食品機械用潤滑油は食品専用を使う

投稿日: 2013/04/12 1:11:35

2000年、牛乳事件を発端として、食品の安全性、異物混入事故など、食品に対するマスコミ報道が一気に拡大した。

2001年、BSEによって、牛肉と関連業界が大打撃を受けた。

2002年、香料の問題から、添加物による大問題が一気に噴出した。

異物混入事故は業界者なら周知の通り、過去から引きずられてきた問題で、突然異物混入事故が増えたわけではないが、マスコミが一斉に飛びついたことで、不安、不満があおられた。

このような問題はまだあるのか、出て来る可能性はあるのかと、業界関係者は考えている。

不安をあおるわけではないが、欧米では深刻な食中毒事故が多いのに、どういうわけか日本ではまだ無いリステリア、アレルギー、SARSのような新型の危害の食品版、等、可能性がある潜在的な問題はある。

そして、食品機械用の潤滑油もその一つである。

食品機械に使われる潤滑油は、ベアリング部等に使用されるグリス類、歯車に使用されるオイルやグリス、その他スライド面、コンベアー関係など、多くのものがある。

これらのオイルは、食品に混入する可能性は事故以外に考えられないものや、使用方法を間違えなければ問題無いものなど、偶発的に食品に混入してしまう可能性は色々あるが、想定される危害には間違いない。

98年の資料「食品機械のHACCPシステムの対応に関する調査研究報告書」(日本機械工業会」「日本食品機械工業会」で、「機械側から見た危害の要因とその原因のABC分析結果」では、潤滑油の混入は全件数187件の中では5番目に位置する11件で、5.9%の比率である。

具体的にどのような場所でどういった可能性があるかだが、コンベアーでは、コンベアーチェーンや可動部分に使われているオイルが飛散したり、製品に接触する可能性。ベアリングでは、特に開放された部分からはみ出したグリースが作業者に接触し、それが製品に入る可能性。缶をシールする機械では、閉口部上部などに使われている油の飛散や落下の可能性、などがある。

食品ではない一般の機械に使用される潤滑油が人の口に入った場合の具体的危害は発ガン性が指摘されている。

ということは、一般消費者の目から見た場合、食品を製造する機械に使われている油が食品に混入したら、発ガン性物質を食べてしまう、という不安になるわけである。

そこで、食品用機械に使われている油を調べてみたら、多くの食品工場で使われてる機械油は、問題がある、ということになった場合、マスコミが大問題にする可能性はもちろん出て来る。

「あなたの食べている食品は、発ガン性のある機械油を使って作ったものではないか?」ということになってしまう。

日本の食品機械に使われている潤滑油がどの程度問題があるか、データは全く無いが、弊社のセミナー中での聞き取りや、多くの食品企業との話の中から乱暴に推定すると、8割以上の機械は食品用潤滑油を使っていないのではないかと思われる。なぜ使っていないか、答えは簡単で「知らなかった」からである。このことを知った工場では、追跡調査は別にしていないのだが、多分すぐに食品用のものに変えていると思われる。食品用潤滑油は一般機械用のものよりも高価ではあるが、食品に添加するものではなく、潤滑油なのだから、使用料は限られている。したがって、危険性と、もしマスコミでの騒ぎになったらというリスクも考えたら、すぐに変えるべきだ。

それでは、この記事で知った工場はどうすればよいかというと、これも答えは簡単で「今すぐ、食品機械用潤滑油に変えればよい」である。食品機械用潤滑油の基準は米国FDA(食品医薬品局)のもので、USDA(米国農務省)が認定していたが、98年からNSFが引き継いでる。規格は、H1、H2、H3がある。

H1は、食品に接触する恐れのある個所での使用が認められているもので、最も安全性の高い規格。H2は、食品に接触しない個所、例えばギヤーボックス等のように密閉されている個所や食品から遠く離れている場所などでの使用が認められているもので、この規格においても、発ガン性物質や環境ホルモンに関係するものは含まれていない。H3は前二者とは少し性質が異なり水溶性のものをいう。しかし、いずれの規格でも、潤滑油は食品ではないので、直接食べるようなことになってしまわないように細心の注意をする必要がある。あくまでも、偶発的に食品に入ってしまった場合でも、問題を起こさない、といった考え方である。

現在日本で発売されている食品工場用潤滑油製品には、グリース、オイル(合成油系、合成油添加系、ホワイトオイル系がある)、それらのエアゾール缶式など、多くのタイプが販売されている。

扱っているメーカーは、従来は海外製品が主体(特にアメリカ系)だったが、最近の1〜2年でその他に日本製も出てきた。多くのメーカーの製品種類、解説を統合したホームページは、<http://www.sunmari.com>にある。

現在使用しているオイルが食品用として認められているかの調査などは<http://www.nsf.org/usda/>で行なえる。

また、非常に単純な機械への使用、例えばバンドソーの洗浄後の手入れとかスライサーのふき掃除といった目的では、食品添加物の脂肪酸エステル製か処理された植物油が望ましい。

植物オイル、サラダオイルなどを使えば手軽で安上がりで一応効果はあるが、清掃を怠り酸化すると固着して菌の繁殖やカビの温床となる危険性もあるのでくれぐれも清潔にする事が必要である。