先日サンフランシスを訪問し、在住のセーフティーアドバイザー、安田健彦氏か
ら、カリフォルニアのフードサービスの衛生管理に関する興味深い話を聞いた。
安田氏は、全米で唯一人、米国食品衛生管理資格者証書を全て日本語で講義、試
験を行う公認講師で、実際にレストランの監査活動も行っている。
それは、テレビ局スタッフのレストラン潜入取材から始まった。
1997年11月ロスアンゼルスのテレビ局が「厨房の裏事情」と言う題で、隠しカメ
ラ潜入レポートが放映された。
結果はひどいものだった、
手を洗わないで食材に触る。食べ残した皿にあった、潰していないレモンを、次
の料理に入れて出す。出来た料理をつまみ食いする……
これに対する市民の反応はすごいものだった。衛生を管理しなければいけない保
健所が「一体何をやっているんだ!」
保健所の面子まるつぶれ。
意地をかけた検査、監視が開始され、ロスアンゼルスカウンテイの全レストラン
の衛生度合いにより、A.B.C.のランク分けにしていった。
そしてこれがラベル泥棒の出現になった。最低の「C」ラベルを貼られた店が
「A」ラベルの店に夜中行き、ラベルを剥がして持って行ってしまう事件だ。(こ
れは現在も続けられているが、最近ではほとんど「A」になり、衛生管理が良く
なってきているという)
そして2000年1月1日よりカリフォルニア全州の食品衛生管理資格者制度(食品
営業施設のHACCPシステム)になっていったのである。
更に2005年よりサンフランシスコがグレードシステム制度「74の検査項目」を
採用、全てのレストランが衛生の度合いが点数で分かるように表示され、お客に
良く見える店頭に掲示する事を義務付けている。
具体的にどう行われているかというと、
まず、74項目で、百点満点の監査をおこなう。
70点以下は、営業停止。
そして、監査結果シートと、点数を、店の店頭に表示する。というものだ。

74項目は、いくつかのパートに別れていて「食品の温度」「食品」「有害小動
物・害虫」「水・消毒」「下水」「営業・運営」「什器、機器、棚、キャビネット」
「嘘の無い表示」「壁・天井・床」「配管設備・機器排水」「便器・トイレ・更衣
室」「廃物・店・雑役」といった分類で、ソフト面、ハード面、管理面と、立体的
なものになっている。
いくつかの項目と違反例をあげてみると、(監査番号.内容:違反例)
6.食品の安全が脅かされ緊急を要する状態:何種類もの違う種類の貝類が雑然と一緒の容器に入っている。生の食品と調理済み食品と、食品間汚染が起きるような作業をしている。
21.間違った方法で行われた解凍違反:冷凍食品が溜め水で解凍されている。
22.許可されていない作業場での調理リスク:水洗い用シンクに飛沫除けが無い。
23.食品の保存:食品が床から6インチ(15センチ)以上の高さに保管されていない。
25.食品が顧客から保護されていない:スニーズガード(咳やくしゃみなどから食品を保護するカバー)なしで食品がディスプレイ、提供されている。
31.什器、機器、棚、キャビネットなどの不衛生:残渣が付いたり汚れがこびり付いている。
32.食品が接触する表面の銃器類の消毒:食品が触れる表面を、4時間毎に洗浄消毒がされていない。
36.不正表示:新鮮な魚と広告されているが実は冷凍魚。
52.貯蔵庫での保管:ナイフが無造作に機器の間、箱の下、棚の上などで保管されている。
55.消毒に関する違反:再使用する食器を洗うときに、3槽シンクのうちの2つだけしか使用されていない。
57:内装違反:厨房内の床が、段ボールや認可されていないビニール、板が敷かれている。
68.一般的な換気扇:グリルが完全に換気フードの下の設置されていない。6インチの張り出しが無い。
72.雑役、必要な品物、機器:モップ、バケツ、箒などが、不適切な場所に置かれている、破損している、清潔にされていない。
また、科学的検査も行われている。例えば寿司の酢飯では「PH4.6以下(強)」という規制があり、現場での簡易検査が行われる。
この監査は、予告無く行われる。そして監査結果はインターネットに公開される。
アドレスは<http://www.sfdph.org/eh/>で、ここにアクセスしたら、店の監査点数とコメントが出て来る。この保健所サイトは当然一般顧客が活用している。
著者が12月始めに行ったレストランを見てみた。
MASA(MASA`S):有名な和風フレンチレストラン。88点で「ハイリスク」となっていた。ここは非常に良い店なのだが、多分、刺し身などの生食系が多いため、こうなったのではないかと思う。
FARALLON :老舗の大型レストラン。100点。
この手法はニューヨーク市でも行われており、雑誌「ニューズウイーク」で「ニューヨークのレストランに行くときは、まず保健所のホームページにアクセスして、衛生状態を確かめてから予約しましょう」という記事まで出てしまった。
監査システム、項目、発表、そしてこの効果を見ると、日本でもこういった考え方を参考にすべき点が多い。レストランだけでなく、食品工場に使える方式がたくさんある。
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