ビニールカーテンの利用と設置

投稿日: 2013/05/02 4:13:56

ビニールカーテンはゾーニングや洗浄剤の飛沫ガードなど、食品工場での利用が多い。この利用や設置に関して、いろいろな疑問や質問があるので、まとめてみる。

天井が高い場合の設置

高い天井からそのままビニールカーテンを降ろすと、使用するカーテンの面積が多くなり、コストがかかる。そこで、天井からカーテンレールをつり下げて設置するとよい。天井とレールの間は素通しになるが、人が手を上げた程度の高さなら、その上が素通しでも交差汚染は普通しないので問題無い。

蒸気の拡散も防ぎたい場合は、素通しではダメなので、この場合は吊り壁を設置してその下にレールを入れてカーテンを下げるとよい。

天井が低い場合の設置

天井にレールを設置してそこから垂らせばいいが、これによって空調の空気が行かない場所が出ないか、温度管理に影響が無いかをチェックしてみる。

床に近いと靴で汚れてしまう

カーテンが床ギリギリの位置まで下げても、人が行き来しなければ裾部分が汚れることは無いが、人が行き来する場合は、床から15センチ程度までの高さにすれば、靴などでの汚れが無くなる。15センチというのは、米国カリフォルニア州の衛生基準を参考にしていて、床からこの高さ以上に食材や調理道具などを置いていないと減点になる。要するにたとえ清潔ゾーンでも15センチ以下は汚染ゾーンということだ。

床ギリギリの部分が汚れて困っている所は、そこは人や物が通る所だろうから、ハサミで汚れている部分をカットする。

色は何色

外に接する場所、入出荷口や人の出入り口は防虫目的なので、防虫に効果のある色と材質がいい。一般的にオレンジ色が多いが昼間は反対に虫を寄せ付けてしまうとも言われている。調査によるとグリーンの方が効果的。また、カーテン生地に紫外線をカットしたものの方が防虫効果は高い。

工場内部で、防虫の目的が無くて、ゾーニングや飛沫防止のためなら、透明の方が両方からよく見える。

気流が逆の場合

清潔ゾーンから凖清潔ゾーンに向かって、そして準清潔から汚染に向かって空気が流れていればいいが、逆流している場合、ビニールカーテンでは十分なゾーニングが出来ないので、パネルで仕切り、スイングドアを付けた方がいい場合がある。気流がかなり強いと、スイングドアだと常に小さく空いた状態になってしまうので、この場合はスライドドアの方が良い。

蒸気拡散防止

スチーマー、釜などからの蒸気が拡散し、工場全体に広がってしまっているとカビの増殖問題になる。

蒸気の発生場所にはダクトがあるのが一般的だが、蒸気の発生源とダクトの間が空いていると、そこから蒸気が漏れるので、ダクトからビニールカーテンを垂らす。

あるコンニャク製造工場で、パッケージ後の二次殺菌用のスチーマーとダクトの間から蒸気がたっぷり漏れていて、かなり高い天井がカビだらけになっていた。そこでダクトからビニールカーテンを人の首の位置ぐらいまで垂らした所、蒸気拡散がほとんど無くなった。この簡単な設置だけで湿度が15%も低下したので効果十分と判断し、天井のカビ掃除を業者に委託してきれいにした。その後カビ問題はほとんど無くなった。

別の工場ではコンベクションスチーマーとダクトの間がやはり空いていたので、同じようにビニールカーテンを垂らして蒸気拡散を防止した。

洗浄

ビニールカーテンの洗浄はやりにくいという声を聞くことがあるが、泡洗浄をすれば簡単だ。エアコンプレッサーが設置されていれば、非常に細かい良い泡が出る小型低価格の泡洗浄器が出て来たし、無くても水道水をホースでつなぎ、この水圧を使って泡を出すのもある(泡の状態はあまりよくない)。泡洗浄器は、ビニールカーテンの洗浄に限らず、機器、道具、床、どこでも一緒に、工場内全てを簡単に洗浄出来る。

ビニールカーテンに関しての洗浄は頻度を決めて行なう。汚染状態で変わってくるが、腰位置から下を毎日と上から全てを毎週、あるいはそれほど汚れない場合は、腰から下を毎週と上から全てを毎月、といったように行なう。粉が舞ったり、魚介類のドリップや洗浄水が飛び散っているような場合は毎日上から全てを洗浄した方が良い。

ある惣菜工場では、腰位置から下を毎日泡洗浄しているが、5年間使っていてもちっとも傷んでいない、新品同様の状態だ。泡洗浄は泡をかけて20分ほど置いて汚れを浮き出させたあと水で流すだけなので、ブラシや雑巾でゴシゴシといった洗い方と違って、手間がかからないし、傷まない。

簡易クリーンブース

作業場の中央に清潔ゾーンがある場合、ここをビニールカーテンで囲ってもいいが、空調の問題、きれいな空気を入れたい場合、ビニールカーテンを利用した簡易的なクリーンブースがある。

軽量なアルミフレームを組んで、ビニールカーテンで覆い、上か横にフィルターを付けた小型ファンフィルターユニットを通して空気を入れる。フィルターによって汚染が除去されるので、簡単にクリーンな環境を作ることが出来る。クリーン度を上げたい場合、元々この小型ファンはHEPA(ヘパ)フィルター付きのものなので、そのまま設置すればいい。設置面積、高さ、大きさはいくらでも自由に出来る。大きくなったらファンフィルターユニットを増設すればいい。このユニットは上に付けるようになっているが、フィルター交換を簡単にするためには横の一番高い位置に付けることが出来る。

著作:株式会社 フーズデザイン 加藤光夫