惣菜.給食.弁当.ケータリング工場のトレーサビリティー

2013/05/07 22:45 に 松本リサ が投稿
総菜、給食、ケータリング工場などの調理工程は、グリル、ボイル、スチーム、フライ、生食の全てにわたり、原材料も肉、魚、野菜と多岐にわたる。こういった工場でのトレーサビリティーはあまりにも原材料素材の種類が多いので途方に暮れているところも多い。
製造アイテムは季節や売れ行きによっても常に変わり、販売先に提案したり、販売先からの要望から、新製品への切り替えも素早く行なえることが営業上重要でもある。こういった場合のトレースとロットの管理手法の一例を述べてみる。
話を分かりやすくするために、原材料の一部である2種類の野菜、トマトとキャベツで追って行ってみる。

 カット 量 アイテム 日時 場所
 トマト スライス 10kg サンドイッチ8月1日8時A農協
 トマト 1/8 5kg 野菜サラダ8月1日13時A農協
 キャベツ  千切り 5kg 豚カツ7月31日10時D農協
 キャベツ  千切り 7kg フライセット7月31日15時D農協
 キャベツ  ぶつ切り 9kg 中華炒め7月31日15時
8月2日15時
D農協
B経済連

下処理室へのリスト段階

全ての原材料は入荷したら、冷凍、冷蔵、常温の三つの倉庫に入れる。一方、その日に製造する製品は、あらかじめ予定されており、使用原材料と量がレシピから遡ってリストにされている。ある日の製造では、サンドイッチ用のトマトスライスが10キロ、野菜サラダ用の1/8カットトマトが5キロ、豚カツ付け合わせ用千切りキャベツが5キロ、フライセット用千切りキャベツが7キロ、中華炒め用ぶつ切りキャベツが9キロ必要というリストが作成されいて、下処理室に提示されている。
このリストは、その日の製造製品リストと、このリストからリンクしたレシピ、そして更にこれに連動して自動計算される原材料リストによって作成されている。最も単純なソフトを使うならば、表計算のエクセルアプリケーションで、素人でも少し勉強すれば出来るものだ。

下処理室の作業段階

下処理室に作業者が入ったときには既に食材別に必要なリストがモニター画面又は紙の状態で来ており、このリストに従って全ての素材が下処理されることになる。リストには時間単位で必要な量も入っている。
作業者は最初の8時までに要求されているサンドイッチ用のスライストマト10キロを、原材料倉庫から出し、サンテナーに入れて、製造室との間に設置してあるパススルーの冷蔵庫に入れる。このときに使用した原材料「8/1.A農協」を、製造リストに書き入れる。
このあと、豚カツ用千切りキャベツ5キロを10時までに製造して、パススルー冷蔵庫に入れる。使用した原材料は「7/31.D農協」で、リストに記入する。
13時までに野菜サラダ用1/8カットトマトが5キロ必要なので、昼休み前の12時までにこれがパススルー冷蔵庫に入っているように製造をする。これに使った原材料も朝一番のと同じロットの「「8/1.A農協」なので、これをリストに記入する。
午後に入って、15時までの二種類のキャベツが必要になるので、まずフライセット用の千切りを7キロ製造する、ロットは午前中に使った「7/31.D農協」を使ったので、これをリストに記入する。
もう一つの中華炒め用ぶつ切りを製造し始めたら、それまで使っていた「7/31.D農協」が無くなったので、次の原材料「8/2.B経済連」を使って9キロ作る。ということで、このぶつ切りは、2つの原材料を使ったことになる。
このようにすると、下処理する原材料が全て明確になる。多くの原材料は一つのロットからだが、一部、この例ではキャベツのぶつ切りのように2つの原材料が混ざるものもある。2つが混ざって、もしどちらか一方の原材料のトレースをすることになった場合でも、製造したアイテムの原材料は明確になっている。
下処理室で行なうことは、製造したカット野菜のバットに「中華炒め用・9キロ」といった表示をし、製造指示書(リスト)に、どの原材料を使ったかを記入することになる。農産物の履歴番号に変わったら、その番号を製造指示書に記入するということになる。この段階で、下処理室で新しく増える仕事は、原材料を記入する、という作業だけである。

調理から出荷段階

次は調理、冷却、パッケージになる。いつも通りに製造をし、パッケージ(盛り付け)の後、製品出荷保管庫に移すときに、いつものように製造日を入れる。これは今まで行なっていた作業だ。そしていつものように出荷することになる。この工程で新しく増える仕事は無い。

トレースになった場合

出荷後、トレースをする必要が出て来た場合、そのアイテムがあり、日付がわかっているので、下処理室の記録を見ることで使用した原材料がすぐに判明する。例えばサンドイッチに使用したスライストマトは「8/1.A農協」を使っていたことがわかる。同じように他の原材料についても、サンドイッチに使用した全ての原材料はこの記録にある。
反対に、生産地で問題があった場合はどうなるかというと、その生産地あるいは特定の日付のものが自社の製品に使われているかどうかをチェックしたい場合、下処理室の記録の中に問題の原材料が無いか探せばよい。コンピュータ処理をしていたり、履歴番号で記録されていれば、探すのは簡単だ。
この考え方で、今までの製造システムをそう変えることなく、つまり製造現場にあまり負担を急増させることなく、多くの原材料を使った食品工場でのトレーサビリティーを構築することが出来る。
ポイントは、
  1. 製造するアイテムに連動して原材料リストを作成するソフトウエアを作る。
  2. 下処理室での作業時、使用した原材料を記録する。
  3. 原材料サプライヤーに対して、納入する原材料のロットを明確にしてもらう。同時に、サプライヤーにおけるトレーサビリティーも構築してもらう、例えば農薬使用履歴など。
自動車を作る工場では、作る車種に応じた部品を細かく供給して、多車種の製造が出来るようになってきているが、この方式を取り入れると、この食品工場版が出来る。これについて来月解説をする。


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