中途半端な加熱料理の安全検証

2013/05/06 15:24 に 松本リサ が投稿
高品質の料理を提供しているある天ぷら店がHACCPを導入中、CCPとなる加熱調理でどうしたらいいか分からない事態になった。

弁当や総菜の揚げ物の加熱後中心温度は一般的に75〜85℃程度になっている。しかし高品質の天ぷら店では、そんなに温度を上げてしまったら、素材のおいしさ、ジューシーさが失われ、味にうるさい顧客にそんなのを出したらたちまち「揚げすぎだ」とクレームが来る。それでも衛生管理上必要だと無視して続行しようものなら、客は来なくなってしまう。高品質天ぷらは、表面パリッと上がり、中は半生ジューシーという状態が必要なのだ。温度でいえば中心で50℃程度だろうか。

この問題は、HACCP導入を飲食店に薦めているある自治体に、天ぷら店だけでなく、高級な飲食店から質問が殺到したところから来た。

同じ問題があるフランス料理店でも出て来た。フォアグラの加熱で、これも75℃まで加熱したらおいしさは失われ、焼きすぎ焼き鳥のレバーみたいになり、高級高額なフォアグラが最低になってしまう。フォアグラの加熱後中心温度は45℃程度なのだ。

45でも50℃でも、この温度は加熱温度としては最も危険な温度帯になる。

カリフォルニア州は食品の衛生管理に非常に厳しいところで、この様な温度帯で加熱管理をしていると、最も重大レベルとして12点の減点になる。百点満点での評価なので、大変だ。70店以下になったら営業停止になる。

以前、サンフランシスコにある有名な和風フレンチレストラン「MASAS」に行くとき、保健所のホームページで館内のレストランの衛生管理の点数がチェックできるので見てみたら88点で「ハイリスク」となっていた。12点が減点されていたのだ。

ここは非常に良い店なのだが、多分、刺し身などの生食系やベリーレアに加熱するシーフード類が引っかかったのだろう。とは言っても、日本的に見れば表面パリッの中半生のおいしい状態なのだ。食べたらこれらの料理は実に満足できる素晴らしい調理になっている。しかし、殺菌という科学的安全管理からすると不安全になるわけだ。

翌日今度は老舗の大型レストラン「FARALLON」をチェックしたら100点。半生状態のメニューは洋食レストランなので無い。

では、日本でこれをどうしたらいいか? 厳密な中心温度にしたら、おいしくなくなり、顧客は来なくなる。義務づけたら店はあがったりだ。

この問題解決は、一般的衛生管理だ。

まず、安全な食材を仕入れる。ということは、例えば築地のような卸売市場で仕入れるなら、仲卸店の清掃洗浄、従事者の手洗いや健康管理といった一般的衛生管理をしっかりやっているところから仕入れる必要がある。もちろんその仲卸店が安全に管理している産地や卸から仕入れなければならない。

そして、店まで温度管理や配送車、容器などの安全管理をし、店に入ったら、冷蔵温度管理、保管場所や従事者の衛生管理を徹底し、素材そのものを生の状態で安全に管理しておく。その上で調理をすることになる。

では、その安全性をどう検証するかだが、素材や季節、産地、調理した後といった重点ポイントで検査することだ。

具体的には例えば、店で調理前になる魚介類のうち、数点を選び、細菌検査をする。また、調理した後も同じように数点検査する。これを季節ごと、三ヶ月に一回程度の頻度で行う。また、調理機器道具のふき取り検査も同じように行う。といった方法で検証し安全確認をした上で提供するわけだ。

数点の検査ということだが、例えば3月、春先は貝類が多く出て来るので、ハマグリ、アサリを取り上げる。それに5月あたりまで出すサヨリに海老を加える、といったようにする。6月にはイカなど、夏場によく出るものを検査する。

高品質の料理を出す店ではそれなりの良い、つまり安全な素材を仕入れ、調理まで安全に行っているところがほとんど(と思われる)だろうから、事故が起こる可能性は少ないだろうが、更に安全に、しかもおいしく出すためにHACCPで管理するなら、この様にしたらいい。そしてこれらのプログラム、頻度を決めて実施し、記録を付け、監視していることだ。

監視については、評価と分析を行う。

評価というのは、細菌検査という検証がそれでよいかということだ。例えば、店が提供する料理の数がかなり多く、その上チェーンとして数店舗あるいはもっと多くの店舗がある場合、もし問題が起こったら大変なことになる。そこで、3ヶ月ごとではなく毎月必要なのではないか、数アイテムでいいのか、全アイテムを検査する必要があるのではないか、本部があり、そこで一括して仕入れる場合、大規模ならば毎日あるいは毎週検査を本部で検査した方がよいのではないか、この場合各店舗では一般的衛生管理の徹底を行うようにする、もし店舗が全国に分散していて仕入れがそれぞれならどうするか、といったことを考えることだ。同じ原材料でも、産地が変わったり変えたりしたときに新たな検査が必要になることも忘れてはならない。

分析は、検査結果が出て来たら、その時の数値が安全かどうかを判断するだけでなく、毎回の検査結果が、前回とどのように違っているのか。例えば春から夏にかけての結果が突然悪化していたり、海水温の違いや産地でデータは変わるがその変化がどうなのかなど、常に監視し、たとえ合格レベルでも、悪化傾向が出ていたらそれについての検査頻度を短くして慎重に見る、といったものだ。


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