製品の情報及び消費者の意識

2013/05/19 22:53 に 松本リサ が投稿

ポイント

  •  ロット、ラベルを間違えない
  •  回収と連動させる
  •  正しい表示
  •  消費者への情報伝達

ロットとトレース

ロットをシンプルに付けることが出来れば、原材料だけでなく、販売先へのトレーサビリティーもしっかり把握することが出来る。製品のロット番号を読んでくれれば、その製品は工場内では誰が製造してたのか、使用した原材料、原材料サプライヤーではどのように生産していたのかも分かり、原材料サプライヤー、例えば農場などにおいても使用した薬剤や飼料をトレースできるようになっていれば、ほぼ完全な履歴が極く短時間にわかる。原材料の一部に問題が出ていたことが後で分かり、回収の必要が出た場合、回収対象はすぐに特定できる。これが出来ると回収コストも人的危害も最小に出来る。

オーストラリア最大と言われるアデレードにあるオーガニックのパスタメーカーは「トレーサビリティーは極く短時間で出来る」という。多くの農家農家での栽培履歴まで調査するのは大変だと我々は考えるのだが、「このあたりの8件の農家から全てを購入している」と聞いてびっくりした。想像もつかない大規模な農家なのである。農家というとファーマーというのだが、大規模な農家は「グレージアス」と呼んでいるのだそうだ。

日本の食品工場でのロットとトレースは、原材料もレシピも販売先も複雑なので、なかなかシンプルにできないと考えているのだが、工夫と発想で出来る。

チェーンレストラン向けにソースやスープを製造しているあるメーカーでは、HACCPのチェックリストもロッティング(ロットの付け方)もシンプルである。

製造用のチェックリストは一つのロット(釜)で、表裏両面を使った1枚だけ。スープでもソースでもまず原材料を揃えるところから始まる。野菜類、トマトやブイヨン、油脂、調味香辛料、フラワーなどの粉類といったかなりの原材料を、チェックリスト表の左半分の原材料リストで揃える。リストにはそれぞれの量が入っているので、この通りに集めてキャスターに乗せていく。このときピックアップした原材料そのもののロットも記録する。例えばトマトペーストの缶をキャスターに乗せるとき、個数と同時に記入されているロット番号も一緒に記録する。チェックリストが全て埋まれば、原材料が正確に揃ったことになるので、確認印を捺して、キャスターとチェックリストを挟んだバインダーは一緒に調理室、釜が何台も並んだ製造室に行く。

製造室の担当者は原材料が詰まれたキャスターとチェックリストを引き継ぐ。チェックリストの表の右側に釜での調理手順、原材料の投入順序、CCPになっている温度、調理途中でのやブリックスなどの確認項目などのマニュアルになっているので、これに沿ってチェックをしながら調理を行なってゆく。原材料の投入過程でダブルチェックも出来る。全てがチェックされて製造が終わることで、問題なく調理できていることが確認されるので、次に冷却工程の担当者に引き渡される。

釜からポンプを使ってキャスター付きタンクに移されると、チェックリストバインダーも一緒に冷却室に移動する。冷却室担当者は今までのチェックリストを確認したら、裏側にひっくり返す。裏の左側には冷却工程の作業マニュアルがあり、温度、時間などのチェック項目がある。チェックを行いながら冷却が終了すると、ここの工程でのチェックが全て終わり、タンクと一緒にチェックリストバインダーも最終のパッケージ室に行く。

パッケージ室ではチェックリスト裏の右側に記入が行われ、箱詰めまで終了すると、このチェックリストは全て一杯になる。ということは、全て正常に製造されたことになる。パッケージされたケースにロットが最終的に印字された後、製品は倉庫に行き、チェックリストは製品チェックリスト保管室に行く。

こういった形で製造が行われているので、それぞれの作業者の名前もわかり、製造途中の状況も全て記入されていることになる。もし途中で問題が出た場合、改善してから製品になったのならばその作業内容がわかる。改善できないので廃棄したのならば、その理由もわかり、この場合は製品として出ていかず、チェックリストは途中廃棄のロットとしてファイルされる。つまり、製品チェックリストが保管されているということは、そのロットは正常な製品であることを証明していることになる。また、予期せぬ問題が出た場合でも、短時間に正確にトレースできる。

さて、製品が店舗に行った後、製品に問題があるのではないか、例えば味とか異臭がするといったクレームがあった場合、店舗から工場に連絡が入ると、工場ではそのロットを読んでもらい、保管されているチェックリスト表裏両面をすぐ店舗にファックスをする。送信してから工場側はこのチェックリストの内容を確認する、店舗側はすぐにそのロットの詳細な製造記録が来ることになり、これを見てみる。すると、工場側でも店舗側でも問題は無いことがすぐに確認できる。正常に製造された製品しか工場から出ていかないし、製品チェックリストがあるということは正常に製品を作ったことになるのだから。

後は2つほどの可能性が残る。店側の勘違いや保管などの間違い(例えば冷蔵でなく常温保管庫に入れてしまった)、物流過程で何らかの問題があった(例えば温度管理不良)、といったことである。工場を出てからの問題発生や勘違いで工場側にクレームが来ることは良くあるが、この新しいシステムによって店舗からのクレームが激減することにもなる。なぜなら、工場からは正常な製品しか出荷しないことが店舗側にも分かり、何か問題があれば物流か店舗かどちらかに原因があるだろう、ということになるからである。
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