投稿日: 2013/04/14 0:03:59
新聞の社会面の下に、回収や事故あるいはお詫び広告が載っていて、この広告を自社のハザード分析の一つとしている所もある。
異物混入事故での回収が載っていれば、それと同じ事故が自分の工場で発生する可能性は無いか、自己診断に回し、可能性があれば対策を考える、という予防につなげる。
この原稿を書いている時点で最新の事故内容を5つあげると、
「景品表示法」に違反。
オーブントースターで加熱の際に製品本体に火がついてしまう。
賞味期限間違い。
賞味期限を本来の設定よりも長く記載。
誤った消費期限を表示して販売。
といった内容で、表示に関連するのが4件もある。
食品産業センターのホームページに「食品の事故情報の整理・分析」がある。これを見ると、回収になってしまった原因の分析が出ている。
今回この分析をまとめた所、原因の圧倒的多数が「表示」であることがわかった。
2009年の「告知理由別に見た事故情報」で、「期限表示の誤記(不適切な表示)」と「不適切な表示」がトップで、317件。
2位が「微生物及び化学物質の混入」が78件。これを率に直してグラフにすると「表示」が何と55%で、半分を超える。表示事故というのは、製品の安全性や品質に関係無く、つまりは製品に問題無いにもかかわらず、回収になってしまうという、実に悲劇的な結果なのだ。費用の大損失、信用の失墜を防ぐにはどうしたらいいか。
この対応は特別な投資を行うことなく、「認識」と「確認」で出来る。
表示事故の中身をさらに百分率でみて見ると「期限表示」の(設定期限を超えて誤記)と(期限より前に誤記)の両方で37%と一番多く、その次に「アレルギー物質」「その他の不適切な表示」と続く。
日付間違いはどうやったら防げるかは、地味な複数の人による確認だ。
発行する文書の日付、曜日、年数を間違えたことはほとんどの人が経験しているだろう。会議や集会の案内を発行したあとで「曜日が違いますよ」と指摘されたりする。
原稿でも同じで、書いた本人が何回か読み直して出しても、編集者が読んで間違いを見付ける。長い原稿を念のため他人に読んでもらうと誤字脱字がいくつも見付かる。
ということは、日付表示も同じで、担当者だけではダメだということとだ。日付以外、ラベル表示の全てについて、複数の人が確認する必要がある。
複数の人が確認
ある食肉加工品工場では、4人がラベルの確認をする。
ラベルが作成されたら、パック数のラベルプラス1枚を作成して台紙に貼り、ラベル作成担当者、パッケージ担当者、品質管理室、出荷担当者が確認し、OKになったら貼り付け作業を行う許可が出る。
こことは別の加工品工場ではこれが5名で行なっていたにもかかわらず、日付間違いの製品を出荷して回収になってしまった。
確認の順は決まっていて、最終5人目の確認者が新入社員だったため、その新入社員はすっかり落ち込んでしまった「私が最後に確認したのに……」
しかし、その前の経験豊富な社員4名が見逃したのだから、そんなに落ち込まないように慰めた。と同時に、対応策も提案した。
ラベルの作成者は最初になるが、そのあと4名(4ステップ)の順番を、ランダムに、毎日でも毎週でもいいから変えるのだ。これで見方がしょっちゅう変わるので「いつも同じ」状況では無くなり、確認がより確かになる。
もう一つは、製造担当者とは全く別の人にも確認してもらうことだ。経理、総務、事務所清掃のパートの方でもいい、別の目で見ると、とんでもない間違いを発見することも多い。
デジカメで撮影
デジカメで写真を撮ったあと、パソコンで表示して見ると、後ろにロクでも無いのが写っていたり、服にゴミが付いていたり、ボタンが外れていたりと、細かいことを発見する。
そこで、ラベルをデジカメの接写モードで撮影し、画像をパソコンで大きく表示して確認する。ラベルそのものを目視で確認するのとは違って、全く別の見方になるため、ダブルチェックになるし、記録も画像として残る。
外箱に責任者印
内包装担当者がラベルを確認するが、それを外包装担当者が段ボール箱などに入れるときにラベルの日付を確認して詰め込み、段ボールに本人の確認印を捺す。押印だと惰性になるから、サインをするのも良いだろう。
指差し呼称
電車の運転席の後ろで見ていると、運転手が声を出しながら信号や、線路内工事中の人とお互い指差して確認している。
かなり古いが、JR総研の実験結果によると、この方法によるエラー率は、
指差し呼称無し:2.4%
呼称のみ:1.0%
指差しのみ:0.7%
指差し呼称:0.4%
ラベル確認をする場合、声を出して、記入してある所を指さして確認すると、エラーは1/6になるということだ。
これを複数の人が行ない、最後に外箱詰めでさらに指さし呼称確認をすれば、まず間違いは無くなるだろう。
今まで表示ミスをしていない所も、早急に対策を行ない、予防をしよう。費用はかからない。