「2001年ベストプラクティス(これに学べ)大全」売れる食品.0110

 商業界「販売革新」


食肉と総菜で、3つの追跡

 

1.美味しく、安全な温度

牛肉のステーキを焼くとき、レストランに行ったら焼き方を聞いてくる、レア、ミディアム、ウエルダンだ。家庭で牛肉を焼くときに、主婦は焼き具合が難しいので躊躇する、カットをしてみて美味く焼けていたら大喜びだ。レアすぎれば気持ち悪いし、ウエルダンになりすぎたら硬くて美味しくない。調理での温度というのはかくも大切なものなのである。さて、急成長している総菜部門で、調理の温度はどれほど重視されているだろうか?

鶏肉の唐揚や豚カツを店内厨房のフライヤーで揚げた後、適正な調理になっているかどうかを確かめるとき、まだ多くの現場では、カットをしてみて、中を見て大丈夫かどうかを決めている。まだ赤かったらもう一度入れる、白かったらそれで良い、という具合だ。しかし、美味しくて安全な温度は一体何度なのか、それが分かったうえで、ではどうしてその温度に安定して調理をするのか、という所まで突っ込んだら、もっと売れるようになるのではないだろうか。

加熱調理メニューは、72℃以上にすれば、食中毒菌が死滅して安全になる。では、72℃以上、何度なら良いのかであるが、安全性だけを求めるのならば、何度まででも安全である。90℃でも、100℃でも大丈夫だ、もっともっと温度を上げると焦げてしまうので、誰も食べないから、これこそ絶対安全!?となる。しかし、温度が上がれば上がるほど、硬く、ジューシーでなくなり、美味しくなくなり、重量が減ってくる、ロクなことはない。そこで、72℃以上で、どの温度で止めるかになる。72℃ピタリならば、一番美味しいのだが、名人ならともかく、パート中心の現場ではそうは行かない、ある程度の範囲を設定して、その範疇に収められるようなシステムにすることになる。

現実的には、75〜85℃、という数値が適当なところで、これはHACCPでの温度管理の標準的な温度である。現実的には、現場がわかりやすい表現にしたほうが良いので「80℃±3℃の中にいれる」ということになる。

この温度帯にするために、フライヤーやオーブンの温度を安定させる方法、具体的には機器に温度計を設置する。もう一つは、調理後、サンプルを適当な頻度で取り、中心温度計で測定をする、ということになる。こうして、安全かつ美味しい温度で調理されたアイテムを安定的に販売していけば「あそこの総菜はいつもおいしい」ということになる。パートだけで名人級の調理ができるようになるからだ。

こういったシステムを始めているところは、次第に出て来ているが、最先端は総菜専門チェーンで、少しずつチェーンストアに導入され始めている。先日東北に展開する大手チェーンの総菜部門に行ったが、ここでは、調理後にカットをして状態を確かめることと、中心温度計での時々の測定をしている段階で、この次のステップとして、温度測定中心の方式を考えているということであった。多くのアイテムを調理する総菜部門で、さらに温度測定まで行なうようになることは、作業上大変になると考えられるが、競争の激しい中で、素材や味付けはそのままで、それを美味しくするためには、温度測定が最良の方法である、レシピをいじる必要は無いし、コストもかからないからだ。

 

鮮度と熟成

牛肉を美味しく食べる時期は、と畜後、0〜1℃程度の保管をして、2〜3週間である。にもかかわらず、と畜後4〜7日ぐらいの牛肉が販売されていることが多い。せっかくの牛肉なのに、まだ美味しさが出てこないうちに販売されてしまい、顧客は硬くて旨味が出ていない牛肉を食べさせられることになってしまうから、その店で牛肉は買わなくなってしまう。豚肉はと畜後4日程度が美味しいが、現実的には2〜3日程度のところが結構ある。鶏肉は、と鳥後12〜24時間が美味しい、そして、と鳥処理後の温度管理が適切であればあるほど、美味しさは長持ちする。ただし、牛、豚、鶏ともに、内蔵は新しければ新しい程よい。牛肉は「熟成」と表現したほうが分かりやすい、鶏肉は「鮮度」と表現するのが良いだろう。いずれにしろ、素材が美味しい時期に販売をする姿勢があるかどうかで、その店の評判が決まってくる。顧客は鮮度と熟成の関係はよほどの人でないかぎり知らないだが、おいしい店、おいしくない店は、感覚で分かる、これに対して店側は知識、技術、システムで応えなければならない。

ある食品スーパーでは、今仕入れている豚肉は、一体何日後から美味しくなり、その状態を何日保てているのかを、試食を繰り返して追求をした。結果、4日後から食べ頃になり、1週間程度ぐらいまで良い、という状況だった。この数値というのは、原材料の生産、と畜、その後のカットと保管の状態によるので、そのチェーンごとに違ってくる。そしてこのスーパーでは、1週間もしないうちに完売してしまうし、美味しい期間内に店内で煮豚や焼き豚に加工してしまうので、問題は無いことになった。この煮豚や期豚がまた人気なのである。注意することは、美味しさが出始めてから販売することになったわけである。また、スーパーではなく、食肉加工品を製造して、卸とショップ販売をしているところでは、生産者に作ってもらった豚肉がと畜された後、と畜場に自分で行き、自分で洗浄して、枝肉のまま店舗まで持って来た後、3週間熟成させてから、ハム、ベーコン、ソーセージを製造するようになった。と畜場で自分で洗浄するというのは、洗浄が丁寧であればあるほど、熟成期間が長く出来て、美味しくなるからである。豚肉で3週間熟成というのは、食肉の専門家でも疑問視するのだが、結果は、実に素晴らしい製品になっているのである。これはその店のオーナーの試行錯誤と経験の結果である。

 

ロー、レス、ナチュラル

減塩、糖分控えめ、シュガーレス、ローカロリー、ローファット、ローコレステロールとどんどん「ロー、レス」の傾向が高まってきている。ハンバーグのレシピ上での塩は、昔は0.8%程度だったのが、最近では0.5〜0.6%というところまで減ってきている。その分、旨味を充実させなければ美味しくなくなってきている。漬物は保存食という歴史だったのだが、数年前から減塩の浅漬けが急成長してきていて、漬物というよりもサラダ感覚になってきている。また、塩については、自由化と、高品質化、ナチュラル化が出て来ており、自然塩、ミネラル塩を使うようになって来ている。このような流れの中で重要なことは、美味しさの追及と同時に、その分、衛生管理に気をつけなければならないと、食中毒の原因になってしまう。

体に良い食品を追及してきたある食品スーパーでは、結果的に、ロー、レス、ナチュラルなアイテムばかりの店になり、こういった食品にはある程度高くても購入する顧客から支持される店になっている。この店ではカップラーメンは置いていない。


株式会社 フーズデザイン 加藤光夫