机ひとつを動かして毛髪混入問題解決

投稿日: 2013/04/08 3:59:45

総菜の寿司部門に供給する酢飯と舎利玉を製造している東北のある工場では、自動炊飯システムを使わずに、ガス窯を何十台も並べて炊飯している。

作業は大変だが、この方が酢飯が美味いからだ。

おかげで売れ行きは良く、二つ目の新工場を造るまでになってきた。

しかし、生産量が増えて行くにつれて、毛髪を始めとする異物混入問題が増えてきた。

自動炊飯でなく一釜ずつ調理しているわけなので、作業者がそれぞれ釜に絡み、パッケージも酢飯にしたあと人が行なっているために、異物混入が多いわけである。

いわば手づくりなので、製造量が増えるに比例して、クレームも増えていくというジレンマなのだ。以降「」(カギカッコ)内はHACCPリーダーのつぶやき。

「舎利は上手く作れるようになったが、どうしても解決できないものがあった。それは異物混入である」「出荷 数量が増えて行くに連れて異物混入が多くなってきた・・ 頭痛の種になってきた、その時の記録がないのが大変残念です」

そんなところに、HACCPの構築活動が始まった。2年間かけて構築を行っていくものだ。

HACCPなどという英語の言葉で、難しいのが始まったと、最初は恐怖で硬くなっていたが、無理せず、出来るところから、工夫をして、みんなで考えて、といった進め方で安心し、まず一般的衛生管理を構築していった。

そして動線とゾーニングのところまで進んできたところ、

「髪の毛は人から落ちる・人が動くと風がおきる・なるほど!」となり、

「そういえば 炊飯室にデスクがあって 伝票、炊飯紙、ライスパック、宛先シール等が置いてあり、作業員は必ずそこに集まるようになってるのだ。」と気が付いた。

この工場は、工場の端に事務所やロッカーがあり、そこからサニタリールームを通って工場に入るようになっている。

サニタリールームを出たところに伝票などの備品を置いたデスクがあり、その先に、炊飯室、加工室、製品置き場、洗い場、原料搬入口、原料庫などが並んでいる。

工場は長細い構造なので、全ての作業室からこの備品テーブルに来るので、途中でかなりの人の動線が一緒になっていたのである。伝票などは事務所から持ってくるのでこのほうがアクセスは良い。

しかし考えてみれば、工場の各作業場所からのアクセスは長くなり、全て途中で交叉しているわけだ。そこで、

「このデスクを移動すれば… とおもった」

そして、

「即刻 製品置き場の方に移動した」

この発想がすごい! 全体の動線をどうしようと考えたのではなく、単純に「デスク」を移動したのである。

事務所からの伝票類をデスクに持って行くのは1日1〜2回で頻繁ではないのでこれは問題無い。

製品置き場というのは事務所とは反対側にあり、その入り口辺りにデスクを移動すると、各作業室からこのデスクへのアクセスは最短になるだけでなく、全ての作業室のほぼ中央に位置するために、作業者同士は交叉しないことになる。

作業者の動線交叉が無くなれば「人が動いて風が起きその人から毛髪が落ちて拡散する」危険が減ることになる。

「その結果345日間無事故 無違反 と言う物凄い成果をだしてしまった!」

365日というのではないところがリアルなのだが、あともうちょっとで1年というところで1件クレームが出てしまったのだ。

しかしそれにしてもすごい結果が出たもので、異物混入クレームが「激減」したと自信を持って言える。

「あの 謝りつづけた日々の苦労がなくなり いや〜ハセップって すごいな!って 痛感」

「今では 現場の職人さん・パートさん・マネージャーさんともコミュニケーションがとれて、硬い・やわい・若干の異物混入の問題を 私と現場担当者とで解決してもらうようになった、大変仕事がやりやすくなっている」