示:新鮮な魚と広告されているが実は冷凍魚。

52. 貯蔵庫での保管:ナイフが無造作に機器の間、箱の下、棚の上などで保管されている。

55. 消毒に関する違反:再使用する食器を洗うときに、3槽シンクのうちの2つだけしか使用されていない。

57. 内装違反:厨房内の床が、段ボールや認可されていないビニール、板が敷かれている。

68. 一般的な換気扇:グリルが完全に換気フードの下の設置されていない。6インチの張り出しが無い。

72. 雑役、必要な品物、機器:モップ、バケツ、箒などが、不適切な場所に置かれている、破損している、清潔にされていない。

また、科学的検査も行われている。例えば寿司の酢飯では「PH4.6以下(強)」という規制があり、現場での簡易検査が行われる。

この監査は、予告無く行われる。そして監査結果はインターネットに公開される。ページでは店の監査点数とコメントが出て来る。この保健所サイトは当然一般顧客が活用している。

著者が12月始めに行ったレストランを見てみた。

MASA(MASA`S):有名な和風フレンチレストラン。88点で「ハイリスク」となっていた。ここは非常に良い店なのだが、多分、刺し身などの生食系が多いため、こうなったのではないかと思う。

FARALLON :老舗の大型レストラン。100点。

この手法はニューヨーク市でも行われており、雑誌「ニューズウイーク」で「ニューヨークのレストランに行くときは、まず保健所のホームページにアクセスして、衛生状態を確かめてから予約しましょう」という記事まで出てしまった。

監査システム、項目、発表、そしてこの効果を見ると、日本でもこういった考え方を参考にすべき点が多い。レストランだけでなく、食品工場に使える方式がたくさんある。

※ この詳しい内容解説のセミナーを、06年2月9日に行ないます(2/10分は満席のため締め切りました)。