画期的高速オーブン「ターボシェフ」

総合食品「フードライフ」98/8月号 フーズデザイン 加藤光夫


電子レンジ、「ハローヒートオーブン」に代表される低温輻射熱オーブン、「インピンジャー」「ジェットオーブン」などの高速コンベアオーブン、そしてスチームコンベクションオーブンなど、今までの調理機器の歴史では画期的なものが何度か出てきている。そんな歴史の中で、今度はまたそれに一石投じるのではないかと考えられる画期的なオーブンが出てきた。名前は「ターボシェフ」という、超高速のオーブンで、従来の一般的オーブンやグリルの1/10の時間で調理をしてしまうというものである。

例えば、丸鶏チキン360秒、バーベキュースペアリブ140秒、ピザ90秒、骨付きラムのロースト90秒、アップルパイ80秒、グラタン120秒、アップルパイ80秒、といった具合である。

このターボシェフの仕組みは、300℃の熱風と、電子レンジ調理の両方を使う点だ。スチームコンベクションオーブンは、スチーム機能とコンベクション機能を使うのだが、ターボシェフは、スチームのかわりに電子レンジ機能になる。さらにコンベクション機能が非常に強力で、それで超高速に調理をするわけである。

これでチキンの正肉を焼いてみると、膨らんだ状態で出来上がる。水分を含んだ非常にジューシーな状態なのだ。この理由は、上部から高温、高速の熱風が食材に当たり下から強制的に引かれることにより、熱風でラップ(ホットエアラップ)された状態になるので、食材の水分を最初から閉じ込めてしまうからである。

食材をうまくジューシーに調理するためには最初に食材の水分を何らかの形で閉じ込めることが必要である。ステーキを焼くときにまず強火で焦げ目を切り身肉の表面に付けて、それで膜を作って肉の水分が外にでないようにする。あるいはフライものでは、最初に高温の油にさっと通してやはり表面を固め、その後低温の油でローストするようにあげると、中の肉汁が出ないで、ジューシーにできる。調理済みの冷凍ハンバーグでは、ミキシングして成型機から出たパティをまずパーム油などの高温の油に短時間通す、これを「フラッシュフライ」とも言っているが、これで表面を固めて肉汁を閉じ込め、この後スチーマーで肉中温度が72℃になるように蒸す。

こういった理由から、調理を始める最初の段階で、食材の水分を閉じ込めることが重要なのだが、このターボシェフはホットエアラップ方式で閉じ込めている。そしてあとは高速の熱風と電子レンジのマイクロウエーブの両方で加熱するのである。

これだけ高速だと、コントロールが難しくなるはずなのだが、ターボシェフの場合は熱源のコントロールを非常に細かく設定できるので、設定さえしっかりとしておけばあとはボタンを押すだけで誰が扱っても同じに、安定的にできるようになっている。

例えば、チキンもも肉の場合、どのような調理になるかというと、ターボシェフに付いている調理システムは、18のカテゴリーがあり、一つのカテゴリーには6種の調理方法を設定できるようになっている。そこで、18のうちの一つを「チキンもも肉のバーベキュー」を設定したとしよう、それを例えばボタンの「1番」にする。そして、次に何枚の肉を入れるかを、「1枚」から「6枚」まで設定するようにする。もし一枚の場合は「1番」の「1枚」のボタンを続けて押せばいい、2枚ならば「1番」の「2枚」のボタンを押せばいい。これで「6枚」までをボタンを押すだけで完全に調理することができるのである。

ここで調理のプロフェッショナルの方には疑問が出てくると思う。それは「調理をスタートするときの庫内の温度は、それまでの使い方、外部の状況によって一定ではないはずで、そうならば安定して調理が仕上がらないはず」ということだろうと思う。この点は著者も疑問に思ったのだが、この機械は庫内の温度を常に一定にするように瞬時にコントロールしている、ということなのである。コンピュータシステムだから出来ることである。だから、電源を入れて最初に使うまでの「立ち上げ」の時間さえ待てば、あとは一日中ボタンを押すだけで、前に何を調理しようが、安定して出来るのである。

問題はどのように調理をするか、最初の設定である。チキンバーベキューならば、熱風と、電子レンジのパワーをどのようにするか。それぞれの時間をどうするか、両方使うのか、どちらか片方を使うのか。一枚の場合と2枚の場合は、時間的に、パワー的にどのように設定するかをプログラムして登録をしなければならない。このプログラミングをすることがこの機械の重要な点である。プログラミングの面での設定バリエーションは、約100万通り。および108メニューまでのメニュープログラムをあらかじめ登録することができるので、現実的には無限的に設定できることになる。そこで必要になってくるのがコンピュータで言えばプログラマーである。腕と経験、感覚で行っていた調理作業を、数字、時間に置き換えて機械に正確にできるように覚え込ませ、システム化することのできるシェフがいなければならない。

この点「ターボシェフ」の発売元であるエフエムアイはあらかじめある程度の設定を付けたうえで顧客に引き渡す。さらに、研修会を行ったり、メニュー開発のコンサルティングも行うということである。

総菜店舗で最近重要になってきているのは、HMRに代表されるように、「インストア調理」あるいは「出来立て」「目の前での調理」「調理のエンターテイメント性」と言ったものが出てきている。あらかじめ出来たものを並べておくのから、出来立てのおいしさや、エンターテイメント性まで出していかないと競争に打ち勝てない時代になってきている。しかしながら調理のプロフェッショナルを各店に配置するには、低価格でもないと顧客は来てくれない時代、難しい。そういったところにボタンを押すだけでほぼ完全に調理ができる、さらに超高速でできる、という機械があればチェーン展開も非常に有利になる。試験的にある大手スーパーの総菜部門で、顧客から注文があってからピザを焼くサービスを始めたところ、大変な人気だということである。この機械にはもう一つ画期的なシステムが組み込まれている。それは「オンライン化による遠隔操作」が出来るのである。具体的には、メニューの変更、調理方法の変更、食材の変更などによる調理システムの変更、さらに機械のチェックまでもが、必要時に電話回線を通じてコントロールが出来るのである。すべての店舗にある機械のコントロールを、電話回線で、本部の「ターボシェフ」の担当シェフが出来るのである。こういった本部のコントロールは今までマニュアルの配付、設定変更指示、そして非常に手間のかかるインストラクターなどによる店舗巡回指導が必要だった。しかしターボシェフでは電話回線で出来てしまうのである。

これは非常に画期的で、例えば食材変更による調理の変更では、食材を変えることが決定したら、店がいつから食材を変えるのかを決め、変更する前日の夜、変更プログラムを電話回線で機械に送ればいい。店の担当者が知らないまま、あるいは手間を全くかけないで調理方法を新しい食材に合ったプログラムに変えてしまうことが出来るのである。店では何もしないまま新しい調理方法に変更になっていることにもなるのである。

このターボシェフ、費用の点で定価で330万円弱になり、価格的には高いと思うかもしれないが、出来上がる料理の完成度、人件費、スピード、これらを合わせて考えたら価値が十分ある。また、日本リース(リース営業1部3課、電話03-3566-8136)ではこのターボシェフだけを対象にしたトータルリースをスタートするということである。リースが簡単に組めるということなので、税制上も資金の点も機械と一緒に画期的に楽になる。


株式会社 フーズデザイン 加藤光夫

 


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