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フーズデザイン加藤光夫


焼き鳥と七味唐辛子

私のよく行く居酒屋の焼き鳥はトップクラスだ、良い鶏肉を備長炭で焼くだけならばどこでもあるが、焼き上げるタイミングが手品のごとく正確なのである。

鶏肉の調理のポイントは加熱を終える瞬間だ。早すぎれば生だし、ちょっとオーバークックになったら硬くなってしまう。どこで判断するか。目である、目視である、「膨らんだとき」なのである。餅を焼くのと同じだ。そしてこの焼き鳥はお土産に持って帰り、翌朝食べても、美味しさそのままでジューシーなのだ。

焼いているのをじっと見ていると、そろそろ焼けたかな?と思うころ、鶏肉がわずかにフッと膨らむ瞬間があり、このとき火から離す。肉の中の水分、ジューシーさが閉じこめられたまま加熱され、一瞬膨らんだ時だ。これをそのまま放っておくとプスッと小さな爆発とともに、肉から蒸気となって飛びだし、しぼみ、さらに水分が出て行き、硬くなり、味が抜け、没落していくのである。

博多の老舗の水炊きはどうしておいしいのか?というグルメ番組をたまたま見ていたら、主人がお客の鍋に付いて、いちばん良いタイミングで鶏肉を鍋から取り出してくれる。主人は言った「鶏肉が膨れた瞬間に取り出します」。水炊きも同じだ。

焼き鳥といえば七味唐辛子。我が家で使っている京都の「一休堂」の風味は素晴らしい、大切に冷蔵庫で保管している。あるコンビニエンスストアの鍋セットで「一休堂」を使ってみたらどうかと勧めてみた、この七味を使うと料理がガラッと変わってしまうのだ。価格を聞いてみたら一般の何と四倍で一袋4円。とはいっても1パック3円のコスト増を売り上げがカバーしたらいいんダロー!ということで試しに試食してみたら関係者もびっくり仰天。鍋に入れて何も言わないでそ〜っと売ってみたら、じわじわと売り上げが伸び続けていったのである。京都への電話オーダーが続々と増え、あるとき一休堂が言った「お宅はんはずいぶん出前が多いんですねえ!」02.12.28.


中国の飲食店脱税防止システム

上海で飲食店に入り、支払いをするときに、紙幣のようなクジをくれる。コインで削ると当たり外れが出る例のシステムだ。ほとんどが外れなのだが、たまに大きな当たりが出て、新聞記事になることがあるそうだ。このクジは、入店客一名に1枚が出るのだが、これが中国の脱税防止システムになっている。客はくじをくれなければ文句を言うので、飲食店は必ず配ることになる。配付したクジ枚数と客数は同じになり、飲食店は脱税が出来ないことになるのである。日本の国税局の皆様、いかがでしょうか?

今回上海に3泊したが、全部外れだった。


はつかり、はくつる、八甲田

八戸新幹線「はやて」の登場で、特急「はつかり」寝台特急「はくつる」が無くなった。急行「八甲田」はどうなっているのか?

「はつかり」は、昔、数年にわたって毎月盛岡まで乗っていた。上野を出てしばらくしたらいつもの食堂車へ。ハムサラダかチーズクラッカーを頼んでビールでちびちびやっていると、次第に車窓が東北らしくなっていき、そろそろということでビーフシチューになる。あの頃ビーフシチューは高級なメニューで、何となくインテリになった気分。というわけで「はつかり」の思い出はビーフシチュー。

夜10時過ぎに出る「はくつる」には都内の居酒屋でいっぱいやって乗り込む。酒臭い上に、ションベンのフレーバー込み。あるとき米国から来た方と乗ったのだが、この人の体型はサントリーオールドの瓶形で、これに帽子。A寝台が無くてしかたなく最低の寝台で乗ったのだが、オールド瓶スタイルでは体の半分がベッドから出てしまい、この人もびっくりして頭を抱えてしまった。車掌を見つけてこの体型ではちょっと難しいので何とかならないかと交渉したら、一つだけキャンセルが出たA寝台を優先的にくれた。この方はその後何十年もの間、日本人に会うとこの話を楽しそうにしている。結果的に良いことをした。だから「はくつる」の思い出はサントリーオールド。

夜8時台に出る急行八甲田に乗って北海道までよく遊びに行った。乗るとすぐ、ベンチボックスシートに丸くなって寝てしまい、まだ暗いうちに目を覚ますと、青森にすでに入っている。雪原の一部を列車の明かりが照らし、青白く光っている。寒々とした中を青森着。青函連絡船に乗ったらすぐに7分間百円のコインシャワーに入り、さっぱりしたら缶ビール1本、カップ酒2本、それに氷下魚(こまい)の干物一袋を買って桟敷席で一気、すぐに眠くなって寝て起きたら函館。だから急行「八甲田」の思い出は氷下魚。02.12.8


限定、旬、売り切れあり

旬のファックスオーダー会社「築地倶楽部」<http://www.tsukijiclub.com/index2.html>の毎月の商品リストには「入荷不安定」「稀少品」「食べ納め」「発送日注意」「初物」といった言葉があちこちに入っている。こんな断りを見るだけで注文したくなるのは美味しいもの大好きな人々の特性である。

「新モノ」となっていれば、カツオや、サンマ、コハダといった魚や新生姜等の野菜、米、新酒などが出て来る。「品質の良い時期に製造」なんてのは、アキアジの加工品なんてのを想像する。「期間中に産地が変わる場合も」だったら、雪解けとともに北上していく山菜や、秋に入ってから紅葉とともに移動していくキノコ。「カタログ期間途中に終了する場合も」なんて見つけたら、すぐに注文しなけりゃとなる。「天候や収穫状況により、お届け日が変わる場合も」で考えるのは、海のシケを気にしながら、今日は毛ガニがあるかな?といそいそと札幌薄野のいつもの本物海鮮だけしか扱わない居酒屋に行ったことを思い出す。「木、金、土、限定出荷」なら、週末の自宅でのご馳走やパーティー需要に集中しての出荷なのだろうか。「名古屋コーチン、東京軍鶏は出荷時期により多少肉質が違います。詳しくはご注文の際におたずねください」これこそ親切、季節による肉質の違いによって料理も違ってくるだろう。「11月中旬より出荷予定」約束できない、どうなっちゃうのかわからない、一応予定で発表、注文してくれてもまだ出なかったらすみません許していただきます、である、胸を張って美味しくなったのを送りたいんだという気持ちがこもっている。大阪名物水ナスの漬物なんてのは、いつ出荷になるのかわからないところがワクワクする。

「ぐるめくにひろ」<http://www.goodham.com>に骨付きベーコンを注文すると「約1ヶ月後」ぐらいに届く、注文が来てから使う豚肉の枝肉を選び、3週間熟成後ベーコンに加工するからである。この珠玉のベーコンをオーダーしてから食べるまでは、一ヶ月もの間首を長くしてよだれを垂らし、ワインは何にしようと過ごすことが出来る。たった1つのベーコンで、1ヶ月も楽しめるなんて!02.11.25


寄席と焼き海苔

寄席に行くかと、昼過ぎに御徒町「鈴本」に行ったら「満員御礼」なので、仕方ないから近くの「薮」に行った。蕎麦屋で飲むときは、つまみメニューの端から端までひとつづつ頼んで、グダグダやる。最初に小型の木箱が置かれたので、フタを開けたら焼き海苔だったのだが、数枚の海苔が入っているわりには背が異常に高く、10センチぐらいある。

海苔を噛むとパリッと弾ける音がして口内に磯の香りが広がった、こうでなくっちゃ。しばらくして2枚目、パリッ、またしばらくして3枚目、まだパリッ、普通ならちょっとの間に薄い海苔は湿ってしまうのだがずっと同じパリッだ、何か秘密が?そしてこの箱は?

焼き海苔は、底が簾(すだれ)状にすき間がある浅い板皿の中蓋に乗っている。我慢できずに開けて中を覗いたら、薄暗い小さな空間の中に、おちょこがぽつんと置かれ、その中に、わずかな灰の上に乗ったこれまたちっちゃな炭がオレンジ色にちろちろと燃えているではないか!暗黒宇宙の中の灯だ、ニングルの火鉢だ、無人島に流された人のたき火だ。これで海苔の温度と湿度管理をしていたのだ!

ここの焼き味噌も良く、小さなしゃもじに塗り付けた味噌を炙(あぶ)ってあり、削り取りながら香りを楽しむ。板わさはつるりと舌触りがいい。こうなると熱かんでなくっちゃ。

のんびりとつまみを平らげ、仕上げのかけ蕎麦二杯を食べたら、だいぶ酔っぱらって腹もいっぱい、時間は4時、かったるくなったが寄席にも未練が・・・。

鈴本に戻ったらまだ満員御礼なので、半分残念半分安心で、まっすぐ家に帰って寝てしまった。02.11.11


井の頭線のスイス

渋谷から井の頭線に乗ったらいつもと様子がちょっと違うのでキョロキョロしたら、広告が全てスイスの素晴らしい風景写真になっていた、車両の中がスイスなのだ。よく見ると4枚の写真を組み合わせてあり、中刷り広告も、窓の上の広告も、すべてこの写真なのである。「スイスに来てください」などと何も書いてなくて、小さく下に1行でスイスの素晴らしさが入れてあるだけ。「特別広告車両」で、広告主はスイス政府観光局、粋なことしますね、スイス行きたい。02.10.29.


クジラ食べたい!

クジラがまともに食べられなくなって何年も経つ。聞くところによると、クジラが増えすぎて、魚を大量に食べ、魚が減っているという。「クジラと日本人」(小松正之著、青春出版社)によると「日本近海のミンククジラは、北海道のサンマの年間漁獲量とほぼ同量の20万トンのサンマを食べていると推測」。ということは、そのクジラを捕れば、おいしい食材になるし、魚も増えることになる、一石二鳥だ。韓国で犬肉を食べるのを欧米人が批判しているが、「食」というのは文化で、人の国の「食」を批判するというのはその国の「文化」を批判していることだ、他国の食文化に文句言うな!クジラ食べたい!イギリスの夫婦が日本人がイクラ丼を食べているのを見つけて批判したので「おまえらだってチョウザメの卵を食べてるじゃないか」と言ってやったという。他国の食文化に文句言うな!クジラ食べたい!

昔、捕鯨船で活躍していた人が「クジラはどうしたらいちばんおいしいのか知っているか?」と聞くから「普通は尾の身だけど」といったら、違うそうだ。「クジラを捕ったら、一般的には安い赤身の部分を30センチぐらいのでかい角切りにする。それを縄で十文字に縛って、船の外にぶら下げておく。そして一ヶ月待ってから引き上げると、表面が真っ黒になっているから、それをトリミングすると、内部にえもいわれぬ程のおいしい肉ができ上がっているのだ」これは「寒風・自然・熟成」だ。捕鯨船に乗って南氷洋に行かなければならない、体験したいと考えているうちに、クジラがまともに捕れなくなってしまった、クジラ食べたい!

昔クジラの赤身肉が安いとき、お肉屋さん向けの講習会で、和牛の脂をたっぷり使ってクジラ赤身肉を焼いて食べさせ「この肉は何か?」聞いたら「肩肉」とか「もも肉」などと言っていた、予想通り牛肉と考えたのだ。脂肪が味を決めるのである。低価格で効果的な教材だった。

最近私が食べるクジラは、いつも行く居酒屋の「クジラのベーコン」で、1500円。ちょっと高いけど、おいしい。まともな値段でクジラ食べたい!02.10.31


豆腐

まずい豆腐は、冷たくして、味がわからないうちに飲み込むのが身のためだ、不味いのを腹にいれると気分が悪いから。でも、いちばんいいのは、おいしい豆腐を食べることだ。

おいしい豆腐は、冷たいと美味しさが出ない。良い赤ワインを冷やしたら、美味しさが出ないのと同じである。では、おいしい豆腐は何度で食べればよいのか、知っていますか?

おいしい豆腐を買ってきて冷蔵庫から出し、冷たいうちに1口、しばらく温度が上がってからもう1口とやっていくと、次第に旨味が出て来るのがわかり、これからどうなっていくのか、ワクワクする。あまり温度が上がるとやっぱり良くないこともわかる。その都度、非接触レーザー表面温度計で測りながら食べていくのだ。最高においしい豆腐の温度がわかったとき、宇宙の神秘がわかったような気になる、大げさである。

私の場合は15℃。

ある豆腐工場の社長が言っていた「ウチはいつもおいしい豆腐を作っています。しかし、長い間豆腐を作り続けていると、年に2〜3回ぐらい、極端に特別に美味しい豆腐が出来ることがあるんです。原材料、気候、調理や製造ラインの状態など、色々な要素が絡み合うからでしょう」そして、こういう豆腐が出来たときは「売りたく無くなるんです」

豆腐を冷ややっこで食べるとき、普通はネギ、ミョウガ、生姜といった薬味を乗せて、醤油をかけて食べる。ところが次第にわかっていくと、まず高品質の醤油でないと満足しなくなってくる。さらに進むと、薬味も醤油も使わないで、そのまま食べるようになる。

おいしい豆腐を見つけ、15℃にして、そのままゆっくり食べる、これが最終のようだ。02.10.12


河豚は食べたいが、高い、そこで皮だけを頼む。細く切った皮は、ゼラチンが一杯で、こりこりと歯ごたえがあり、たっぷりと口に入れ、ゆっくりと時間をかけて30回も噛むと味がますます出て来て最高だ。

上海に行き、高級料理の「大王蛇」を食べた、大きな蛇が10センチぐらいに骨付きの開きの状態でカットされている。油で煮揚げていて、小さなスペアリブバーベキューのように骨から肉を齧り取りながら食べると美味しい。これに付いているのが大王蛇の皮で、縞模様がそのまま細切りされていて、実にリアル。思い切って食べたら何とこれが河豚の皮そっくりの美味しさなのである。うどんのようにガツガツたっぷりと食べてしまった。

米国に行くとカッパえびせんを円盤型にしたような菓子を売っていて人気だが、これは豚の皮を揚げて膨らませたもの、時々豚毛も残っていて気持ち悪がる日本人も多いが、安くて、ビールのつまみにぴったり。日本の関係者に以前教えたのだが、どうも日本での販売は難しいようである。

時々行く京都先斗町の小料理屋はカウンターの前で板前さんが料理をするオープンキッチンで、プロの手順を見ながら食べれるのはうれしい。あるときアマダイの刺し身で皮を外しているので「それをどうするの?」と聞いたら、普通は捨てるんだけど・・・というので、そんなら食べたい、皮は美味いんだ、と言ったら、サラマンダーで皮せんべいにしてくれた。これを焼くには、丸まってしまうので、菜箸で押さえたりひっくり返したりしながら板状になるように焼く、面倒なのである。しかし焼き上がった皮せんべいはカリッとして香ばしく最高だ。

「最後の晩餐」と言う、明日死ぬとしたら最後に何を食べる?という話があって、ある漫画家は言った、「鮭の皮とご飯」02.9.28.


キングサーモンのカマと、蛸のイボ

近くの超高級スーパーマーケットのキングサーモン売り場の最下段の奥を覗くと時々カマが置いてある。カマ部分はゼラチンがたっぷりあり、皮と身の間のトロトロがたくさん付いていて、身の半分は脂肪がまるで霜降り状態で刺し込んでおり、皮の裏側についているヌルヌルも最高である。そして、価格は劇的に安い。

何故こんな状態になっているか、私は知っている、ここの魚屋は、一番美味いこのカマに安い価格を付けてから目立たないように奥に置き、隠し、売れないようにし、閉店したら社員価格でさらに安く買って帰ろうという作戦に決まっているのだ。そんなことはさせてはならない、見付けたら、ぜぇーんぶ私が買うのだ。今日も2パック見付けた、期待に応えてくれた。

盛岡の居酒屋に行ったら、初春の美味しそうな地魚刺し身がいろいろあり、まず、タコの刺し身を頼んだら、白く半透明。噛んでいくと舌とほっぺたの内側に美味さがしみ込んで来る。しかし、イボが無いのだ。

蛸の刺し身の場合、丸ごとボイルしてから足をイボごとスライスするなんてとんでもない話で、こんなことをするのは、知らない板前か、鮮度が悪いかどっちかである。本体とイボを離し、本体は塩でもみ、しっかり冷やしてスライスする。イボはサッと湯に通し、ぶつ切りをする。こうすると本体シコシコ、イボこりこりという、全く性格の違う美味しさを味わうことが出来るのだ。

白身を一枚味わった後、おねえさんに言った「イボはどこに行ったの?」。板長らしきおじさんが来た「イボは、食中毒の問題があるから、捨てるんです」。嘘を言え嘘を!、私は知っているのだ、閉店したらおまえが持って帰って、サッとボイルして食べるに決まってるんだ、生姜醤油が美味いんだ、関西風ポン酢も良いんだ。「イボは大好きなんだ、食べたい」「でも食中毒が・・・」まだ抵抗してる、「では、サッとボイルしてからぶつ切りにして持って来たら大丈夫でしょ?」「ぇぇ〜と・・・それなら・・・」やっとあきらた。ボイルしたてのイボは美味しい美味しい。こんな美味いのを板前に持って帰らせてはならない、騙されてはいけません、蛸のイボは、板前のではなく、客のものです。

皆さん、美味いところを売っている人に略奪されないようにしましょう。02.8.28.


奥琵琶湖の鮎

琵琶湖の北「奥琵琶湖」、木ノ本(このもと)という町の村興しの仕事で半年通った。始めて行った時は鮎の季節。会議終了後、座長が「ウチの台所で美味しいものを食べましょう」となり、行ったら鮎が二十匹ばかり。型が不ぞろいで、ほとんどが小型で、やせていて、どう猛な顔をしている。これはすごいことで、全く天然なのだ。一般に、太って優しい顔をしているのは養殖だ。天然物は恐ろしい顔をしている。

こういう鮎は尻尾の方から骨ごと食べる。これは秋田のハタハタの食べ方と同じで、魚の骨は後ろ斜めに流れ出ているので、尻尾側から齧ると骨が気にならないで美味しく食べられるのである。鮎も同じ。

小型の鮎は3ステップで食べる。1ステップは尻尾から1/3で、鮎の肉の風味が締まった身に充満している。次は頭までのはらわたの部分で、天然の鮎は豊かな香りがするのだ。鮎は苔を食べるので、それが風味になって現れるのかどうか知らないが、「香る」のである。そして最後は頭で、複雑な頭の構造の中に、美味しいパーツがたっぷりちりばめられている。

ゆっくりと何度も噛んでいると、貴重なこの天然鮎の風味が口いっぱいどころか、鼻とのどの奥から頭脳の隅々にまでしみわたってくる。ずっとこのままで居たいのだが、どういうわけか飲み込むつもりはないのに、いつの間にか口内を去つていってしまう。仕方がないのであきらめて2匹目、そして、と、数匹をぶつぶつ感嘆符を発しながら食べたところで気が付いたら、数人いる関係者が誰も食べないで皆私に注目しているのだ。

「何故食べないの?」と聞いたら「あまりうれしそうに美味しく食べているので」という。「そんなこと言っていたら全部食べちゃうよ」と言ったら「どうぞどうぞ」と言うので、結局私が全部食べてしまった、うまかった〜!

この間、一番隅に座っている人が気になっていた、じ〜っと、うっとりと、潤んだような眼差しで私を見つめているのである、何となく気持ち悪い。座長が気が付いて言った「彼がこの鮎を釣ってきたんです、うれしいんです」

さて、数ヶ月後、冬になったら座長が「また台所で」と言う。つづく 02.7.12

 

奥琵琶湖の白子と美味い肉

「奥琵琶湖」の「座長」の家に行ったら、丼いっぱいの白子がある。真っ白ではない、うっすらと透明がかったピンク色なのだ、これは上物だ。今朝、若狭湾でとれた真鱈の白子なのである。数人の見守る中、また私が全部食べてしまった、白子で腹いっぱいになったの初めてだ。

琵琶湖の東側には美味いものがいろいろある。ここは、日本海でとれた魚や、昔朝鮮半島からのものを京都まで運んだ街道があり、その周辺に、美味しいものや、それを食べさせるところが出来た、というところなのだろうか。

冬の琵琶湖の名物は鴨で、鴨料理専門店もある。私は彦根に学生時代からの友人がいて、時々年末に天然物の鴨鍋セットを送ってくれる。この鍋で最高なのは「タタキ」。肉が少し付いた状態の骨を包丁で30分とか1時間まな板の上でぶつ切りするようにたたき続けると細かいミンチ状態になる。すりつぶすのではなく、たたき切ったので味がしっかりある。これを一口大すくって鍋に入れる。鍋に入れたら放っておいてはいけない、箸で煮上がるまでつかんでいる、取られてしまうからである。煮上がったら、一口大だが一口で食べてはいけない。半分づつ、2回に分けて楽しむのである。鴨のきつく強い風味が口いっぱいに広がって、辛口の熱燗と良くあうのだ。

ここら辺はおいしい牛肉の産地でもある。京都は全国的にも牛肉をたくさん食べる地域で、この多くの供給元が滋賀。彦根の友人の家に転がり込むと「今日は肉にするか」となり、車で醒ケ井というところにあるなじみの肉屋に買いに行く。枝肉がぶら下がっている冷蔵庫で注文するのだ。買うのは「ヘレ(ヒレ)」と「マメ」だ。ヒレは誰でもわかるが、マメは腎臓で、巨大な「ケンネン脂肪」をバリバリと割き分けるとその中に入っている。色と形が小豆に似ているからマメ、イギリス人は好んでこれを食べるという。これを切り身にし、タレに漬け込んで炭焼きにする。高価なヒレと安く珍味のマメの組み合わせを、井伊直弼の時代を思わせる古い家の座敷で食べるのだ。02.7.30


鱧(はも)三昧ともののけ姫の歌声

夏だ!鱧だ!京都だ!、ということで、京都へ。東京駅で予約したチケットを受け取るとき「新大阪までですね」というので「違う、京都!」と言ってから気がついた、この日は大阪でセミナーがあり、それが終わってから京都潜伏にしていたのを忘れていた。危ないところだった。

セミナーが梅田だったので、終わってから阪急電車で烏丸まで買ったら、500円玉でおつりがジャランと返って来た、安くてうれしい。

いつもの先斗町の「河繁」には「鱧食べたい食べたい」と連絡してあり、一枚丸ごと準備してあった。まずは「落とし」で、レアにして冷えたのを、梅肉和えにたっぷりワサビを崩し入れて食べると、京都の夏だなぁ〜。次は「鱧焼き」で、照焼きと白焼きの両方が乗っている、鱧の甘味がでていていいねえ。注文するごとに、骨切りのジャリッジャリッという音が目の前で響く、ジャリッ一つでよだれ一垂れだ、音が食欲を増進させる。「酢の物」はウナギの「うざく」の鱧版で、さっぱりと爽やか。酢飯を細ーくして作ってくれた「鱧寿司」は素晴らしいつまみ。平安時代のような徳利で熱燗をぐいっとやりながら、最後は「鱧の骨せんべい」。野菜は「ずいき」で、仕上げは勿論超濃い出汁の「煮湯麺」。ああ、満足満足!

普段はこのままホテルに帰って、幸福な腹をなでながら寝てしまうのだが、今日はちょっと違う。京都ではいろいろなホテルに泊まっているが、今回は京都ブライトンホテルに始めて泊まった。ここは素晴らしい。フレンドリーで丁寧なサービスは気持ちが良い。「河繁」に聞いたら、京都中の良いスタッフを集めたということだ。そして、7月は、毎夕、巨大な吹き抜けのロビーで、「リレー音楽祭 in アトリウム」という無料の日替わり演奏会があり、たまたま「もののけ姫」を歌った米良美一さんの日に当たっていたのだ。チェックインするときに「知らないで予約したのですか?ラッキーですね」といわれてしまった、本当にラッキーだ。

4階の回廊まで聴衆でぎっしりの中、米良美一さんのカウンターテナー(裏声唱法による男性アルト)が、巨大アトリウムいっぱいに響き渡り、それでも余って、時々開く正面玄関から、隣りの京都御所に忍び出ていった。02.7.11.京都


スペアリブとショートリブ

米国やヨーロッパの専門家に、肉の中で一番美味いのはどこか?と聞くと多くは「あばら骨の間の肉」と答える。豚ならばスペアリブ、牛ならばショートリブだ。

あるとき居酒屋の主人とこの話になったのだが、主人はスペアリブを知らない。そこで翌日正真正銘のスペアリブをわざわざ知っている肉屋さんに作ってもらい、持って行った。スペアリブの本物とは、骨付きバラ肉から、骨にそって三枚肉を取り去り、残った骨とその骨をつなぐ間の肉だけになったものである。

これに塩コショウをして焼いたらいいと板前に預けてのんびり飲んでいたら、みすぼらしく小間切れになり、縮れてしまった肉野菜炒めが出て来た。私の言ったことが全く伝わらなかったのか、面倒くさいものを持ち込んだヤローをいじめたのかわからないが、せっかくのスペアリブから骨を外してしまい、親分を無くした子分のように残ってしまった肉片を野菜と炒めてしまったのである。惨め。

米国の田舎の町でステーキハウスに入り、今日は何を食べようかとメニューを見たら「セブンボーンショートリブ」があった。これは、牛のあばら骨7本分をつなげたもので、もちろん骨の間の肉を齧るバーベキューである。同行者にぜひこれを頼むと良いとオーダーさせ、待っていたところにウエイトレスがでっかいお盆を持って来た。どんなものが乗っているのかと姿勢を正したら、そのお盆がそのまま置かれた。それはお盆ではなく、料理が乗っている皿そのものだったのだ。

オーダーした人は、カメラのフラッシュの中を汗をかきかき、時間をかけてなんとか全てを平らげた。セブンボーンは見た目は巨大なのだが、食べる肉はそれほどでもない、でもかなりあるけど。

ウエイトレスが来て言った「グッドジョブ(良い労働したね)!」


森下芳太郎氏 追悼

寿司割烹「白水」(01.2.5.発表文)

一流の料亭で修業をし、若く独立して小さな店を24年程前に持ちましたが、うまくいかずつぶし、しかしおいしい料理を出す店を造りたく、美味しいものと離れたくないので、トラック1台で食材の運送をはじめ、それが次第に大きくなり、50台ほどのトラックを動かす会社に成長させた、ある私の友人が、とうとう夢かなって、先日、寿司割烹「白水」を、神楽坂と早稲田通りの交差点のところに出しました。行ってみたら、内装や器にたっぷりとしかし慎重に金をかけ、高級な良い食材を使い、多少乱暴ながら、ハッとするような料理を出す店になっていました。ワインの種類は赤白1種類づつしかありませんでしたが、チリの美味しいシャルドネ(2500円)がありました。料亭に行ったら莫大な価格でしょうが、ここでは一人1万円程度でしょう。カウンターでこの愉快なおやじと美味しいものの話をしながらも面白いでしょう。

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02.6.13.ここのおやじ、森下芳太郎が、急性心不全で亡くなってしまいました、51才。

私とは、25年ほどのつきあいでした。彼も私も金が無い中で、何をしようかと、ワクワク考えていたころからです。

つまみが無い時、エビの殻をパリッと焼いて食べたら、その美味しさにびっくりしたり、本ワサビを薄くスライスして醤油で食べたらこれまた美味しかった。おいしい食べ方をたくさん知っていた。

「白水」を造って、力いっぱい食材を買い込んで、気前よく、味のわかるたくさんの人にたっぷり食べてもらい、楽しかったろうなあ。

俸禄焼き、見事だった。河豚のタタキ、豪勢だった。空豆焼き、びっくりした。中トロ、天使の熟成だった。塩で鯛薄切り、新鮮感覚だった。鱧落とし、京都の夏が神楽坂にあった。きぬかつぎ、濃厚だった。鮎、野生の香りがした。鯛の昆布締め、目が潤んだ。小型にぎり寿司盛り合わせ、腹に優しくうれしかった。森下の顔と料理がどんどん出て来る・・・きりが無い・・・もうおまえの料理は食べられない。

森下芳太郎があっちに行ってしまった、残念だ!残念だ!残念だ!

あっちで美味いのたくさん食べな。02.6.15.


鱧(はも)のちりちり

鱧は「骨切り」といって、身の中に入り込んでいる骨を、専用の包丁で、皮を残して骨を2ミリぐらいの幅でザクッザクッと切っていく。これを一口大にし、沸騰している湯の中に落とすと、骨切りした切れ目があるために、花が開くように広がる、だから「鱧の落とし」。これを冷やして、酢みそや梅肉和えをつけて食べるのだ。京都風は梅肉和えにたっぷりとワサビを崩し込むが、私もこれが好み。

鱧に始めて出会ったのは、二十数年前、魚の研修だった。骨切りの実習で、最初は慎重にやっていたが、骨切り包丁のバランスのおかげで、慣れると力を入れなくてもリズム感で切っていくことが出来る。調子に乗って来たところで、親指の爪を削ってしまった。その後、実習でカットしたかなりの量の切り身をデカイ鍋でサッと「落とし」調理し、その美味しさを始めて味わった。ところがその後講師が「鍋はどうした?」というのだ。私は全く知らなかったのでスープを捨ててしまったのである。「世界一のスープを大量に捨ててしまった!」と叱られた。

夏が近づくと京都の鱧が楽しみで、淡路島からもかなり京都に入っている。良い形の鱧は京都に行くのだが、小型の鱧は京都には行けずに、地元に残ってしまう。そこで淡路島で食べられる鱧は小型なのだが、低価格で、実は美味い。夏の時期に淡路島に行ったら、地物を出している料理屋か居酒屋に行き、聞いてみたら良い。この間は3人分も食べてしまった。

何年か前の京都の9月、先斗町を四条側からいつもの小料理屋「河繁」(075-241-3672)に向ってぶらぶら歩きながら、もう鱧はお終いかな?と考えていたら、松茸の香りが漂ってきた。店に着いてこの話をしたら「ありますよ」。どっちがどうあるのか聞かないまま胡麻の香り濃いお浸しで飲んでいたところに来たのが「鱧と松茸の土瓶蒸し」、うれしかった〜〜〜。これぞ京都名物、晩夏から初秋にかけての料理なのだ。

日曜日、東京赤坂でコンサートが終わったら、後援をしているアサヒビールからのワンドリンクサービスがあり、爽やかな風の中でちょっと良い気持ちになったので、新宿パークハイアットの日本料理「梢」に行った、5時半到着。多摩全域までを巨大パノラマで見渡せる41階、陽光はまだ白く、これから橙になっていくところだ。

出始めの「小鮎」や小料理あれこれを、冷たいシャルドネでぐずぐずダラダラやりながら、どんどん変色する大画面を賛美し、最終料理に「鱧のちりちり」というのを頼んだ。小鍋に昆布出汁、そこに骨切りをした生の鱧をしゃぶしゃぶ風に落とすと、鱧が「ちりちり」と開くのである。美味しさ増大用追加ワインを頼み、楽しく味わい、ふと下界を見たら、陽は既に我が三鷹方面に沈み、藍色の宙に初夏の星がぴっかりと光っていた。02.5.26.新宿


忍法エスカレーター高速降り

東京駅の中央線ホームは地上3階で、ほとんどが長いエスカレーターだ。左側は立ち止まる人、右側は急いでいる人が歩き下りる、時々先頭を駆け降りる人もいる。

今日、昼ごろこのエスカレーターに乗ったら、私の前には50代ぐらいのおじさんがいるだけで、はるか下まで誰もいなかった。おじさんは直ぐに黒い手袋を取りだしてはめた。暑いのにどうして?と思う間もなく、両手をエスカレーターの手すりに乗せて体重をかけたと思ったら、足はかかとが見えないような素早い回転の一段飛ばしで滑り降りていった、すごいスピードだ。あの手袋は滑らすために持っていたようだ。あっという間にはるか下に着き、手袋を外してさっそうと歩いて行ってしまった。カッコイイ!

あの手袋は、軍手のようだったような気がするが、いつも持ってるのだろうか?あの降り方は器械体操の平行棒のようにバランスをとるのは難しいのだろうか?あるいはちょっと練習すれば出来るのだろうか?あれだけのスピードで足を回転させるというのはやはりただ者ではない。趣味なのだろうか?独自の物なのか?それとも普及している技術なのだろうか?あの技は名前は付いているのだろうか?あの人の仕事は一体?

優しそうな人だったら聞いてみようとあわてて下におりたら、おじさんは既に消えていた。02.5.27.東京駅


コントラバスとワンドリンク

オルケストラ・ド・コントラバスという、フランスの6人編成の不思議なコンサートに行った。フランス大使館後援、アサヒビールの特別協賛で、ワンドリンク付きだという。

コンサートは「誕生」という曲から始まる、6台の横倒しになったコントラバスの後ろから、ここはどこなんだ?この大きな物体は何なんだ?といった顔で、きょときょとしながら6名の奏者が誕生する、コントラバスをなでたり叩いたりしながら、次第に玄で音を出すものだと分かり、最初のメロディーが流れ出すところからというスタートである。

コントラバスを逆さにして演奏したり、二人でかついで歩きながら玄の音と鼓の様に叩く打楽器的に使ったり、古い船の航海で壊れそうなギギッという振動や汽笛にカモメがびっくりする情景、壊れそうなバイクを走らせている若者、といったユーモアあふれる演奏手法の合間に、厳粛・エレガントなベース六重奏曲が入り交じり、実に楽しい演奏だ。

大喝采でコンサートは終わったのだが、どこにワンドリンクがあるのかわからないまま出ようとしたら、出口で私の愛飲のアサヒスーパードライとジュースを出している。私は威張っている会社は大嫌いで、謙虚な会社は大好き。ビール業界の場合、長年トップで威張っていたメーカーを、どん底からはい上がったうえに追い越してしまったアサヒは大好きである、実に気持ちが良い。私はスーパードライ、連れはジュースで外に出たら、赤坂の丘の上で、楽しいコンサートに満足したおしゃれな皆さんがワンドリンクを楽しんでいる。

夕刻の涼しくなった風がアルミ缶をかすかに響かせ、爽やかな初夏の香りになって街への階段を滑り降りていった。02.5.25.赤坂TBS横の高台


700円の鯛を

貧乏だが魚屋をやりたくて、卸売市場に毎朝通っていた男が、親友の結婚式に招待された。金が無いのだが出ないわけにいかない、しかし熨斗袋無しでも行けない。ポケット、ボロアパートの隅々の小銭を集め、握りしめてどうしようかとその日の朝も市場を歩いていたら、余り物なのか、オーストラリア産のバカでかい鯛を800円で売っていた。もちろん冷凍の安物なのだが、見た目は立派な鯛で、これを100円値切って買い、友人のやっている居酒屋に持ち込んだ、焼いて持って行こうと考えたのである。

鯛をお祝い物に焼く場合、勢い良く見せるために背びれと尾びれをピンと立てるのだが、これにはちょっとコツがいる。背びれの方は、頭にヒモをかけ、そのヒモで背びれの一番前の骨にかけて引っ張る、こうすると背びれ全体が前に引っ張られて、大きく扇子のように開くのだ。尾びれの方は、焼き台の端に押し当てて、広げて立たせる。もちろんひれには塩をまぶして焦げないようにする。

見事に焼き上げた鯛は、どう見ても瀬戸内海でとれたらしき超大物で、これをぶら下げて披露宴会場に乗り込んだ。こんなものを持ち込んで、嫌がられるのじゃないか、もしかしたら会場の係から断られるのじゃないか、汚れるから嫌がるかもしれない、などと心配したが、これで勘弁してもらうしかないと開き直り、新郎の前に恐る恐る差し出した。

友人は鯛を見たままじっと黙って動かない、やっぱりダメだなとしおれかけたら、新郎の目からどっと涙が飛びだした。02.5.15.


銀座「和光」

銀座4丁目の交差点は日本の商業の中心で、ここの「和光」は元服部時計店、であるから一階は時計売り場で、超高級品がずらりと並んでいる。銀座で待ち合わせをするときはここを使う(日曜日は休みです)。誰でもわかるし、売り場を眺めていればお互い少しぐらい遅れても大丈夫、だいいち見るだけならタダで、買ってしまう心配は無い、とても買える値段じゃないから。

ここの三階は紳士用品売り場で、高品質で高価なものがいっぱいだが、ごくたまに安いのを見付けて買うこともある。あるときとても品の良いポロシャツがあり、値段を見たら4,800円、和光にしては安いなと思ってよく見たらゼロがもう一つ付いていた。

猿之助のスーパー歌舞伎「孔明編」をたっぷり楽しみ、このまま帰る気分じゃないので「和光」に入ったら、三階で魅力的な靴を見付けた、夏、素足で履けるおしゃれなのを探していたのだが、そのイメージにピタリのがピカッと光っていたのだ。恐る恐る値段を見たら4万8千円とある、無理すれば買えないことはないのだが、迷う。そこで第二ステップ、サイズを見てみることにした。私の足は甲が高く広く、親指がデカイという農耕型で、この靴はイタリア製。イタリア製で私の足に合ったものなど無いだろうと少し期待して店員を呼び、探してみたところやっぱりダメ、ああ良かった!欲しくてしょうがないのに残念!と言う顔をしたら、店員が本当に申し訳ない顔をするので、良心がとがめた。しかしもうすぐ夏なのでこのコンセプトの靴は欲しい。

外に出て、50メートル先のワシントン靴店に入ってみた、二階が紳士靴で、イメージにぴったりのがここにはたくさんあってびっくり。最近はドライビングシューズを普通に履くのがトレンドのようで、これは良いというのがあり、値段は1万2千円、安い!買った!5百円の靴下も買って、ここではき替え、包装中にキョロキョロしているともう一ついいのがあり、1万4千円、さっきのと合わせても和光のよりずっと安い!これも買おう!2足あわせても和光より安いではないか!幸福幸福。

豊かな得した気持ちになったので、このまま帰るのはもったいない、「竹葉亭」に入り、いつもの「鯛茶漬けの鯛だけ」「鮪茶漬けの鮪だけ」「上新香」から始まり、辛口の熱燗をゆっくり味わいながらいろいろ料理をグダグダ、いつものように「今度はほんとの鯛茶漬け」で仕上げをして二人で1万2千円、ああいい日だった。

和光は銀座商店街の販売促進にも大きく貢献しています。でも、ごくたまには買ってるんですよ。02.4.27.銀座


マグロの骨

ホームパーティーをやる時、何かビックリが欲しくて、いろいろ工夫をする。あるとき魚河岸に出入りしている友人が「それならマグロの骨をもって行ってあげる」という。マグロの本当の中落ちというのは、身を取った骨と骨の間に残った肉で、スプーンで掻き出すものだ。

パーティーの当日、保冷ボックスで骨が届いた。キハダマグロだが、目の前に置くと迫力がある。宵になり、三々五々集まりながら飲み始め、大体集まったころを見計らって、どたっと置いたら大騒ぎ、この日は外国の方はいなかったのでこんなことが出来るのだ。

一騒ぎが収まった所にスプーンを人数分放り出したらワッと飛びつき、全員削り取りだした、さすが我が家のお客様である、皆良く知ってる!

この日のもう一つの目玉はTボーンステーキ。といってもヒレ肉部分が最も大きい最高の場所で、米国ではこれを特にポーターハウスステーキと呼んでいる。厚い英語の辞書を引いてみると「肉屋さん」という意味があり、お肉屋さんお薦めの最高のステーキ、という意味になるのだろう。そして厚さというよりも長さ10センチで、こんなのはフライパンで焼けない、ふた付きのバーベキュー窯で時間をかけて蒸し焼きにする。

焼き上がり肉中温度は42℃で、焼き上がってから30分程蒸す。焼き立てのローストビーフを直ぐに切ると、中から肉汁がぴゅっと飛び出してしまうが、それを蒸して落ち着かせ、美味しさを閉じこめるのだ。

デンと置くとまたまた大歓声。解体者を募集してナイフとフォークを渡したら四苦八苦していたが、私のわかりやすい指導によって何とか一口大の切り身を取り出しはじめ、交代しながら、着々と骨になっていった。

多少の肉とスジが名残惜しそうに残ってるデカい骨を、子供達が肉を食べながら横目で欲しそうに見ていたので、ほらッと投げ与えたらワン!とシッポを振って飛びついた。02.5.1.


仕事は楽しいかね?:デイル ドーテン (著), Dale Dauten (原著), 野津 智子 (翻訳)価格: ¥1,300

いつも一般的に言われていることと反対のことをやるとうまくいくことが多いと思っていた。この本を読んでやっぱり間違えていないようだった。仕事を楽しくやることが出来るように、元気になる本です。02.4.23.


焼き酒

四半世紀ほど前、しょっちゅう北海道に旅していた、広さに浸りたかったのだ。帯広に行くと必ず「炉端のあかり」という居酒屋に行っていた。マッチには「開墾の初めは豚とひとつ鍋、炉端のあかりヒゲおやじ」と書いてあり、屯田兵時代を偲ばせる。

この店は、オヤジの三姉妹で人気があり、にぎわっていた。店の中央に炉端があり、あぐらのオヤジが魚を焼くという構図なのだが、酒がちょっと変わっている。徳利を横にして、そのままだと中の酒がこぼれるから口部分をひねって持ち上げ、そのまま置くとひっくり返るから底の部分を平らにした、といった、例えは悪いがシビンを焼き物にして小さくしたみたいな形状の徳利を使う。

この徳利に酒を入れ、魚を焼いている炉端の炭から少し離れた適当に熱くなっているあたりに斜めに挿し込むのだ。ひな鳥が腹を減らして巣から口だけ開けて出し親からの餌を待っているような状態になる。炉端で焼いて癇をつけるから「焼き酒」。徳利の背中の部分には指でつまめる取っ手がついていて、これで持ち上げてお猪口に注ぐことになる、だからますますシビンの焼き物版に見えてきてしまう。

酒の注文が入るとオヤジがブスッと焼き酒徳利を炉端に挿し込み、癇がついたら三姉妹の誰かが持って来てくれる。だから何度も注文し、すっかり酔い、腹の中がしっかりあたたまり、目も保養され、幸せになって外に出ると軽々とした上質の雪が路地裏に降り積もり、ボクッボクッと踏み歩き、熱くなった頬を冷たい風で冷やし、つららに頭をぶつけ、大通りに出たら滑り滑り駅前の旅館に行ったもんです。三姉妹、今はどうしているのか、四半世紀前だからえ〜っと歳はだいたい・・・エ!?! 02.4.15.


ベトナム、ハノイ空港からホテルまで

空港から、自転車が路肩を走り、時々警官が立っていて、車とバイクが混沌とした高架道路をしばらく走る。両側は見渡すかぎり水田で、日本も農業が大事だがなあ〜と考える。

突然車は下に降り、未舗装の、土木工事現場か町かわからないところをがたがた。道端の土ぼこりの中でパンを売っている屋台がうっすらと見える、砂入りの浅蜊(アサリ)パンだ。

もう30分以上走っているのに信号が無い。同行者に「信号が出て来たらホテルは近いゾ」。どっち側通行だかわからない状態で、雪解け後的揺れの中をしばらくいったら突き当たりで間違いUターン。まともなホテルならタクシーの運転手はわかるダローに「木賃宿じゃないダローな」だんだん可笑しくなってきた。

気がついたらタクシーのメーターは動いていない、しかしベトナムは真面目な人達の国だから大丈夫とし、混乱の中をタクシーはまだまだ行く。アジアは混乱とか混沌と言う言葉があう国が多く、混乱とズルイ、といった所が多い中で、ベトナムは混沌で真面目、なのであることが、この国に来て三日ほどしてわかった。

今度は、50年前の渋谷スペイン坂的路地を行くと、突然迎賓館の入口みたいなところに出た、地獄に仏とはこういうことか、同行者は「これだ!」とホッと一安心。しかし未だ本当にそうなのかはわからない、いい気持ちになったあとまた落とされたら深い傷を負う、油断大敵。

立派な門番付きのゲートが重々しく開くのを待ちながら横を見ると、食中毒予備軍的食品雑貨を売っている店がある、皇居の横に駄菓子屋か、ベバリーヒルズの門番の店というところか、混沌はここにも厚く忍び寄っている。

ゲートが開き、タクシーは自信なさそうにソロソロ進む。両側は立派な塀が長々と続いていたが、突然、ハワイの高級リゾートホテル群が現れた、と思ったのだが、西洋人の奥さんが小さい子供を連れて歩いており、ここはどうも住宅である、かなり多くの棟があり、外国人向け高級住宅エリアなのかもしれない。この中にホテルがあるのだろうか?

タクシーの運ちゃんは迷いながらも、ローマのスペイン広場を小さくしたような幅広登り階段を構えるホテルらしき車寄せについた、見上げると間違いなく何とかホテルの表示がある、やった!これでひもじい思いをしないですみそうだ、しかし、高級感はあるのに人気は全く無い、ボーイも飛び出してこない。

タクシーの支払いはぼられていない、やっぱり真面目なベトナムだ、うれしい。でも見上げる入口にはまだ誰も現れない、左右を見るとエスカレーターはもとより、エレベーターもない。そういえばここに来るまでの道すがら、田んぼを耕す耕耘機もないし、そうだ、信号もとうとう1つも無いまま来てしまった。エコロジーそのもので、とても良い。しかしカバンは重く、引きずり上げるように苦難の階段を昇ったら、何とそこにはリゾート空間があり、英語で「ウエルカム」とにこやかに。空港からここに来るまでで始めての笑顔、ここは北朝鮮ではなくハノイだと納得した。

カードと金属キーを渡され、何で2つもあるのかなと考えたら「案内します」という。未だ部屋には直ぐに着かないかもしれない。渡り廊下を通って向かい側の棟に行くのだが、そこはさっき乳母車を押した西洋夫人がいたところだから、住宅ではないかと聞いたら「そうだ」という。更に聞こうと思っているところにまたゲートが現れた。「ゲートの開け方を教えます」といい、渡されたカードの裏にある4桁の番号を押し、カードの磁気部分をスライドさせるとゲートは開いた。これでやっとベッドにひっくり返れると思ったら、今度は無いと思っていたエレベーターが現われた、まだなのだ。

かなり疲れてきたが、もう一踏ん張りで絶対に着くはずだ、一階分上がったところで出たら、やはり住宅で、乳母車などの生活臭がする。やっとわかった、ここは、外国人用高級住宅の一部を使ってホテルにしているのである、面白い企画なのか、売れなかったから仕方なくこうしたのか不明。

長い旅の末に部屋に入ったら、大型居間付き、キッチン付き、高級キングベッド、大型バスタブ付きバスルームで、テラスからはプールと雄大なレイクが見渡せる、豊かな自然がたっぷり隣りにある。ああ疲れた、でも、ベトナムの現在と将来を象徴するような出来事でした。

混乱とまじめの確認の末に辿り着いたオアシス

ホーチミンの市内、木の下が白く塗ってあるのは夜間の事故防止

ホーチミンの市場、肉屋街。姉さんの肉体を見よ!一人置いた裸にエプロンを見よ!

02.4.10.ハノイ


ドルチェ

イタリア・フィレンツェの冬は寒い。ラファエロが、ミケランジェロが、レオナルド・ダ・ビンチが歩き、ガリレオが宇宙の思索をした町をしみじみ味わっていると、町を埋め尽くす石畳から靴の底を通じて冷気が体の芯まで侵入してくる。イタリアに着いた途端、氷イチゴをほおばった後みたいに寒風で頭が痛くなり、慌ててボルサリーノに飛び込んで買った帽子を被っても、日本で買えばかなりするだろう手袋を買ってもまだ寒い。それでも負けずに歩いていると、温かい焼き栗を売っているので飛びつき、手を温めながらホット一息する、ここの栗はデカイね〜!なんてことをいいながら、ルネッサンスに浸った満足感でノーミソはあたたまり、ディナーになった。

フィレンツェの焼き栗

大きいほうに栗を入れてくれ、くっついている小さい袋の方に殻をいれる。

イタリアのレストランはどの店もウチの味とワインが一番だと思っているようで、その単純さと一途さがうれしい。地元のグルメいっぱいのレストランを見付けて、アペタイト、パスタ、魚、肉と、一連のコースを平らげ、ひそかにベルトの穴をひとつずらせた後、ドルチェ(デザート)となった。チーズはどうかなと聞いてみたら盛り合わせがあるという。

さて、チーズに小さな器が2つ付いてきたので覗いてみたらジャムと蜂蜜だという。何でこんなの持って来たんだと聞いたら「なに言ってんのあんた、チーズにジャムと蜂蜜は当たり前じゃないか!」というのである。そんなことは全く知らなかった。恐る恐るまずジャムを付けて食べてみたらこれが実に美味いのだ。同行者も不思議がっているので分け与えたら全員感動、蜂蜜もまた実にあうものなのである。日本でこんなことやっていないし教えてもくれなかった。

この後の旅で行ったすべてのレストランで注文してみたのだが、どこでも当たり前のように持ってくるのでイタリアでは普通だということを確認した。日本に帰って関係者に紹介したら、大好評、静かなブームが広がりつつある。ああそうそう、このドルチェにはカベルネソーヴィニオン(渋味が強い赤ワイン)をお薦めします。皆さん、ぜひ一度やってみて下さい。

001/12月滞在、02.4.1.事務所で記


鴬(うぐいす)

ウチは井の頭公園の直ぐそばなので、小鳥が豊富だ、いいでしょう。梅が咲くと鴬が鳴き始める、鴬の特長を観察していると、
1.ゴールデンウイークあたりまで鳴き、以降は翌年まで鳴かない。気候との関係なのか?
2.鳴き声パターン
未熟型:   ケキョ、ケキョ
チャイルド型:ホーーホケキョ(高音)
アダルト型: ホーーホケキョ(低温)
長鳴き型:  ホーホーホホホケキョ
慌て型:   ホホホホホケキョ
3.一緒に鳴かない。何羽いても、一緒に鳴くことはない、応答するように、交代で鳴くのだ。未熟型が鳴いたあと、チャイルド型が鳴き、そしたらアダルトが鳴く、といった具合だ。
それにしても今年の春は鴬が多いようで、今朝、家から吉祥寺に花見方々ぶらぶら歩いていったら、あちこちで鳴いていた、連休までまだまだ楽しめそうだ。02.3.20.事務所


パーフェクトストーム

米国東海岸のカナダ寄り、ポートランドとボストンの中間、Ipswichという町に入った。ここには米国に初めて入植してからたった10年後、1630年の家が保存されている。この家ばかりではなく、かなり古い家が建ち並び、新しく建てた家も昔のままの木造だ。古き米国の最初の雰囲気で町を壊さない意志なのか、考え方が古いままなのか、どちらにしてもこの町並みがあることは素晴らしい。ここら辺から米国の歴史がスタートしていったわけだ、382年前ですね。
この町を通過して10分も行くと映画「パーフェクトストーム」の舞台となり、ロケーションを行ない、そして海に沈んで行った漁師達の碑があるグロースターに着く。
「パーフェクトストーム」は、三つの嵐が重なって、米国史上最大の嵐になったとき、海に消えて行った一隻の漁船と数人の漁師と漁村グロースターの人々の実話に基づいた映画だ。海岸沿いに長く伸びる寂しげな公園中央にある碑には、数えきれない嵐の中で海に消えて行った数百人の名前が刻まれている。この日はちょうどもうすぐ嵐が来るという天気で、海は気味悪く煙り、犬を連れた老人がトボトボ散歩をし、古い町並みの家々はじっと動かず、商店など見当たらず、ここに1月ほど一人で滞在したらどうなるのだろうか。海を考えるのか、エッセイでも出て来るのか、発狂するのか、一人でパーティーしまくるのか。02.3.13.グロースター.

「They that go down to the sea in ships」

数百人の犠牲者リスト


ガラスの地球を救え―二十一世紀の君たちへ光文社文庫/手塚 治虫 (著)/¥438

新神戸の駅でこの本を見つけた、環境の警笛と戦争の愚かさと地球の未来から、鉄腕アトムがあった。今日の新聞を見たら米国のブッシュが「ならず者国家」への核攻撃を計画するとあった?!ブッシュさんにこの本をささげます。02.3.10.


わかりやすいの

高級車ジャガーの新聞広告に「たった1度の人生ではないですか」とあった、分かりやすくて良いですね〜、ジャガーを買おうかどうしようか迷っている人がこのコピーを見たら間違いなく買っちゃいますね。
「そうだ、京都、行こう」なんて言うコピーがありましたね、それで今京都に来ています。
米国の景気が悪くなって巨大なKマートまでつぶれた直後なのに、もう景気回復宣言みたいなのが出ましたね、早いですね、でも、米国のやることは単純、わかりやすく言えばわかりやすいですね。ブッシュさんのやり方、私は嫌いです、戦争は好きだし、環境は考えないし、超大国なのに世界のことを考えないで米国エゴむき出しだし、しかし、彼の言うことは単純でわかりやすいですね〜。
日本の改革がいつまでも進まないんですけど、これは進めなければいけない人が進めたくないのと、何をやったら良いのかわからなくてあれもこれも手を付けようとウロウロしながら結局どれにも手を付けていないのと、強力がリーダーがいないのなどが重なって、何が何だかわからなくなっているからなのではないでしょうか?要するにわかりにくいんです、わかっていないからなんですけど。
人々の多くは、単純で分かりやすく説明しないと、わからないですよ。わかりやすいメッセージで人は動くんです。あれもこれも言いたくて、やりたくても、ひとつにまとめないと、人々はわかりません。家電のスイッチはひとつ減るごとに売れ出すのではないでしょうか?ファックスが一気に普及したのは電話と同じでわかりやすかったからです、パソコンがなかなか使いこなせない人が多いのはわかりにくいからですよ、だいぶわかりやすくなってはきていますが。スティーブ・ホーキングが最初の本を書くとき、編集者から言われた言葉「数式がひとつ入るごとに、売り上げは減ってゆく」、そこで、入れた数式は「E=MC2」ひとつだけで売れた。
日本の改革どうしたらいいというシロート対象のアンケートのひとつに「消費税1年間タダに」なんてのがありました。専門家はそんなこと出来るわけないというでしょう、でも万一これが検討されだしたら、専門家はデータと理屈をた〜くさん時間をかけて並べて「だからダメ」というでしょう。しかし奇跡が起こって、シロートが日本の大統領になり、これをやってしまって、景気が一気に活性化するかもしれませんよ、わかりやすいですから。そして、1年後経済がうまくいってしまったらどうするか?当たり前ですよ、そのまま消費税を消滅させればいいんです。
どうでもいいですけど、国会でムネちゃんが言った言わないで時間を使い、経済の方をほっぽらないで下さいよ、 Sさんはわかりやすく追放処理してしまい、早くわかりやすく日本の改革をしてくれませんかね〜、そうすればスマートな人々が「日本の政治も少しはマシになったようだから、協力してあげようか」というかもしれませんよ、日本の政治はスマートな人は近づくもんじゃないといわれているようですから。スマートというのは、かっこいいに知性を加えたもんです。スマートな人が政治に加わり出したらどんどん良くなっていっちゃったりして・・・夢か。02.3.8.京都


愚者の旅―わがドラマ放浪/倉本 聡 (著)/¥1,500

「北の国から」を放送しているころ、ほとんど毎晩遅くまで飲みまくっていたのだが、これが放送される木曜日だけは早く帰ってきたものだ。シナリオの面白さを知ってしまい、ほとんど読んでいる。子供達が小さいころは毎年のようにトマムに行き、麓郷に行っていたものだ。倉本聰の人生と作品が興味深く記録されている本。02.3.4.

戦士たちの挽歌海外シリーズ フレデリック フォーサイス (著), Frederick Forsyth (原著), 篠原 慎 (翻訳) 価格: ¥2,000

久しぶりのフォーサイス新作を見付けたので飛びついた。これは短編集で、裁判もの重厚などんでん返し、絵の好きな人にはこたえられない舞台と痛快な仕返し知能犯、イタリア旅行好きには応えられない不思議ずっこけ結末、イタリアルネサンス絵画が好きな人向けの込み入っているが喝采結末、ロマンチックドタバタ西部劇、と、読み出したら止まらなくて、新聞配達のバイクが来てしまった。02.3.4.


スープゼリー

豚の骨付きモモをそのまま使ったハムを時々スーパーなどの店頭でデモンストレーション販売しているのを見ると、ハムを買わないで安く売っている骨を二三本買ってくる。

持ち帰ったらスープが良く出るように骨の真ん中の細くなっているところにノコギリで少し切れ目を入れてから反対側を金槌でパキンと叩いて折り、鍋に入れて火をつけて軽く空炒りしてから水をどっと入れる。

直ぐに冷蔵庫の野菜室や台所の片隅に転がっている、人参のヘタ、セロリの葉っぱ、捨てる寸前のパセリ、半分使ったまま忘れ去られているタマネギ、使われないで捨てられてしまう運命の長ねぎの先っぽ、しおれかけた生姜などを鍋にぶち込み、弱火でアクを取りながら2時間ほど煮立たせないように煮込み、水が半分ぐらいに減ってくると、えもいわれぬ風味が鍋から立ち昇ってくる。しかし、ここでスープとして飲んではいけない、これをさらに魅力的な料理にするのだ。

鍋のまま冷やし、細かいメッシュの網を通して、お椀なり丼などのカップ型容器に濾し移し、ラップをかけて冷蔵庫に入れる。ここまでの作業は出来れば金曜日の夕方にでもやり、冷蔵庫に入れたら直ぐに寝てしまえばよい。

さて、翌朝は早く起きても、寝所の中で丸くなって本でも読んでグズグズ過ごし、そろそろブランチの時間になった頃ノコノコ冷蔵庫に行き、問題のカップを取り出すと表面に脂肪が白く浮いてかたまっているので、テーブルナイフで端をちょっと剥いできれいに取り除いて捨てると下には半透明のゼリーが現れる。

皿の上にプリンをひっくり返す要領で移すと、何とそこには、形状、弾力性ともに、実に魅力的なスープゼリーが現れるのだ。・・・写真はここをクリック

スープゼリーが現れたら、ナイフで中心から30度ほど、時計目盛りの5分の角度を切り取り、口内の温度で溶かしながらゆっくりと、舌全体を使って味わうと、冷たいゼリーが順次フレーバーたっぷりのスープに変身してくる。楽しんでいるうちに溶けて食感がなくなってしまうが、風味はたっぷりと口全体に残っているので、このままではどうしようもなくなり、冷蔵庫に走って昨日から冷やしておいたシャルドネを持ってくることになる。

冷たいゼリー、人肌に溶けたスープ、そして冷えたシャルドネを何度か繰り返したら、今度はフランスパンを1.5センチの厚さに切り、カリッとトーストして親指大ぐらいに契り、その上にゼリーを乗せ、静々と口に入れると、フランスパンの香りと一緒になり、シャルドネもどんどんすすんでいってしまう。実に豪華なブランチなのである。しかし、スープゼリーを全て食べてしまってはいけない、まだ次があるのだ。三分の一、時間目盛りで言えば20分の角度分ほどを残し、横目で見ながら、冷蔵庫の中や食材庫を漁りながらグダグダとバロックでも聞きながらブランチはすすむ。

こんなことをやっていると、肉体は地上を静かに離れ、天国とシャバとの間をさまよい出す。そして、腹も一杯になり、時間は多分もうかなり午後だろうとかろうじて意識したら、ずっと横に置いて気になっていたゼリーを電子レンジででもいいから温め、ふうふういいながら飲み干して腹をしっかりと落ち着かせたら、歯を磨いてフラフラとベッドに行き、豊かで深い午睡に入るのです。02.3.18.


ガリレオの娘 ― 科学と信仰と愛についての父への手紙/デーヴァ・ソベル, 田中 勝彦 (翻訳), 田中 一郎 (著)/¥2,400

ガリレオの娘から父宛の手紙とともに進むガリレオの思考を追跡している。私は手紙の内容よりもガリレオがどういう思考プロセスであの時代に科学の探究をしたかに興味を持って読んだのだが、期待通りの内容。物体の落下の時間を計測するのに水の落ちる時間を使った等の手法が分かる。有名なガリレオ裁判の具体的問答も興味深い。さらには最後の数ページで明かされるガリレオの墓の秘密を読み終わっときには鳥肌が立ってしまった。02.2.25.

宇宙からの贈りもの岩波新書 新赤版 739/毛利 衛 (著)/¥740

人は戦争に命を使ってしまうという不幸なことがある。しかし、人類のための宇宙への挑戦には命をかける価値が十分にある、と説く。宇宙滞在裏話が面白い。私は毛利宇宙飛行士のお兄さんと話したことがあるが、そのお兄さんに連れていってもらった日の出の皆既日食が宇宙への道のきっかけを作ったことを知った。02.2.25.

悠貧ダンディズム―男はいくつになっても不良少年/石津 謙介 (著)/¥1,429

石津さんの本はほとんど読んでいる、石津さんは何を着てもかっこいい、タートルネックのセーターの上に和服を着ても、ダッフルコートを来ても、公園でソフトクリームを食べていても、狩猟帽をかぶっても、そんな写真満載。靴屋さんのパーティーで左右の靴を黒と茶のチクハグにして自慢していたら、靴屋さんの夫人は全く違う形の靴を左右に履いていて参った話など、痛快一杯。ダンディーとはカッコイイに知性と個性と品位を加え、それに社会への反抗少しと大切に長く着ることを加えたのではないかとは私の考えです。


ボランティアの精神

NHKテレビを見ていたらあるリゾートの紹介をやっていた。子供の時、ナチの収容所に入れられて九死に一生を得た人が、その後米国フロリダでホテル業で成功した。ところが一本の電話がこの人の人生を変えた、不治の病の子供と最後の旅行に行こうと思ったが、間に合わなくて、フロリダに行けなくなってしまった、そのキャンセルだったのだ。自分のナチ収容所の経験と子供の不治の病が重なったのである。
この人はホテルを全て売り払い、その金でディズニーワールドから30分のところに土地を買い、不治の病の子供達のための巨大なリゾートを建設した、子供達はミッキーに会いたいのだ。ここに家族ごと1週間招待をする。費用は寄付、運営はボランティアで行う。
ディズニーワールドには家族ごと無料、ディズニーがスポンサーだからだ。多くの企業がスポンサーになっていてソニーもその1つ。

二人の不治の病の子供を持っていたある夫婦が、子供達が他界したあとも毎年休暇を取ってこの施設に来ている、寄付の百万円を持って。この夫の言葉、

得るもので、生活をする

与えるもので、人生を作る

地元の中学のカリキュラムの中にここのボランティア参加が入っている、教育の一環なのである。新しい中学生が入るときのオリエンテーションでオーナーが何故この施設を造ったか、どういう思想なのかを、やさしく、ゆっくりと説明していると、感動して涙を流す子供も出て来る。ここからボランティアの精神が出て来る。
ある経営者がいる、この人は毎朝出勤前と週末にボランティアに参加している。
ここのボランティアは2年先まで予約でいっぱいだそうだ。02.2.16.


慈善投資

「ニューズウイーク日本版」2.20号に、ビル・ゲイツの世界最大の慈善団体の資金は240億ドルで、これを途上国の保健と医療問題に投資している記事が出ていた。「寄付」ではなく「投資」で、効果を出せるところに投資をするという、いわばビジネスモデルを慈善に応用したものだ。投資をして効果を引き出せれば、単に与えるよりも数倍もあるいはもっと多くのリターンが来て、効果抜群になる。慈善に対する考え方が変わっていて、投資的な慈善が急増しているという。これがビジネスになったら、地球経済は一気に変わってしまうかも、そうすれば面白いですね。02.2.16.


イヴの七人の娘たち/ブライアン サイクス (著), Bryan Sykes (原著), 大野 晶子 (翻訳)/¥1,600

著者はあるとき太平洋の小さな孤島で重傷を負い、数ヶ月その島に閉じこめられた。その時の暇つぶしで図書館に入り浸り、ふと、島の人達はどこから来たのかに興味を持った。ミトコンドリアDNAを調べることで先祖を追跡出来ることが分かり、その後、では自分のいるヨーロッパはどうなっているのかを調べたところ、7人の女性に行き着いた、ヨーロッパのすべての人々の祖先は、この7人の女性なのである。そして、1万5千年から5万年前に生きたそれぞれの女性達の生活を推理する。日本人の先祖も判明しているので、読者のサンプルで調べてもらえる付録まで付いている。02.2.16.

ソーラー地球経済/ヘルマン シェーア (著), Hermann Scheer (原著), 今泉 みね子 (翻訳)/¥3,800

石油、石炭などの化石燃料はしばらくすれば枯渇してしまう、これを解決するには自然のエネルギー、ソーラーエネルギーを利用すればよい、こんな分かり切ったことが何故なかなか進まないか、それは、政治であり、産業界だ。ソーラーエネルギーは難しい技術ではなく、既に一部は完成して実用化されている、これを発展させればいいだけなのだ。そのためには政治と経済を変えればよい。事実、数値、データを駆使して解説し、早くしないと戦争になると警告する。02.2.16.


ふぐの皮

今まで散々食べていて気が付かなかったのですが、ふぐの皮は3枚に別れていることを福山で知りました。外側の薄皮はゼラチンいっぱいで、薄造りの真ん中に付いてくるもの、皮だけを魚屋さんなどで買うと、身のようなものが混じっていますが、あれは皮の身側。そしてこの両方の間に中間の皮があり、実はこれが美味いんです。この間の皮だけを教えてくれて美味さを知った後、この店のご主人が「あと少しだけあります」と持って来てくれたのがこれ。

この店を案内してくれた人に一応「全部食べていいの?」と一応強行事前承諾をして、ゆっくり食べました、酒はもちろんひれ酒。

もう一つ感動の味は牡蠣酢で、親指ぐらいや、一番小さいのはアサリぐらいの小さいのも混じった牡蠣なんですけど、歯触りがコリッとしていて、こんな食感の牡蠣ははじめて、びっくり仰天の牡蠣を見付けました。食べてみたい方は、今すぐに行くか、今年年末のシーズンまで待つか、どちらかですね。福山市内の料理店「八寸」、おいしい料理がいっぱい揃っています。電話084-921-1781。02.2.9.福山


京都の店

この作成後記の中に京都先斗町の店が良く出て来て「店の名前を教えろ」と、時々脅迫?されます。先週は「かぶら蒸し」が最高でした。焼き魚はアマダイで、私は当然頭の方をねだります。目玉の下を同行者に見つめられる前にほじくり、安全を確保した後、複雑で頑丈な骨を一つ一つ解体しながらしゃぶり、熱燗を飲みます、幸せですねぇ〜、これで天国とシャバの間をしばらくふらふら漂っていれるんですから、安いもんです。

「河繁」先斗町店.電話075-241-3672

小さい店ですから、予約して下さい。行ったらこのホームページを見たと話してあげて下さい。この電話は夕方まで転送されますから、夕方か夜に電話をしたほうが良いです。

場所は複雑で、先斗町の三条側から入り、50メートルほど行くとたばこ屋があります(本当のたばこ屋です、「たばこ屋」という料理屋が近くにあって迷った人もいます)ので、これを過ぎて直ぐの路地を右(高瀬川の方)に曲がると看板があります。まあ、分からなかったら、電話をしたほうがいいですね。02.2.7.京都


米澤の郵便配達

いつもの料理屋「志乃」のカウンターの横にかかっている吹雪の中の曲がり屋の絵は、ここの女将のおじいさんの家で、彼女はここで育ったそうです。相当山の中にあり、雪の季節の郵便は週に一度配達されるだけ。郵便配達が来るとちょうど昼なので上がらせて、配達が持って来た弁当にお茶や漬物などを出してもてなし、その間におじいさんは来た手紙を読み、直ぐに返事をさらさらと書いて、その配達人に渡して持って行ったもらったそうです、いい話しですねえ。

終戦後の混乱の中で「十年後に皇居の二重橋前で再会しよう」と別れた二人がいて、十年が経ち片方が待っていたが、やはり友は来なかった、それでもしばらく待っていたら、郵便配達が息せききってやって来て、やっと見つかったと手紙を渡したそうです。宛名は、その日付の正午、二重橋前で待っている誰々さんに、とあったそうです。急用で来れなくなったという手紙だったそうです、これもいいですね〜。02.1.10.米澤



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