この原稿は、「月刊HACCP」2001年11月号に発表の一部です。本来は雑誌発表後しばらくしてからこのウエブサイトに登録するのですが、今回の場合は緊急なので、一部だけ発表させてもらいます。01.10.13.
HACCPシステムの構築の中で「製品説明書」があり、この中に「原材料」を詳しく記述、リスト化する項目がある。厚生労働省の総合衛生管理製造過程では1番目、HACCP構築の12ステップでは2番目に入っているものである。この「原材料リスト」は、単純な製品ならば「製品説明書」の中の表に1項目としていれればそれで良い、例えば製氷工場ならば「地下水」「水道水」といった記述で良い。しかし、複雑だったり種類が多かったりする場合、あるいは生産地の変化や事故などで危害になることが想定される場合、この原材料リストを別にしないと対応できない。例えばハンバーグの場合、牛肉、豚肉、ソテーオニオン、調味料の中で危害の原因になりそうなもの(今回の場合はビーフエキスが新たに加わることになる)、といったものが対象になる。それぞれの記述内容は以下のようなものになる。
名称
入手先
流通経路
産地
製造者
収穫または生産・製造の時期
契約時の規格(成分組成,pH,水分活性等)等
また、と畜関係では以下のモデルがある。
狂牛病に関連して、EUのトレーサビリティモデル(「食肉通信」01.10.9.記事などを参考に作成)
ハンバーグの例で、牛肉は狂牛病、口蹄疫。豚肉は口蹄疫。ソテーオニオンは生産地における突発的危害、例えば所沢であったダイオキシンや東海村であった放射能。ビーフエキスは狂牛病、といったものがある。これらは原材料そのものが元々持つ危害要因になるのだが、イカ原材料のサルモネラは、製造者になる。イカの事件の場合、原材料が更にイカ珍味などの加工品メーカーに販売され、この第二次メーカー製品が全国に出回った。原材料製品にサルモネラがあったことがわかった後、第二次メーカーは、今までに製造した製品の原材料はどこから購入したものだったのか、もし製造した製品に問題のある原材料を使っていた場合、それがどこに出荷販売されたのか、その出荷先が卸売業者だった場合、その卸売業者はどこに販売したのか、さらに在庫はまだあるのか、どこにあるのか、といったことが直ぐにわかれば、あれほど食中毒が広がらないですんだはずである、なかなかわからないまま数週間もの時間が経ち、その間に食中毒が散発的に広がって行き、信用問題だけでなく、消滅してしまうところも出て来てしまった。
自分のところで生産あるいは製造しているものを安全にするためには、農畜産であれ、加工メーカーであれ、卸業者であれ、リテイルであれ、全てに共通することは、3つの段階で安全性を確保しなければならない。まず、自分の内部である。工場、農場、倉庫、店舗、それぞれの内部において確保する。次に、原材料で、問題があった場合に直ぐに追跡できなければならない。牛の畜産農家ならば、飼料や子牛、食品工場ならば原材料、リテイルならば各製品のメーカーと製品詳細になる。3つ目は、出荷先で、飼料メーカー、農家、食品メーカー、卸業ともに、出荷先の詳細リストになる。
生産、加工、リテイル、それを結ぶロジスティクスのそれぞれが、自社内のHACCPだけではなく、サプライヤーと出荷先の追跡が出来るようにしておき、問題があった場合、お互いの保有する追跡情報を突き合わせて、問題をスピーディーに、最小限に突き止めて危害の拡散が無いようにしておけば、これから先、突発的な事故も含めて、素早く対応できるようになる。これに構築するためのコストと手間は当初かかるが、効率的効果的な解決手法の確立というパフォーマンスを考えれば構築する価値があるのではないだろうか。狂牛病、口蹄疫、ダイオキシン、放射能、サルモネラ、といった事例を出したが、これからもどのような問題が発生するか誰もわからない、しかし、どのような問題が出ても「追跡」が出来るようにしておくに越したことはない、これはHACCPの重要な構築内容なのである。
「追跡」は時間が勝負で、まず回収なりストップである。目標として、何か問題があって、その製品がどこにあるかを突き止めるまでの時間は「15分」、少なくとも1時間以内には突き止めるようにしておくと、拡散を最小限に出来る。配送途中のトラックが到着した時点で止めるとか、店舗まで行ってしまっている場合でも何をとりあえず撤去すればいいのかがわかれば、対応ができる。とりあえず押さえてから、問題無ければまた戻しても良いのだ。このシステムを作るためにお勧めする方法は「シュミレーション」訓練である。製造している製品の一つのロットについて、訓練として、外から電話をし、それがどこにあるかを訓練として突き止めてみると、最初は数日かかったりするのが普通だが、記録の方法やシステムを工夫することによって、次第に早くすることが出来る。早くなったら、それこそがその工場にとって理想的なHACCPの記録保管方法なのである。01/10