検証分析の結果、傾向を改善に活かす

投稿日: 2013/04/25 8:31:53

食肉をスライス、切り身、ブロック等にカットをしてトレイパックやガスパックにしているある西日本のパックセンターで、製品の検証を続けていたら、いくつかの製品で日持ちが悪い傾向があることがわかった。この検証は、パック後の製品の掲示変化を辿ってみたもので、パックした日、一日後、二日後、といった形で、1週間まで調べていた。

その結果、多くの製品は問題無かったが、豚のバラ、腕、肩肉等のスライス、焼き肉用のスライス等、三日目、四日目あたりから急激に細菌カウント数値が悪くなるのだ。詳しく見てみると、初期数値も他の問題の無いものよりも多い。

良く無いと言っても、許容レベルではあるので、大きな問題にすべきかどうか迷う所だ。

バラ、腕、肩といった部位の問題かと推測したが、これらの部位を使った他の切り身やスライスの製品で問題は無い。

スライスした後トレイに入れる時、従事者の手の汚染が関係しているとも考えたが、このパックセンターは、スーパーマーケット等、陳列して販売するためのきれいな盛りつけをする所では無く、外食等の業務用のパックなので、手でスライスを並べる時間のかかる作業はせず、スライスしたらそのままトレイに入れるので、これが原因ではないようだ。一応作業者の手の汚れを調べてみたが、問題は無い。

何かこれには共通の問題があると見て、会議で意見を出し合ってみた。部位、スライス機、従事者、重量等、いろいろな条件を見てみたら、ひとつの共通点が出て来た。

「ワンオール」と言われているスライサーを使った製品が悪いのだ。これは、普通のスライサーが回転する大きな丸刃で、一枚一枚スライスしていくのに対して、ワンオールは、百枚ぐらいの刃が並び、そこに肉のブロックを押し込むと、一気に刃の枚数分だけスライスが出来る。一気に大量のスライスが出来る業務用のスライスにはもってこいの機械だ。欠点はスライスの厚さが決まっているので、顧客によって微妙に違うスライスの厚さ要望に対しては対応できない。

このワンオールは、大量の刃がある関係上、洗浄がしにくい、分解洗浄が大変なのだ。実はこの問題は他にも同じ傾向が報告されている。

ワンオールが共通点ではないか、となって来た時、検査室の女性が「あのー、私も以前からそう考えていたのですが……」と言う。なぜそれを早く報告しなかったのか聞いてみたら「検証の結果が、他よりも悪いですけど、決められた範囲内だったので……」

そこで、この問題は二つの改善に進めた。ひとつは、ワンオールの集中した検証を行い、多分これが原因だと思うので、洗浄方法の改善、あるいはスライサーそのものの変更を検討。もうひとつは、検証数値が限界内でも、その傾向を見て、悪い場合は報告を義務づける、という規定にした。

東日本のある総菜工場で、コロッケ等のパン粉を付けた製品を検証していた。これも細菌カウント検査だ。この製品も業務用で、パン粉をつけてから冷蔵か冷凍にして総菜店や外食店に納品する。製造が次第に増え、手作業でさばききれなくなったためと、コストダウンのために、パン粉付け機を導入することにした。

テスト欄の製品を検証した所、問題無かったので、そのまま新しい機械で製造を続けていたのだが、数日後から次第に細菌カウント数値が悪くなって来た。悪化の傾向をたどって来たのだ。

レシピは変えていないし、温度管理、原料もそのままなので、問題は導入したパン粉付け機ではないかと推測したのだが、洗浄後、機械各部を拭き取り検査し、さらに翌朝作業開始前に検査しても、問題は無い。

そこで、製造の最初の製品と、昼前ぐらいの製品がどうなっているかを検証した所、最初の数個は問題無いが、昼前の製品はだめだった。それならいったいどの時点から悪くなっているのかを、費用はかかるが詳細に検証してみたら、最初の数個の後ぐらいから悪いという結果になった。

これはいったいどういうことだかわからなかったが、この機械の清掃洗浄について細かく見てみた所、機械内部で動いているベルトコンベアがあり、これが洗浄できないことがわかった。小さな指が入るぐらいの窓があり、これでのぞけるようになっているだけなので、洗浄できないのだ。分解洗浄するにはかなり手間がかかる。

そしてこのコンベアをやっとのことで検査したら、たっぷりと汚れていた。

機械を洗浄した後、最初に出てくる数個は問題無いが、その後、汚れて洗浄していない内部コンベアベルトの汚染が、その後の製品に付着していたのだ。そして日とともにこの内部コンベアの汚染がひどくなっていったわけだ。

この機械はすぐに返品になった。

ある鮮魚加工センターで、HACCPを構築し始め、製品の検証の所に来た。イカそうめんを検証してみると、これも限界範囲内だがあまり良い数値とは言えない。他の刺身製品が問題無いので、この機械の問題だろうと推測して、最初の製品、昼前の製品の両方を比較してみたら、昼前の製品が悪い。このスライサーもワンオールと同じように数十枚の刃で一気にイカを細くスライスする構造になっている。そして刃が通る所はイカを送る歯車の間の細い隙間で、この間に汚れが次第に溜まっていき、使っているうちに製品に影響するのだろうとなり、泡洗浄にし、細い隙間の中をブラシで歯を磨くように洗浄したら、問題は無くなった。

検証分析の結果、傾向を改善に活かしていますか?