魚の工場への搬入

2013/05/07 19:29 に 松本リサ が投稿
食品工場のHACCPが徐々に進んでいる中で、魚の水揚げから卸売りと加工のHACCPが日本全国の大きなテーマになってきている。
魚は漁業で捕るものと、養殖で育てるものがある。これを水揚げするのに、漁港併設の卸売市場に入る場合と、そのまま切り身や調理などの加工に持っていくのがある。どちらにしろ、ここでHACCPの実施上で重要なことは、船からどのように市場や加工工場に搬入するかである。

日本で今まで一般的に行われてきているのは、トロ箱に積んだり、網ごとクレーンでつるしてトラックの荷台に裸の状態のまま積み、市場なり工場に運び込むことだ。
しかし、この方法だと、外気に触れる。埃、虫、野鳥などの環境におおっぴらにさらしてしまうことである。トラックのに台に乗せたら、魚がトラックの荷台で汚染されてしまう。欧米と違って日本の場合刺し身などの生で食べるのであるから、ここで魚を汚染してしまう今までのやり方では、衛生管理上の問題がある。このことに関係者は気が付かなければならない。
このやり方は欧米で同じで、魚の水揚げの方法は、パイプを使って海水ごと魚を移動するのだ。フィッシュポンプと呼んでいる。

ここ数年の間に、ノルウエーのベルゲンのサーモンやサバの加工工場、ノルウエーのスタベンゲルのサーモン加工工場、デンマークのESSI のニシン加工工場、米国シアトルのエビ、カニ、複数の魚類の加工工場など、古い工場、最新式の近代的工場と、いろいろ行ったが、魚の水揚げは全て同じ方式だった。
シアトルの工場では、漁業で捕ってくる魚類は漁船で漁港に入る。加工工場は岸壁、船着き場に併設されていて、工場から直径50センチぐらいはあるだろうか、蛇腹型の太いパイプが出て来ていて、このパイプを漁船の魚が保管してある船倉に入れ、真空ポンプで吸い出して、そのまま外気に触れずに工場内に魚を入れる。工場内に入った魚は、大型のコンテナーに入れられて、そのまますぐに加工される場合と、一時保管される場合もある。作業者の手配と魚の捕獲量、及び価格相場状況も考慮されたうえで作業内容が決定されるようだ。

デンマークのニシン加工工場は最新型のかなりの大型工場で、ニシンの酢漬けを全ヨーロッパと一部をロシアに出荷している。ニシンは漁船が捕獲してくるが、天候によってニシンが捕れる人そうでない日がはっきりと別れる。風がある日は駄目で、風が無い日に捕れるという。この工場の代表者に冗談を言ったのだが、デンマークは世界的にも風力発電が盛んで、風のある日に電気がたっぷりと入る。そこで「あなたの工場は、風がなければニシンが来て儲かる、風があると風力発電で電気代が安くなる、どっちにしても儲かるね」と言ったら「そうだそうだ」と大笑いになった。
さて、この工場はかなり大型なので、工場は岸壁すれすれでなく、その間に道路と車の駐車場がある。その上5メートルほどのところを、大型のパイプが通っている。船が岸壁につくと、やはりパイプで吸い出して、道路と駐車場の上のパイプを通って、工場内に入る。工場内に入ったらタンクに入るのだが、ここに滞留することなく、コンベアーで次の工程に続々と流れていく。サイズ選別をし、十数台ある三枚おろしの機械でフィレにされ、90キロ入りの樽と、25キロ入りのプラスチックコンテナーに酢漬けの状態にされて入れられてシールされ、出荷倉庫に行く。たいした時間をとらずにこれが次々に出荷されていくのだ。
ノルウエーの北、北極海に面した長大な海岸線には、大変な数のサーモン養殖場がある。そんな北で海が凍って養殖など出来るのか? と良く聞かれるのだが、この海にははるか遠くメキシコ湾流という暖流が流れ込んできているために、冬でも海は凍らないのだ。この海を活かしたサーモン養殖が、ヨーロッパ各国のサーモン需要を支えている。日本にもかなりの量が輸出されている。
この養殖サーモンの水揚げだが、まず、養殖場から工場までは海水とともに活きた元気な状態のまま船で運ばれる。工場横の岸壁の前には、20メートル四方程度の生け簀がいくつも用意されていて、ここに入れられる。サーモンはとても元気が状態で、あちこちで海上に飛び跳ねている。

ここに着いたらすぐに工場の加工に回されるのではなく、24時間この生け簀に置かれる。これはサーモンを落ち着かせるためだ。養殖場所からここまで運ばれる間にサーモンは興奮しているので、それを鎮めないと肉の品質が悪くなるのである。牛や豚を屠畜する前に、トラックで揺られながら運んできてすぐに屠畜すると、牛ならば「ダークカッティング・ビーフ」と呼んでいるが、肉質が悪くなってしまう。そのために一日程度係留して落ち着かせてから屠畜する。これと同じことがサーモンでも必要なのだ。
24時間後、サーモンが落ち着いたら、生け簀の内周に仕掛けてある網を徐々に狭めて、工場に入れるためのパイプの方に寄せていき、工場の処理スピードに合わせて海水ごと真空パイプで吸い入れるのである。このパイプは直径80センチぐらいはあろうか、かなり太いので、サーモンを傷めることはない。
スタベンゲルの工場の場合、生け簀をから吸い取られたサーモンは、岸壁の下を通ってから数メートル先の工場のところまで行き、そこからパイプのまま地上に出て、加工の第一工程のキリング作業の場所に吐き出される。サーモンにとっては、泳いでいるところにいきなりトンネルの中に吸い込まれ、トンネルから出たらそこはキリングの場所だった、ということになる。
このHACCP公式の水揚げ方法は、衛生管理だけでなく、コストも大幅に削減される。
ただ、大型から小型まで、雑多に入った魚の水揚げをすると、小型の魚が瞑れてしまうなど、問題もあるかもしれない。
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