黒豚をフードサービスに

柴田書店「月刊食堂」97/12月号 フーズデザイン 加藤光夫


「黒・赤・黒」が最近の流行りだそうだ。黒毛和牛に、赤鶏に、黒豚、である。黒豚というと鹿児島と考える消費者も多いが、黒豚はイギリスバークシャーが元になっていて、豚の品種である。しかし、味、肉質が良いことから、高品質の豚肉として古くから知られてきており、鹿児島が特に黒豚の生産に力を入れてきたし、キャンペーンも積極的に行ってきたところから有名になってきた。

鹿児島県は「県を代表する農畜産物の一つ。県黒豚生産者協議会を指定基準の作成や審査を行う団体と位置づけ、ブランド化に向けた具体的な取り組みを進めることとした」と積極的だ。とはいっても、黒豚はもちろん鹿児島だけではなく、全国的に飼育されていて、飼養頭数も増えてきている。平成5年に2万6千頭だったバークシャーの飼養頭数が、6年には4万1千頭、7年には6万8千頭と増えてきている。

 

相模ハムは、ソーセージ・ウインナーの「黒豚シリーズ」がヒットして、低迷していた経営を回復させた。「黒豚シリーズ」で利益が回復したのである。開発の発想は、小売りなどで黒豚が良く売れている、という情報からである。この原料を調達するために、国内では安定性にかけると判断したのか、価格的な面もあったのだと思うが、米国に行った。アメリカンバークシャー種を大量に飼育しているところから入れ、コストダウンにも成功した。バークシャーの血統は50%以上のものを使っているということである。

プリマハムは「黒豚」シリーズという加工品が主力になっている。伊藤ハムでは、「黒の逸品」黒豚シリーズを販売しており、ソーセージでは、超あらびき仕上げ「黒豚熟成ウインナー」をはじめ、黒豚ロースハム、黒豚やきぶたがある。六合(くに)ハムでは鹿児島産黒豚ソーセージをレストラン、ビヤホールなどを中心に販売をしてきたが、ここに来て量販店の販促活動も強化しだした。アサヒビール食品では、黒豚を使用した冷凍串カツを販売している。

フードサービスでは、ロッテリアが「黒豚かつバーガー」を販売している。サッポロライオンは鹿児島純粋黒豚を売物とする、とんかつ・串揚げ専門店「かつ花」を横浜駅構内の相鉄ジョイナス地下一階イレブン街にオープンした。「かつ花」では、すでに鹿児島純粋豚肉の扱いが中心になっているが、さらにダイレクトに訴求するために、専門店の形でオープンした。鹿児島県黒豚生産者協議会会員が生産した証明書を掲示している。サッポロライオンでは黒豚を使ったメニューに人気が集まっている。メニューはくしカツなど4品あり、70近いフードメニューの中の10%弱の売り上げを占めるという。

量販店でも黒豚は売り上げと利益がとれるし、高品質ニーズに対応できるので、各スーパーマーケットとも扱っている。ジャスコでは、鹿児島産と東北産の黒豚の販売店舗数を拡大し、中部地区の一部店舗では米国産黒豚を試験販売している。全国150店で黒豚を販売しているが、売り上げは昨年対比で2倍以上だということである。ダイエーでは、「さつま黒豚」という独自ブランドをつけ主力商材として育成中。イトーヨーカ堂では、高級肉を得る対面販売コーナーで、、松阪牛や那須産黒豚などの高級食肉を計り売りしている。

 

黒豚は、肉の繊維が細かいため、保水性が高く肉質の締まりがよいということと、脂肪の融ける温度が高いため脂がべとつかず、さっぱりしている面がある。又、旨味の元となるアミノ酸などの含有量が高く、臭みがない、といった評価がある。

黒豚の血統、規定についてだが、日本では規定が無く、白豚のヨークシャーやランドレース等と掛け合わせた品種もかなりある。純粋の黒豚と、黒豚とはいっても、雑種になるものとがあることになる。そして、圧倒的に純粋の黒豚は少ない。もともと純粋の黒豚というのは、肉質や重量、規格などが不安定で、生産がしにくいとも言われている。価格も歩留まりも含めたら非常に高く付くことになる。

では、ハイブリッドにしたものは、ごまかしているのかというとそうではない。黒豚の不安定さなどを安定化させ、価格的にも適当なものにし、なおかつ黒豚に品質、味を残すために、多の品種を混合するのを目的にしている。50%とか、25%が黒豚に血統になったりしているわけであるが、普及には貢献しているわけである。日本の今の規定が無い状態では、黒豚には、純粋のもの一部と、混血したものほとんどがある、と理解しておいたらいい。

 

ある鹿児島県の生産者が作った、100%純粋の黒豚肉をサンプルとして著者が試食したことがあるが、味はたしかに良かった。しかしながら価格を聞いたら、キロあたり4000円という答が返ってきたので、とてもではないが一般的な価格とは言えなかった。というようなことで、黒豚と言われているうちで純粋なものはごく一部、というのが実態だろう。ある四国の生産者が黒豚でなおかつSPFのものを生産しようと挑戦したが、不安定でなおかつコストがかかり過ぎて、実験的生産にとどまった例もある。

宮城県のある生産者はこの黒豚のSPFの生産に小規模ながら成功している。100%純粋黒豚で、SPF、こんな貴重ともいえる黒豚が地元で販売されていたのだが、「ほんの少しだけ」外部にも売れるということを聞き、東京のある高品質品を販売するので定評のあるスーパーマーケットで販売をしているが、好評である。価格的にはロースで百グラム400円、バラ系で300円以下で売れるのだから、評判になるに決まっている。但し、いくら人気でも、週に数頭分しかない。

 

肉のおいしさを決めるのは血統ばかりではない。与える飼料が重要な役割を持つ。神奈川県のある生産者グループが鹿児島の豚肉の味の良さに着目し、その原因として、飼料が大きな役割をはたしているのではないかと推測をした。それはサツマ芋である。この発想を元にサツマ芋を飼料に混ぜて実験生産をしたところ、たしかに味のよい豚肉が出来たので、これを元に新しいブランドポークが開発できた。サツマ芋は高価なので中国からの輸入でまかない、添加物の無い豚肉を生産している。

 

さて、フードサービスでのこれからの方向であるが、黒豚の規格、表示、何パーセント黒豚なのかという血統率と味の問題、あるいは飼料と肉の味の関係、更には添加物などの安全性の問題など、不透明が要素は多いが、顧客のニーズからいって、鶏肉の次は高品質豚肉の扱いが重要になっていくだろう。

ここ数年の間にフードサービスが扱う肉では鶏肉がまず最初にハイグレードを扱いだした。「地鶏」である。地鶏や、銘柄鳥についても黒豚と同じように表示、規格の問題があったが、フードサービスや量販店での扱いが増えてきたために、日本食鳥協会は国内産の「地鶏」と「銘柄鶏」の定義を決めた経緯がある。すなわち[地鶏は、食肉専用種ではないシャモ、名古屋コーチンなど「在来型鶏の純系、または片方の親が在来型鶏で、通常の若鶏より飼育期間を長くしたもの」と定義。銘柄鶏は「両親が肉専用種で、飼料や飼育期間などを通常と変えたもの」]と定めた。

今度は豚肉の番である。黒豚の規格については、全国食肉公取協が加盟販売店を対象に97年10月から黒豚の取り扱いや表示について調査を行い、98年2月をメドに結果をまとめるという。これを基に農水省も黒豚の表示基準づくりに乗り出す計画ということだ。

チェーンレストランのメニューを見ると「地鶏」名のメニューが本当に増えてきた。各企業に一つは扱いがあるほどである。しかし、豚肉についてはまだこれからのようで、黒豚の規格も含めて、計画段階のところも多いだろう。しかし、顧客のニーズが、「出所明らか」で「美味しい」もので、「本物」で、「安心・安全」なものを求め続けているのだから、今度は豚肉を考え、それによってユーザーから「黒豚」の規格を正しくするエネルギーを作ったらいい。そうすれば豚肉も本物を正しく扱うようになっていき、最終的にはフードサービスの強力なメニューにつながっていくことになるだろう。


株式会社 フーズデザイン 加藤光夫

 


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