製氷工場のHACCP

2013/05/10 17:33 に 松本リサ が投稿
氷、雪、氷菓は現在始まりつつある缶詰めやレトルトの次ぐらいに控えている食品群の中に入っている。原材料が水のために、原材料のチェックから重要なものになる。氷の製品には大きく分けて2つあり、一つは魚工場などで使う「角氷」と呼ばれる大きな氷の原料で、もう一つは、水割り用などに使うコンビニエンスストアなどで販売されている袋氷である。ロックアイスは角氷を潰して作る場合と、ロックアイス専用の製造機を使う場合がある。製氷工場は、かなり自動化が進んでいる大手の工場と、旧式の工場の二極化されているのが現状のようである。旧式の工場では、建物設備とも老朽化しているところも多く、歴史的に各都市の「市場」に小型の工場があることが多い。しかしながら、地方の工場でも小型ながら最新の設備を入れた工場も出てきており、こういった工場が次第にこれからのシェアを次第にとっていくようになると思われる。

氷のマーケットというのは、昔は角氷しかなく、氷というと「氷屋さん」に買いに行ったものだし、飲食店には配達されていた。そして家庭用の電気冷蔵庫で手軽に氷が出来るようになってからしばらくは家庭用の氷のマーケットなどなくなると思われていたのが、大手製氷メーカーが袋氷を出し、氷のおいしさを前面に出し、便利性も重なって、ヒット商品になったのである。現在では小売店での重要な商品に成長してきている。

氷のHACCP上の問題点は、原料水と、異物混入である。まず、原料水では、水道の水をもととするものと、地下水を使う場合の二通りある。今回の工場では地下水を使っている。地下水を使うメリットは、水そのものがおいしいので、氷も当然おいしくなる、というメリットで、これは水道水を使っている大都市の大手自動化製氷工場の製品との差別化をすることになる。「おいしいミネラル水を使って作った氷」となるのだから。

使用する地下水は、当然立地の問題になる。ミネラルウオーターに出来る原料を使えばいいのだが、その地域の開発行為などによって、地下水の流れが変わったり、何年も経つうちに汚染の問題が出てくることもありうる。今回のグンレイは、福島市の北の山岳地帯を背景にしており、山そのものが開発されないかぎりその心配はないようである。このような立地で製氷工場が出来るのは非常にラッキーである。

1. 工場外観
製氷工場は、大きな装置産業になるミネラルウオーターや、清涼飲料水の工場とは違って、比較的小型の工場でも成り立つ。この工場は作業員5人の工場で、角氷と、袋氷を作っている。建物の外壁は、本来ならば窓は全く必要ないのだが、建築基準の関係で窓を作らなくてはならない。最も小さい窓を作り、そしてこの窓は開けることがない。現実的には小さな虫の心配を皆無にするために、窓の内側のすき間をシールしてしまっている。ドッグシェルターは2ヶ所で、冷凍倉庫との間にプラットホームがある。従業員の入り口と事務所は左側で、この事務所、サニテーションルームと製造室の間が最初の汚染地域と準汚染地域の隔壁になっている。

2. 原料水のフィルター
フィルターは、地下水を使っているので、塵芥が入らないように重要である。フィルターの交換時期は製造した氷の量によって交換するようになっている。製造した量は製造記録をもとにわかる。このフィルターとシステムで問題が出ていないのだが、今後もう一台のフィルターをつけることも検討をしている。

3.製氷室
一般の人はほとんど見る機会がないだろうが、これが氷を製造する、水を凍らせる部屋である。原料水は、フィルターを通してから工場内に入る。この原料水は毎日検査されるが、検査の結果は24時間後にわかる。今まで問題になったことはないが、もし問題があった場合は、翌朝半分まで出来た氷を破棄すればいい。角氷は48時間かかって凍る。また、袋氷は24時間かけて半分凍った角氷を潰して作る。したがってどちらにしても問題が出た場合は「廃棄」という処理にすればいいことになる。氷の場合の廃棄は、外に出せば溶けてしまうので、コストもかからない。最も、そんなことは今までなかったということである。
プラスチックのただの広い体育館みたいに見えるが、一枚一枚のプラスチック板の下には、それぞれに角氷の型に水が入れられ、凍結させられてる。

4.製氷缶
この製氷缶(型)は鉄を使っているところが地方工場ではまだ多いということだが、ここではすべてステンレスである。ステンレスは鉄製の3倍のコストだが、錆と、錆による異物の問題が出ない。今写真ではすでに凍っているが、この凍る途中では、細いパイプを中にいれて空気を入れている。泡をブクブクとさせることによって均一に凍るようにしているわけである。ただ製氷缶に入れて冷やせばいいというのではないい。製氷缶を挿し込むときと、凍ったものを出すとき以外は当然プラスチックのフタをしているのだが、それでも人がこのうえを歩くと、人が持っている異物をおとす可能性があるので、担当者以外はこのうえには乗らない。担当者が入る場合でも、厳重なチェックをしてはいることになる。

老朽化した製氷工場では、木製の建物、鉄製の製氷缶、塵芥や虫、異物の問題が恐ろしいほどあるが、この工場は大変にクリーンである。HACCP対応工場を目指して構築作業をしている段階で、販売先に「HACCPを構築し始めました」と控えめに言っているが、それだけで良好な営業結果になっているということである。実際に販売先の担当者が視察に来ても、この工場ならば自身をもって見せることが出来る。

5.製氷室の壁から天井にかけて
窓のすき間はシールしてある。壁から天井にかけて、出来るだけ余分なものを置かない、作らないようにしてある。照明を切るとこの中は殺菌灯以外の光が無くなり、ほとんど真っ暗になる。作業員が入っている時間以外はライトは常に消してあるので、それだけでも防虫対策になっている。

6.殺菌灯
それでもなおかつ小形の殺菌灯を入れている。上に見える柱のようなものは、氷をつるし上げるクレーンのレールである。

7.防塵用カーテン
細い杖のように見えるのは、製氷缶の中に、氷が凍っていく過程で入れる空気の管である。これを製氷缶の中にいれて泡を出しながら凍らせる。この管を置いてあるのがこの部屋のどうしても壁際になってしまう。壁際にはクレーンのレールがあり、クレーンが動くときに万一でも鉄のくずなどの異物が入らないように、カーテンをかけてある。簡単な工夫だが、これでクレーンレールからの異物混入を避けられる。

8.氷の洗浄シャワー
左側で製氷をしたあと、クレーンで釣り上げて出来た角氷を右側の溝に入れるが、普通はそのまま製品として倉庫に移動するが、この工場の場合は一度シャワーで表面を洗ってから倉庫に移動をする。最後の最後まで氷の汚れなどを落とすわけである。

9.出来上がった角氷の倉庫
製品倉庫の壁、天井もすべてステンレス。角氷の製品はパッケージをするわけではなく、そのまま出荷するので、出荷までに危害が起きないように、ステンレスの箱の中の状態で保管をするのである。

10.角氷のパレット
パレットは木製で、以前はその上に直接角氷を載せていたが、この工場になってからは木製パレットの上にステンレスを敷き、プラスチックの枠を入れて氷が滑り落ちないようにしている。また、木くずなどが氷に付着しないようにしている。

11.袋氷の原料氷用コンベアー
小売り用の袋氷の原料は、24時間、半分まで凍らせた角氷を使う。なぜ全部凍らせたのを使わないかというと、全部凍ってしまったら、機械でクラッシュ、粉砕できないからである。外側の半分が凍って、中が半分まだ空洞になっているのを潰して作るのである。

ラインとしては、製氷庫で作られた氷は、48時間の角氷はそのまま角氷の倉庫ゾーンに行き、24時間の袋氷の原料は、このすべてステンレスとトンネル、コンベアーを通って、袋氷製造室に行くことになる。

12.袋氷原料の洗浄
袋氷は、さらに入念にまた洗われる。この洗浄工程は、上からシャワーを浴びせればいいというのではない。中の空洞になった部分も洗わなければならない。その空洞部分を2つのノズルから出る洗浄水で洗っている。この洗浄水も地下水である、つまり、原料も、氷を洗う洗浄水も、同じ地下水ということになる。

13.クラッシュ後のメッシュ選別
圧力を使ったクラッシュ機を通った後、この回転するメッシュのドラムで氷の大きさを合わせる。原料の洗浄からこのメッシュ選別、そして袋詰めまでのこの袋氷製造室は普段は全く無人である。機械による自動製造、パッケージ作業が行われている。

14.パッケージング機
1キロづつを自動計量し、プラスチックフィルムの袋に自動パッケージされる。最近環境ホルモンの問題が出てきているが、氷の場合は熱を加えることはなく、したがって熱でフィルムの問題化学物質が出ることはないのだが、パッケージフィルムのメーカーに対しては、フィルムの製造工程とパッケージ、そして物流まで、原料名から工程までをレポートとして出してもらっている。これは、袋氷製品の販売先に対して報告がいつでも出来るようにするためである。パッケージフィルムだけでなく、段ボール箱についても同じである。段ボール箱は管理が悪いと虫が居着いたりする問題にならないように、特に保管の問題に気を使っている。パッケージ材料は、この工場に入る手前までは、メーカー、物流業者の問題になるので、HACCPの中では「従業員で管理できない危害」に入れてある。

15.パッケージから箱詰めラインへ
無人の製造室で袋までパッケージされた袋氷は、右に見える小さな窓からコンベアーで箱詰め室に流される。この窓、通路は小さいほど問題が出ないことになる。温度や異物の問題が少なくなるからである。

16.金属探知器
パッケージされ、箱詰め室に出てきた袋氷は、すぐに金属探知器を通り、箱詰めされる。金属探知器のキャリブレーションは、朝の作業前、昼食後、午後の中間で行われる。この工程はCCPになっている。

17.袋氷保管庫
箱詰め室から、また小さな窓を通って冷凍保管庫に移動される。窓には温度管理のためにビニールのカーテンがたらしてある。袋氷は、製造した後食べるまでのすべての過程で少しでも溶けてしまうとくっついてしまい、商品とならないので、温度管理は重要なのである。この袋氷の製品庫と、大きな角氷の製品庫は、以前は一緒になっていたのだが、HACCPを始めてからすぐに、違う製品なので、仕切りを入れて別にした。2つの違う製品を、製品来ないでもゾーニングをして分けたのである。

18.製品庫からプラットホームへのゲート
2重になっていて、プラットホームの影響が極少になるようになっている。プラットホームの温度も下げていて、温度の影響が最小になるようにしている。

19.出荷口
ドッグシェルターの内側。積込作業は、特に早く行うことに神経を使っている。

20.原料水のチェック
この工場で使うすべての水、飲料水や、トイレに使う水もすべて氷と同じ地下水である。毎朝原料水の検査をするところからこの工場の作業は始まる。24時間後にこの結果がわかるので、問題のある原料水で出来た氷が市場に出ることはない仕組みになっている。

21.原料水の検査記録
1月の記録が1枚の用紙にまとまるようになっている。検査結果と、数値、検査担当者の印鑑が捺される。

22.点検記録
一日の点検は、朝の作業開始時、昼食後の作業開始時、そして作業終了時の3回ある。それぞれが1枚に記録用紙になっていて、各作業室と、その部屋のチェック場所が記入されている。チェック個所が、3枚の記録用紙のすべてにあるものと、朝だけとか、作業終了時だけなど、1個所にしかないところもある。この3枚のチェックシートをすべてうずめれば、安全な製品が出来る仕組みになっている。このチェックシートを作るときには、なるべく効率的、効果的で、確実で、さらに単純で間違いないようにし、同時に無駄な記録などで時間を使いすぎないように、作業効率が落ちないように工夫をした。

23.HACCP記録保管場所
すぐに全記録が出せるように、一ヶ所に集めてある。これ以外に記録のあるのは、この横にあるコンピュータデータである。
角氷は、魚市場などで使われたり、氷販売業者に行くばかりではなく、氷菓工場など、食品の原料としても流通されている。氷菓工場からはHACCP対応の要望が当然出てくる。袋氷は、直接末端消費者に行く。このようなことから、今後安全な氷を製造する工場は、さらに必要になっていく。老巧化した工場を建て直すには、この工場のようなHACCP対応か、HACCP的考え方を取り入れたものが必要になっていくだろう。大型の自動化された製氷工場だけがHACCPを導入できるのではなく、小さな地方の製氷工場でも、このようにHACCPを取り入れることが出来るのである。

※鶏卵肉情報センター「月刊HACCP」99/3月号より
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