HACCPチームの作り方

投稿日: 2013/05/20 6:01:10

どんな組織でも同じだが、HACCPにおいても、チームの構成によって、計画がうまくいくかどうかが決まってくる。HACCPの場合は特に、運営をするのが現場なので、チームの編成によって運営が左右される。チームの作り方のポイントを述べてみる。

1.管理者だけで構成してはならない、現場のリーダーを入れる。

管理者だけのチームの例としては、専務、工場長、品質管理室長、工務部長、といった形でチームを組むと、多くは失敗する、現場が言うことを聞かなかったり、理解できずに運営がうまくいかないことになる。何故かと言うと一般的衛生管理の基本であるサニテーションは勿論、CCPの監視測定、例えば温度チェックにしろ、その記録にしろ、全て現場で行なう。したがって、現場がまず理解していないと、何故それを行なうのか、何故サニテーションのチェックまでしなければいけないのか、何故頻度を決めなければならないのか、といったことがわからないからである。

食品工場というのはいくつかの部署で成り立っている。一般的には、入出荷と保管、下処理、調理加工、パッケージ、検査、といった形である。一般的衛生管理はすべての担当部署でそれぞれの内容で行なうことになり、CCPは、調理加工での加熱温度と、パッケージでの金属探知機というようなことになる。したがって、それぞれの担当部署のリーダーが、何故行なうのか、どう行なうのかを理解し、自分の部署で効率的かつ効果的に行なうのかを工夫して構築していかなければならない。

各部署のリーダーが現場担当者全員に自分で解説をして、自信を持ってリードできることが望ましい。HACCP計画を各部署のリーダーと管理者が一緒に立て、部署リーダーが現場に持ち込み、実施し、そこから出て来た記録や工夫を部署リーダーがまとめ、それを今度はHACCPチームに持ち上げ、より良い計画と次のステップに役立てる、という構図になるのである。

このために、HACCPチームは、入出荷と保管部署のリーダー1名、下処理から1名、調理加工から1名、パッケージから1名、これら現場の各リーダーに加えて、検査(品質管理室)から室長、それに工務あるいは営繕から1名、といった形で構成するのである。

2.HACCPチームリーダーの権限

こう言った現場と管理からなるチームをまとめるチームリーダーは、一般的には工場長か同等クラスが行うようになる。資格としては、工場内を広くわかっていることと、勿論リーダーシップがあることである。そして、大事なことがもう一つ、ある程度の費用ならばすぐに出せることである。

HACCPをバックアップする一般的衛生管理では、その場ですぐに直せるものも多く出て来て、ちょっとした費用をかけるだけで、それまでよりも飛躍的に改善されることが多い。

ある総菜工場に行ったところ、非常に蝿が多い、原因はごみ捨て場。生ゴミが散乱していて、ゴミ入れコンテナーの中は腐敗臭が充満している。大量の蝿が群がっていた。たまたま週に3回のゴミ収集車が来たあと早速覗いてみたら、単に水を流しただけで、汚れは落ちていないし、大きなくぼみがあり、そこに腐ったゴミがたっぷりと残っている。ゴミコンテナーの中は、全く水を流していない状況で、コロニー状になったばい菌の塊が白く鈍く輝いているのである。このまわりは蝿の天国だ。さらにびっくり、次のゴミがその中に放り込まれたのである。ああ、夏なのに寒けがした。

こんな場合、直ちにゴミ入れコンテナーを新しく買いに行き、同時に水と残渣がたまってしまうくぼみのある置場を修繕し、大掃除と消毒を行なえば、すぐに蝿はいなくなる。このための費用を、稟議を回したり、会議にかけたりしている間に、いつまた蝿混入クレームが来るのかわからない。こういうときにすぐに金を使える権限が必要だ。金をかける価値がある。修繕した後、清掃頻度と担当者を決め、清潔維持運営していけば、工場の蝿が劇的にいなくなる。

3.重要なオブザーバー3者

正規のHACCPチームメンバーに加えて、まず、トップがオブザーバーで入る。HACCPは活動というレベルではなく、マネージメントの問題で、経営姿勢そのものである。であるから、経営者トップ自ら加わることが必要になる。これからHACCPに取り組むという「トップ宣言」を出すところから全従業員の意識改革は始まる。

次に、原材料仕入れ担当責任者である。トレーサビリティーが問題になっているように、自分の工場内でいくら安全管理をしても、危険や不安のある原材料が入ってきていては効果も半減である。現に、異物混入の多くの原因が原材料由来であることが多い。原材料が安全になったらどれだけクレームが減るかを考えるとため息が出る工場は多いことだろう。そのため、原材料サプライヤーに対しても、自社工場と同じようにHACCPに取り組んで欲しいと要請をするようになるわけで、そのためには直接窓口である原材料仕入れ担当者がHACCPを理解し、その構築まで出来ることが必要である。

そして、営業担当者である。HACCPを構築し始めていることそのものが営業になる。HACCP構築の苦労話を販売先に漏らせばよい。そして最も重要なことは、自社の製品を納入後、どのように安全に管理してもらうかをお願いするために、HACCPの方式は大きな力を発揮する。