工場周囲からの危害を防止する

投稿日: 2013/04/11 4:24:34

ISO22000の「7.2 前提条件プログラム(PRP)」は、HACCPの土台となる一般的衛生管理(一般原則)だ。整理整頓、清掃、個人衛生といった、一般的に「5S」といわれている、工場や厨房をきれいにし、虫や細菌を少なくして、製造環境をきれいにすれば、異物混入の危険や食中毒に危険が少なくなる。そのための重要なものだ。

この中の7.3.3の「以下の点を考慮する」で、11項目があげられている。そしてその最初に「a) 建物及び関連設備の構造並びに配置」とある。規格にはこれだけで、なんの解説もないので、具体的にどういったことを考慮するのか、時々質問がある。

これは、敷地と、周りの道路、工場建物本体、倉庫、排水処理施設、駐車場、事務所、等の、距離、長さ、高さ、容量、性能といったことを明確にし、その中で、中の工場で製造する製品に影響を与えるものがあれば、解決することになる。あるいは、解決策がすぐにとれなければ、問題があるという認識を工場内に徹底させて、十分に注意しながら製造を行うことになる。

ゴミ置き場からのハエの発生が、工場内に影響したり、倉庫から工場内までの間に、異物混入や温度管理上の問題がないか、食品の安全性に影響がないか等。では、具体的にどういった問題があるのか。

1. 外から飛来するハエ

ある工場では、衛生的に気をつけているにもかかわらず、外から飛来するハエが多くて困っていたので調べたところ、3キロ離れたところにごみ処理場があった。ハエは5キロの範囲を飛ぶということなので、ここから飛来していることがわかった。そこで、工場の出入り口、ゲートのすき間をうめたり、ビニールカーテンで二重にしたら収まった。

この事から、もし新しい工場を新たな場所に作る場合、周りの環境を調べ、問題を発見したら対処することだ。ニューヨークの魚卸売市場は老朽化かつ不衛生だったため、最近マンハッタンの北東部に移転したが、計画段階で近くにゴミ処理場があるので、そんなところに食品施設を造ってもいいのかと、問題になっていた。新しい市場棟は完全な閉鎖密閉型で、HACCPを考慮した構造になった。

2. 下水と虫発生の危険

ある工場では、新設後、下水のにおいの問題がわずかにあった。当初気にしないで製造を始めていたが、夏になったらひどくなった。調べてみたら、工場裏の廃水溝が発生源だった。流れが悪かった上に、マンホールのフタが不完全で、そこから臭いが漏れていたのだ。

このマンホールがある側に、工場内部からの排気口があるのだが、放っておくと虫の発生と同時にその虫の進入問題が出てきてしまったところだった。

ある工場では、小さなハエや蚊が、工場裏口から入り込んでいて困っていたので調べたら、道路脇を流れているドブのトンネル内で大量の蚊が発生していた。公共のものなので、市に交渉して直してもらった。

3. 工場と離れたところにある倉庫

ある工場では、包材の倉庫が工場本体と数メートルだが離れたところにあった。いったん外に出てから包材を工場内に入れるため、段ボールのまま工場内に入れていた。しかし、これによって虫の新入の危険があるので、通路を作り、倉庫内で段ボールを開け、ビニールシートに入った中の包材だけを工場に入れるようにした。

4. 虫の好きな樹木、嫌いな樹木

ある工場では、周りの他の工場に比べて虫がかなり周囲にいるため、調べてみたら、虫の好きな、寄ってくる樹木、が多く、これが原因だった。工場緑化が必要なため、樹木を取り除くわけにはいかないので、虫の寄って来ないものに、工場ゲート付近だけ換えた。

虫が好む樹木は、桜類、杉、椿、つつじ、サツキ、クチナシなど。好まない樹木は、桧、ヒバ、楠、カシ、シイ、ジンチョウゲなど。また、ハーブ系には虫は寄って来ない。

ある工場では、工場が鉄道路線の横にあり、線路の横の雑草から虫が工場内に進入してくる。そこで鉄道側と交渉して、毎夏前に雑草を刈ってもらうことにした。

5. ゴミ置き場の衛生問題

ある工場では、工場の裏にあるごみ置き場からハエが異常に発生していることがわかり、ここから工場内にハエが進入していたことがわかった。

このごみ置き場には、生ゴミが多く置かれているのだが、ごみ処理業者が持っていった後、汚水が溜まったままになっていた。置き場が古く、お椀のように窪んでいるので、常に汚水が溜まっているのだ。

そこで、この窪みを修理し、週に3回ごみを持っていった後、洗浄消毒をすることで、ハエはぴたりと収まった。

6. カモメなどの野鳥の糞

漁港近くのある魚加工工場では、たくさんのカモメが工場の屋根、それも屋根の縁にいつも留まっている。これは近くの魚卸売市場のゴミ処理や清掃が悪い問題で、アラなどの

食べ物を求めるカモメが大量に増えてきてしまい、その影響だ。

野鳥の糞は、食中毒菌のカンピロバクターがいるため、それが工場の周囲にいるのは問題だ。刺し身用の魚も扱っているのだから。

入出荷口の上にもたくさん留まっていて、糞を落としている。その下で、魚の出入りをしているのだから、大変だ。

対応策をいろいろ調べたところ、屋根の縁にピアノ線を5センチぐらいの高さに張ると鳥は縁に留まれなくなるというので、実施したら、カモメはいなくなった。

別の魚卸売市場では、カモメ対策として、魚の分類場所の周りに隔壁を作って対処していた。