飲食店でも出来るHACCP

2013/05/07 19:18 に 松本リサ が投稿
HACCPとは、食品を扱ううえでの衛生管理です。

飲食店で、食中毒や異物混入クレームを出さないための方法は、常識的にはどこでもやっています。手を洗う、清掃洗浄をする、消毒をする、加熱調理をする、といったことです。これらは飲食店を営業する上の基本ですし、どこでもやっていることです。

しかしながら、O-157や、ノロウイルスといった、細菌の食中毒の大きな流行は、今までよりもより効果的な食中毒対策が必要な時代になって来ています。

人に危害は与えませんが、毛髪や虫などの異物混入は、昔は「仕方がない」とあきらめ許していた面が多かったのですが、最近はごく細かいこともクレームされます。テナントで入っている場合は、オーナーから厳しい処分になることもあり、下手をすれば経営にも差し障ってきます。異物混入の中でも、金属やプラスチックなど、ケガをするものもありますので、深刻です。

これらのことから、これからは今までの常識的に行ってきた衛生管理から、科学的に計画を立てた衛生管理にしていく必要が出て来ています。それがHACCPです。

HACCPとは、その土台となる一般的衛生管理と、HACCP本体から成り立っています。

一般的衛生管理とは、「5S」活動という方法で行っているところもありますが、整理、整頓、清掃、消毒、躾(しつけ)といった基本的なことですが、これに洗浄、習慣、という言葉を入れたりしているところもあります。

まず大掃除で危険が激減

厨房の中を隅々まで見ると、不要なものがずいぶんあるところが多いと思います。
もう使っていない古い器具、各種パンフレットや資料、大きなものでは机やイス、コンテナ、ほとんどごみの置き場になってしまっている棚。倉庫の中、冷凍庫に眠っている食材など。これらを思い切って捨てます。
どうしても捨てられない場合は、貸倉庫が低価格でありますから、一年間預けます。一年間その倉庫を開けなかったら、結局いらないことの証明ですから、すべて捨てることが出来ます。
こうすると、厨房とホールが見違えるように広くなり、広くなります。広くなったところで、隅のゴミが大量に出てきます。それを掃除します。要するに大掃除をします。すっきりときれいになります。
きれいになるとどうなるかというと、ゴミ、埃、そして食中毒菌の元になる脂肪などの汚れや虫の巣となる隅の湿気の多いところが無くなります。これだけで食中毒と異物混入の危険が激減します。

清掃洗浄の方法と頻度を決める

大掃除をすると、どこがどの程度汚れているかがわかります。そこで、どのような頻度で清掃したらいいのかがだいたいわかります。例えば、床は毎日ですが、壁はどうでしょうか? 壁も、腰位置から下は、毎日清掃洗浄したほうがいいですが、腰位置から天井までの間は、毎日出来ませんし、そこまで汚れません。そこで毎月にします。オーブンやフライヤーは、毎日の清掃洗浄することと、毎月することと分かれます。大型の機器なら年に一回は分解清掃が必要になるでしょう。天井や天井部分にあるパイプや照明器具などは、年に1〜2回といったところが多いと思います。調理道具は毎日、シンクや冷蔵庫あるいは棚の隅や裏側は毎月ぐらいでしょうか。
このようにして、清掃場所と頻度を、毎日、毎週、毎月、毎年、と、4つ程度のパターンで決めて、表にします。そしてチェックリストにして、実施します。チェックリストにするというのは、忘れない、忙しいからといってやらない、といったことを防ぎます。また大きな店舗では係を決めて間違いなく実施できるようにできます。

動線とゾーニングを考える

仕事の流れと厨房のレイアウトがあっているかを見てみます。
冷蔵庫や食材倉庫から材料を出し、下処理をして、調理をし、盛りつけをする、という流れのように厨房がなっているかどうかは、仕事がやりやすいかどうか、早くできるかと関係します。倉庫から下処理の場所が遠くて大変、それから調理の場所まで戻って、盛りつけはまた離れている、そこからホールに出すのに長いルート、などとなっていては、作業性が最悪です。おまけにそれだけあちこち動くのなら、異物混入の危険も多くなります。
完ぺきに流れの通り出来ないかもしれませんが、今の状態で、テーブルや調理機器を動かしたり入れ替えることによって、流れをスムーズにできれば、それだけで効率と衛生管理をよくすることが出来ます。これは、厨房がその状態にあるだけで安全になる、ということです。その上で、清掃洗浄の頻度を決めてやれば、なお安全になることになります。
ゾーニングとは、調理群別にまとまっているかどうかです。
オーブン調理、フライヤー調理、パンフライ調理、スチーム調理、炊飯調理、といった調理群別に厨房のレイアウトがまとまっていれば、作業効率が良くなり、安全です。

加熱メニューと非加熱メニューを分ける

ゾーニングで大事なことは、加熱メニューと非加熱メニューが分かれているかどうかです。
加熱メニューというのは、加熱殺菌が出来ることですから、規定の温度まで加熱することで、食中毒菌を殺菌することが出来ます。しかし、サラダ、サンドイッチ、非加熱のアペタイト、生のデザートなど、加熱できないものは、冷たい状態で調理したり保管していないと、食中毒菌が増殖してしまいます。
また、非加熱メニューを加熱殺菌調理の横で行うと、温度が高い場所ですから、これも食中毒菌がハイスピードで増殖してしまいます。ですから、加熱殺菌調理どうしは隣り合わせで構いませんが、生食メニューだけ離して、冷たい場所にしなければなりません。
保管場所も同じです。加熱調理葉の食肉にはサルモネラ菌の危険がありますが、その横にサラダ野菜用の、例えばトマトやレタスが置いてあったら、汚染される危険があります。ということは、冷蔵庫内の置き場所を分ける必要があります。加熱用の食材と、非加熱用の食材と、冷蔵庫が完全に別れていればいいのですが、一つの冷蔵庫しかない場合は、冷蔵庫の中で、左側は非加熱用、右側は加熱用と、分けておくようにします。また、一つの棚に置くような場合は、上に非加熱用、下に加熱用の食材を置きます。こうすれば、サルモネラの危険がある食肉のドリップが、下のサラダ野菜に落ちる、ということが無くなります。

温度をチェック記録する:75℃と10℃が重要な温度

この、加熱して殺菌をすることがHACCPです。
食中毒菌を殺菌できたかどうかを温度で確認することが飲食店でのHACCPになります。
食中毒菌を殺菌できる温度は75℃です。
豚肉、鶏肉は、中心まで75℃に加熱すれば安全です。ノロウイルスの場合、これより少し高い85℃にすれば万全です。牛肉は肉の中は大丈夫ですから、表面を加熱すれば大丈夫です。ただし、スジ切りをしたり、ひき肉は、中まで加熱する必要があります。牛肉の結着ステーキやハンバーグは、中まで加熱する必要があります。
温度を測るには、温度計が必要です。
中心部分まで測るには、中心温度計を使います。センサーの先端を、加熱した食品の中心まで挿し込んで測ります。これで75℃以上になっていればオーケーです。あまり加熱しすぎると堅くなってジューシーでなくなりおいしくなくなってしまいますから、例えば75〜85℃の間、というように決めておくと、安全でなおかつおいしい料理が出来ます。
調理する都度測っていたら、オーダーに応えきれなくて提供するのが遅くなってしまいますから、時々測って確認するようにすると、作業のスピードはそのままで安全に管理できます。具体的には、例えばフライヤーでの調理作業で、昼に最初のオーダーを料理したときに測ります。最初に測ったのが鶏の唐揚げだった場合、次に来たオーダーがまた同じだったら測らないで、別のフライメニュー、例えば豚カツが来たら測ります。そして例えば天ぷらが来たらまた別のメニューですから測ります。これを昼に最初の鶏の唐揚げ、夕方豚カツ、そして天ぷらが来たら測る、というようにすると、フライメニューで一日3回測ることが出来ます。これなら面倒無く安全にできると思います。
これを、オーブン、パンフライ、蒸し物など、調理群別に行います。
これを行うと、安全になるだけでなく、安定した加熱調理が出来るようになるので、いつもおいしい状態の料理を提供できることになります。温度で確認することで、新人も安定して調理が出来るようになり、営業にも良いでしょう。
サラダやサンドイッチなどの非加熱料理は、食中毒菌が増殖しないように低温で短時間で調理あるいは組立をして、すぐに出すか、作り置きをする場合にはラップをして冷蔵庫に保管しておきます。
非加熱用の食材は冷蔵庫に入っていますから、0〜4℃程度に保管してありますが、調理するために冷蔵庫から出すと高温にさらされます。ですから出来るだけ低温の場所で素早く調理しますが、調理後、10℃以下ならば安全です。この温度を確認するためには、中心温度計を使ってもいいのですが、中心温度計は肉や魚の中心温度を測るのに使っていますから、出来れば別の表面温度計を使ったほうが良いでしょう。
これはデジタル式で、ボタンを押してレーザー光線を食材の表面に当てると瞬時に温度が表示されます。これだと食品に触らないで測れますから衛生的です。この表面温度計は、食材の搬入の際に、短時間で温度確認も出来ますから、大変便利です。
中心温度計は数千円、表面温度計も一万円かそれ以下で購入できますから、店舗に一本ずつ置いておきたいものです。これで安全かつおいしく安定した料理が出来るのですから。

従事者はきれいにしてから厨房に入る

厨房に食中毒や異物混入の元を持ち込む大きなものは従事者です。
トイレで「大」の方に入り、手をよく洗わないと、大腸菌やノロウイルスを持っている人ならそのノロウイルスが手に付いてしまいます。ノロウイルスの場合、手を洗わないと、億単位のウイルスが付いているといいます。その中の百程度が人の体の中に入っただけで食中毒になってしまいます。
これは大変なことで、その人が厨房に入るドアのノブを触り、冷蔵庫の取っ手を触り、調理機器のスイッチを触り、そして食品や皿などに触ったら、食中毒の元になってしまいます。それだけでなく、取っ手やスイッチなどの同じ場所を、危害を持っていない人が触ったら、二次感染してしまいます。こうしてたった一人の人の危害が多くの従事者に移り、食中毒になってしまうのです。
実際に調べてみると、ドアのノブ、冷蔵庫の取っ手、機械のスイッチダイヤルなどが異常に汚れいていることがじつに多いのです。

手洗い訓練をする

手をよく洗う、ということは、じつに重要なことなのです。
しっかり手を洗う方法を訓練します。手をきちんと洗えたかどうかを、時々チェックしてみます。手の形になったスタンプ検査がありますのでこれを使ったらいいでしょう。具体的には、従事者が手を洗った後、スタンプ検査をします。結果が出て驚くことはじつに多く、かなり汚れている人が多数出ます。これでその人を攻めるのではなく、手洗いの方法が悪いわけですから、正しい方法を教えて、また検査をします。これで手洗いは大変なことなんだなと認識することになります。

帽子、マスクをしっかり

手洗いだけではありません、毛髪、鼻の穴の中も食中毒の元があります。髪の毛をよく洗っていないとフケが出ますが、このフケには黄色ブドウ球菌がいます。3割ぐらいの人の鼻の穴の中にも黄色ブドウ球菌がいます。手のあれや怪我にも黄色ブドウ球菌がいます。ニキビや肌荒れも同じです。
これを防ぐために、毎日シャンプーをするように従事者に要請します。厨房に入るには、帽子を必ず付けます。ホールに出ないで厨房内だけで仕事をする人は、出来れば帽子の下にネットをして、毛髪が落ちないようにしたほうがよいでしょう。そしてマスクをします。
マスクがうっとうしいからしなかったり、していてもあごマスクにしてしまい、肝心の鼻をカバーしていなければ何にもなりませんが、これはよく見かけます。どうして鼻までマスクをしなければならないかを教え、認識してもらいます。

虫や鼠が入らないようにする

人とは別に厨房に入ってくる危害は、虫や鼠です。
これを防ぐために、すき間があったらふさぎ、ドアの開け放しを禁止し、外からの出入りは素早くします。食材が入るときなど長い時間開けてしまっているのをよく見かけますが、危険です。
ゴミの置き場にハエがたくさんいるのもよく見かけますが、ゴミが回収されたあとは清掃消毒しておかなければなりません。きっちりとフタをした容器に入れ、出来るだけ回収の直前に出すようにします。狭い厨房でゴミの管理をするのは大変ですが、食中毒や異物混入にならないために重要なことなのです。

そして、
安全な食材の購入をすることです。
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