異物混入と回収

2013/04/07 21:38 に 松本リサ が投稿
2000年6月末からの食中毒事、異物混入と、回収対策が、8月末においても続々と続いている。
その中でも異物混入事故は食品メーカーにとって最も頭の痛い問題で、ゼロにすることは不可能で、例えば近代化された缶飲料メーカーでは「3億本に3本程度のカビの出現は避けられない」といった形で表現されている。
ゼロには出来ないが出来るだけ少なくするための活動は、いつまでも続く。
異物混入の原因と対応策を考えてみると、そのほとんどがHACCP本体ではなく、HACCPの土台となる一般的衛生管理(以下PP)に由来することがわかる。
牛乳工場でのバルブの洗浄問題では、「毎日の水洗い」と「毎週の分解洗浄」のうち、毎週の分解洗浄がされていなかったが、これは厚生省の「総合衛生管理製造過程」の中のPPの「1.施設設備の衛生管理」を怠った。
この部分の記録は、実際にはどのようになっていたかというと、「週1回」と明示された清掃記録用紙に、6月については、始めの週に一度行われた後、最終の週にも行われた記録がついているが、この間の2週分は丸印の記入が無い。
したがって、この間3週間の分解洗浄がされていなかったことになる。「毎週洗浄」と明記されている洗浄記録用紙なのに、洗浄されていないことを正直に(?)記録していたのはどういう神経か不明なのだが。また、同じ工場で、工場の外で原材料の移し替えを行っていたというのは「8.原材料の受け入れ、食品頭の衛生的取り扱い」を守らなかった、と同時に常識的な感覚からはほど遠いので「2.衛生教育」の「義務教育」レベルということになる。

トマトジュースにハエが混入していた事故は、加熱殺菌後、パッケージ室で蓋をする工程に行くまでの間にハエが入ったようだ。
コンベアーの蓋が外れていたということなので「3.機械器具の保持点検」が原因かもしれない。また、パッケージ室にハエがいたというのは記録にもあったということなので、PPの「4.防虫防鼠」対策がうまくいっていなかったことにもなる。発見した消費者の話では「蓋を開けたときに臭かった」というような表現をしていたのだが、温度が低下し始めたトマトジュースの中にハエが飛び込んだので、加熱されずに半生状態でしばらく閉じこめられ、腐敗したのではないかという予測もできる。また、ハエが外からパッケージ室に入り込むすき間などがあれば、PPの「3.施設設備の保持点検」に問題があったことにもなる。トカゲがポテトチップのパッケージに入っていたという事故はこのトマトジュースの原因とよくにている。施設を調べたら、たしかにトカゲが侵入できるすき間があったということなので「3.施設設備の保持点検」と「4.防虫防鼠」に関係をする。

「蓋のシールの不良」やパッケージの一部が破れていて中に蟻が入っていたなどの事故は、パッケージ機械の整備不良が原因の場合は「3.機械器具の保持点検」になる。しかし、物流途中での破壊が原因だとすれば、ロジスティクスのHACCPの問題か、パッケージの強度設計の問題になる。ロジスティクスかパッケージ設計かというのは複雑な問題で、まともな物流と保管を行っていれば壊れないパッケージ設計になっているかどうかがポイントになる。もし少し乱暴に扱ったり、落とすぐらいでパッケージが壊れるような場合はパッケージ設計の問題であり、この場合はパッケージを強化しなければならない。しかし、異常な状態で壊れたならば、まれな偶発事故として処理することになる。


異物混入と回収との関係なのだが、企業イメージのために、あるいはマスコミがうるさくなっているということで、回収の必要が本来無いものについても回収している例がある。例えば、製品にボルトが入っていた場合、そのボルトが工場の製造機械から落ちたものであることが直ぐにわかり、落ちたボルトが1本だった場合は回収の必要は無い。プラスチックの破片が混入していて、それが眼鏡のレンズのようだったとなったら、回収の必要がある。プラスチックレンズがそのままの状態でパッケージから出て来たのならば回収の必要は無いが、破片ということは、例えばグラインダーでレンズが破壊され、その破片が多くの製品に拡散され、これを口に入れて怪我をする可能性があるからだ。栄養補助食品に動線が混入してしまった事故では、かなりの長さの動線がばらばらに破壊されていたので、これは回収しなければならない。トカゲがポテトチップに入ってしまったのは、トカゲが集団でぞろぞろ工場に入ってきて、いくつものパッケージに別れて入ったなどということは考えられないから、回収の必要は無い、しかし、この場合企業イメージとして大きな問題があるので、あえて回収に踏み切った気持ちはわかる。回収のポイントは、その事故が、非常に偶発的、あるいはどうしても希に起こってしまうことで、しかも問題になったパッケージに限るのならば、回収の必要は無い。しかし、複数の製品にも同じ可能性があるのならば回収しなければならない。

回収か、回収でないかの判断は、微妙な場合も多いが、何でも回収という風潮には問題があるし、食品産業そのものが成り立たなくなってしまう。回収の必要が無いと判断した場合は、十分にデータを元にした説明をしたうえで、毅然とした対応をとる必要がある。実際、脅迫絡みの事件も増えているので、十分に対応策を持っている必要がある。こういったことのためにも、一般的衛生管理を十分に行っている必要がある、衛生管理をちゃんと行っていなければ、毅然たる態度はとれなくなってしまうからだ。
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