投稿日: 2013/04/13 23:52:49
自分の工場内だけで安全な製品は確保出来ない。いくら工場内で安全管理をしていても、原材料が悪く、それを発見出来なければ、安全でない製品が出荷されてしまう。出荷されたあと問題が発覚すれば、自分の工場が悪かったことになり、回収費用も自社持ちだ。
そうならないためには、サプライヤーの監査と、サプライヤーに決めるためのルール、手順を決めておくことだ。
ISO22002の9.2では「供給者の選定,許可及びモニタリンクのフロセスを決めなければならない」とある。このためには、以下が必要になる。
安全確認の実施とデータ
許可前の工場監査と取引実施後の定期的な監査
証明書、Certificate of Authenticity(確実性証明書)
これらを実施するための手順書
問屋の先も監査ある食品小売チェーンでは店舗で惣菜を調理しているが、全てではなく、アイテムによってはメーカーから仕入れ、店舗では陳列するだけになっている。
安全対策活動の中で、この仕入れ製品について調査を実施するために、現在仕入れている製品のサプライヤー監査を始めたが、その中の一部製品はメーカーからの直接納入ではなく、卸売り問屋からだった。焼き魚製品がその一つで、卸売りからは冷凍の状態で仕入れていたのを、店舗で解凍して陳列していたのだ。
そこで、ではこの凍結された焼き魚はどこで製造しているかを、トレーサビリティも含めて監査した所、ある魚介類工場だということだ。
ここで過去のデータを調べてみた所、この焼き魚製品は今まで何回か異物混入クレームが発生しており、その都度直接納入している卸売り問屋からのクレーム報告(お詫び報告)が出されており、バイヤーが替わっていたこともあって、それ以上に追跡していないまま来ていることが分かった。
それなら問屋ではなく魚介類工場の方を監査しなければならないということで、卸問屋が渋るのを突破して、工場監査にこぎつけた。
行ってびっくり、工場内は乱雑状態、窓開け放し、従事者はタオルを頭に巻いただけのTシャツ姿で足はサンダル。
だから異物混入クレームがあったのだ、これでは当たり前だ。
どうしてこんなことになったのかは明らかで、卸売り問屋だから倉庫だけなので、そこだけ監査しても分からなかったのだ。
卸売り問屋の方は、製造工場の安全管理監査を怠っていた。海外からの輸入製品については商社に依託していたが、肝心の国内の追跡が抜けていたわけだ。
この後やることは、この魚介類工場への改善要求と他にもこのようなことはないかの内部監査になる。
定期訪問ある惣菜工場ではISO22000での運営を始めてから、国内の主要なサプライヤーは2年に1回訪問という目的で挨拶回りをし、工場の安全管理状態を見せてもらうことにしている。
この活動は工場をチェックする目を持たなければならないので、自社工場の運営管理をしているリーダークラス以上を当てており、サプライヤー視察資格という力量に設定している。
力量を持ったスタッフはこのサプライヤー回りは手分け交代で全国を回ることになるが、大体1人が年に数ヶ所行くようになる。
製造作業が忙しい中で、お互いやりくりしてこなすが、他の工場を見ることが出来る上、同じ方面にある工場を繋げた訪問スケジュールを作るので、宿泊付きの出張になり、楽しみでもある。
あるジャムやドレッシングを製造している工場では青果物などを生産者から直接購入しており、安全性の確認のため、10年前から栽培記録と農薬使用記録を提出してもらうよう活動を続けてきた。
最初は何でそんなもの出す必要があるのかと文句まで出たが次第に理解されるようになり、今では8割の生産者が出してくれる。
未だの所は毎年消費者の安全志向を説明してお願いし続けている。新しくサプライヤーになる所は、サプライヤーに決まるまでの過程で何度も畑などに通っているが、この2種の記録提出が条件になり、その後も定期的な訪問をするようになる。この活動をしている中で、逆に生産者が工場に挨拶訪問に来ることもある。
ある時生姜の生産者が工場に来た時、生姜の皮を剥く下処理作業を見て「これなら大きな生姜の方がいいのではないですか?」となった。
生姜は小売りレベルでは中小型の方が売りやすいので、キロあたりは大型のものよりも高くなる。
しかしジュースにするための下処理では、大きい方が下処理は楽だしおまけに単価も安いことが分かり、生産者は余り気味の大型が売れるようになったし、工場側は安い上に下処理加工が楽で歩留まりが良い原材料に切り替えることが出来た。
ISO22002の9.3では、受け入れ材料の要求事項として、
温度
外装やシールが無傷
虫やゴミの付着
等のチェックを要求している。温度は鮮度や品質、外装やシールの無傷はいたずらや悪意による干渉が無いかといった危機管理、虫やゴミの付着は異物混入対応になる。
自社工場内だけで安全な製品は出来ない。
サプライヤーと一体になった活動が必要になるだけでなく、出荷先へも安全対応依頼をすることで、フードチェーンでの安全対応が出来ることになる。
このことは、それほど費用をかけずに出来るだけでなく、生姜の例のようにコストダウンにつながったり、サプライヤー訪問出張で従事者の視野が広まるといったメリットも多い。