自然食品とHACCP

2013/05/07 22:47 に 松本リサ が投稿
「オーガニックの加工食品を作っているメーカーですが、HACCPは出来ないのでしょうか?」とか「無農薬野菜を使った製品を作っていますが、HACCPは必要ありますか?」という質問が時々来る。答えは「痛みやすかったり、変性しやすい食品や、食材こそ、HACCPは威力を発揮するので、やるべき」である。
自然食品と言っても、農薬を少なくした「減農薬」「低農薬」、農薬を無くした「無農薬」、有機飼料や肥料を使った「有機」あるいは「オーガニック」、添加物や合成保存料を使っていない「無添加」など、種類は多い。こういったいわゆる自然食品のマーケットというのは次第に大きくなりつつある。有機の認証も広がりつつあるし、これらを使った加工食品もじんわりと伸びてきている。以前から自然食品を扱う小規模な店舗はあったが、これから大型の店舗が出て来る時代である。
ニューヨークのセントラルパークの南端、コロンバスサークルの前にタイムワーナービルがつい先日完成したが、この地下にオーガニック食品のみを扱う巨大スーパーマーケット「ホールフード」が入った。この店は何と半分がデリカテッセンで、寿司、サラダ、パスタ、チーズ、サンドイッチ、スープ、コーヒー、デザートなどのデリ(総菜)を自由に買い、広いイートインコーナーでゆっくりと食べることが出来る。店の半分は、食肉、鮮魚、青果、日配、それにグロサリーの売り場がある。この広大な売り場にある商品全てが有機食品なのだ。そしてこれらオーガニックに特に重要なのはHACCPである。
添加物をたっぷり使った食品は、なかなか腐らない、日持ちする、その代わり体に良くない。反対に体に良い自然食品は傷みやすい、虫や温度の影響も大きい。世の中の流れは自然志向に向かっている、だから自然食品が伸びてきている。自然食品を安全に扱い、製品にするには、管理を慎重にしなければならない、そうしないとせっかく体に良い自然食品が逆に危害になりかねない。
加熱加工食品を製造するには、食中毒菌を死滅させるために一般的には中心を75℃以上に加熱する。これ以上なら安全になるが、あまり高温にしてしまうと、せっかくの美味しさが無くなり、ジューシーでなくなり、重量が軽くなし、売れなくなってしまう、ろくなことはない。であるから上限温度も決める。85から90℃程度までのところが多いが、この温度は安全のための温度ではなく、美味しさ、品質のための限界温度である。これがHACCPである。だからHACCPを行なうと、安全性だけでなく、品質も良く安定させることが出来る。だからHACCPをやると売れるようになる。

では、製造ラインの管理はどうするか。洗浄をどのように行なうかは自然食品の製造では重要である。せっかくの自然食剤を原材料に使っても、カッティングやミキシングなどの製造工程で、化学物質が混入しては何にもならないからである。
ニュージーランドのある加工食品工場では、オーガニックビーフを使ったコロッケやハンバーグなどの加工品を製造するとき、事前の洗浄は化学洗剤を使わないで、認定された自然素材を使った洗剤で洗浄する。一般の製品を製造した後、オーガニック製品の製造に入る場合、普通の倍の時間をかけて、認定された洗剤と方法を使ってラインの全てを洗浄する。時間と手間がかかるが、これでないと製品は認められない。この衛生管理を正確に安定して行なうためには、HACCPの土台となる一般的衛生管理で管理することになる。

次に、肉、魚、青果などの生鮮品が、間違いなく自然食材なのかを判断する、あるいは管理する、最終顧客までがそれを知りたい場合に、どこの生産農場や養殖場からどのようなルートを通ってきたのかの情報を掲示できるようにするには、トレーサビリティーが必要になる。トレーサビリティーはHACCP構築の重要な一項目である。また、農場から工場、工場から販売店舗、あるいは生産農場から生鮮のまま販売する店舗までの管理はどうするか。冷蔵、冷蔵などの低温管理、輸送車や倉庫の衛生管理、防虫防鼠、一連の流れにおける従事者の個人衛生管理などは、ロジスティクス(輸送と倉庫)の一般的衛生管理で行なう。

農場における管理はどうするか。飼料、肥料の使用量、低農薬や減農薬では少量の農薬を使うが、規定通りの量を使っているのかの管理と記録が必要になる。具体的には栽培管理表のような形になるが、この記録はそのままトレーサビリティーにつながっていく。農場の衛生管理は、ゴミ、鼠、使用する車両や運搬機器、従事者の個人衛生管理などがある。
自然栽培の青果をやっている農家が、同時に牛の肥育も行なっているところが日本には多い。牛はO-157を持っている牛が次第に増えてきているが、従事者が、牛舎に入った靴で、そのまま青果の圃場に入って行ったら危険がある。このような場合には靴を履き替え、出来れば衣服も着替えてから移動する必要がある。同じ状況の中で、例えば山や丘などの斜面で、上に牛舎があり、その下で青果の生産をしていると、問題になるかもしれない。これらを管理するのがGAP(Good Agricultural Practice 生産段階の適性生産基準、農場における一般的衛生管理)である。

HACCP、その土台となる一般的衛生管理、ロジスティクスの一般的衛生管理、GAP、これらがこれから伸びて行く自然食品の安全性を管理する力になる。
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