Farm to Table (農場から食卓まで)

投稿日: 2013/05/20 5:32:15

一言で言えば「正体明らか」、最近急速に報道で増えている言葉で言えば「トレーサビリティー」。農場から食卓までトータルな安全管理、衛生管理、履歴などだ。

鶏肉で言えば、鶏(鶏肉)そのものと、生産施設、そして飼料や薬品になる。鶏は種鶏の履歴までさかのぼって、安全を確認できることと、血統などになる。生産施設は、鶏の生産環境の整備や施設設備のサニテーション、傾斜の周りや水なども含めた管理、および従事者の個人衛生や教育ということになる。飼料と薬品は、使用したものと、その履歴がわかること、いつ、どの飼料や薬品を与えたかの記録まで必要になる。

次に、場所が変わって、と鳥処理工場の安全管理、衛生管理になる。食品の加工工場は基本的に二つの管理システムが基本になる。一つは一般的衛生管理と言われているもので、厚生労働省のガイドラインでは以下の10項目がリストアップされている。

(ア)施設設備の衛生管理

(イ)従事者の衛生教育

(ウ)施設設備、機械器具の保守点検

(エ)そ族昆虫の防除

(オ)使用水の衛生管理

(カ)排水及び廃棄物の衛生管理

(キ)従事者の衛生管理

(ク)食品等の衛生的取扱い

(ケ)製品の回収方法

(コ)製品等の試験検査に用いる機械器具の保守点検

そしてもう一つはHACCPで、安全にするための特に重要な作業工程を徹底的に監視して、危害を持つ食品を工場から出さない方法である。鶏肉のと鳥処理工場で言えば、金属探知器を通して、消費者の怪我の元になる金属を検知することである。と鳥処理した鶏肉を総菜などに加熱調理加工をする工場では、加熱後の鶏肉の中心温度が75℃以上になっているかをチェックすることで、食中毒菌を完全に殺菌していることを確認することになる。

この後、二つのルートに分かれていく。一つはレストランやファーストフードなどのフードサービスに行き、店で直接消費者に提供されるものである。この場合は、鶏肉が店舗に入荷してからの管理、入荷検収をした後冷蔵庫に入れ、オーダーが来たら冷蔵庫から出し、カットをしてから調理をし、盛り付けてテーブルに出す一連の過程での安全衛生管理になる。当然工場と同じように一般的衛生管理が基本になる。と同時に、フードサービス店舗になると、鶏肉だけを扱っているわけではなく、数多くのメニューを提供しているわけだから、交叉汚染をしないように注意をしなければならない。例えば刺し身やサラダなどの加熱をしないで食べるメニューと生の鶏肉を一緒のナイフやまな板で扱ってはならないし、保管場所も離す必要がある。大きなレストランの厨房や給食施設などでは、調理ラインや場所を別々にする必要がある。

もう一つのルートは、食に小売店やスーパーマーケットなどの小売店で、調理をする最終末端消費者に販売する店舗である。農場からと鳥処理工場まで安全に管理してきても、最終の小売店レベルでの管理が悪くて、例えば保管がいい加減で鮮度が落ちてしまえば、早く腐敗に至るので、食中毒の危険が出て来る。カッティング作業場所の衛生管理が悪いために、異物混入してしまうなどである。

このフードサービスルートと、小売販売ルートのことを「リテイル」と呼んでいる。リテイル段階は最終末端消費者、食べる人に渡す直前であるから、最後の砦となり、重要なのだが、日本ではリテイルレベルでの衛生管理が一般的に甘く、欧米の厳しさと比べてまだまだ遅れている面がある。今後リテイルレベルでの安全衛生管理を強化していかないと、食中毒やクレームはまだまだなくならない。

小売店から購入した鶏肉を最終末端消費者は冷蔵庫にいったん保管してから調理することになる。消費者段階で鶏肉をどのように管理したらよいのかを、直接消費者を話をすることが出来る店舗で、消費者に説明する必要がある。例えば購入したら寄り道をしないで早く家に帰って冷蔵庫にすぐに入れる、といった基本的なことから教えながら販売する必要がある。

そんな基本的なことをわざわざ顧客に説明する必要などあるのか?当たり前のことじゃないか、と考えるかもしれない。確かにその通りなのだが、最近そうではなくなってきているのだ。風邪などを引いて病院に行き、薬を薬局でもらったら、錠剤がどのようになっているか見て欲しい。以前は10粒の錠剤が一つのシートになっていて、その一つ一つがパキッと折れば別々にすることが出来た。ちょうど板チョコのように。ところが今の錠剤は10個のシートになってはいるのだが、一つ一つばらばらにできない、せいぜい二つづつである。これは、一つ一つばらばらにできると、その一つをパッケージから薬を出さないで、アルミパックのまま飲んでしまい、食道を傷つけてしまう人が出て来たからなのである。信じられないかもしれないが、こういう時代になってきたのである。

アジとイワシとサンマの区別がつかない主婦は三割程度いるという、アジの開きがあの状態でひらひらと海を泳いでいると思っている人も同じ程度の率、米を研げと言ったら洗剤で洗い始めてしまう人もちゃんといる、ニンジンの皮がどこまでかわからなくて全部無くなってしまった、キャベツの千切りをやらせたら「千まで数えられなかった」という、とにかくすごいのである。だから、生で食べられるのか、加熱して食べるのか、冷蔵庫にしまうのか、室温で良いのか、ちゃんと説明しなければならないのである。

そしてこれら農場からリテイルまでを結ぶのが運送と途中の保管、ロジスティクスである。農場の鶏を、処理工場、加工工場に運び、工場で出来た製品をリテイルに運ぶ。途中で卸売り会社をと折るならば、そこでの保管。これらを確実に結ばないと、せっかく各段階でしっかり管理しても無駄になってしまう。

農場、工場、リテイル、そしてこれらをつなぐロジスティクス、これらを「HACCPチェーン」と言っている。

ということで、これでやっとテーブル、食卓にまでたどり着くわけである。BES以来、トレーサビリティーが問題になっているが、ファームトウテーブルを考えると、単に履歴をさかのぼればいいというのではなく、農場の人も、工場の人も、リテイルの人も、製品が最終的に食べられるまで、それぞれお互いに情報を交換し、顧客のことを考え、安全に行き着くことが出来、不安になったり心配する人がいれば、そうならないように、あるいは問い合わせを受けたら明確に回答できるようにすることが必要になってきているのである。