一般的衛生管理(PP.PRP.OPRP.GMP.GAP)の重要性

2013/05/19 21:58 に 松本リサ が投稿

1,微生物をコントロールするために重要な温度管理

微生物をコントロールするには二つの温度で行う、低温と高温である。
ある魚の塩干、開き製品の工場では、HACCPの構築を進めだしてから、漬け込みの味液、洗浄水の温度を、それまでの水道水を直接利用していた温度ではなく、チラー水設備を入れ、洗浄水の温度を5℃以下とするなど、正確な温度に設定したところ、一般生菌の数値が減ると同時に、品質が非常に安定した。製造用の水温の管理によって、安全かつ安定した品質の製品が出来るようになった。
一般的な食品工場や厨房で無菌ということはなく、どんなに徹底的に洗浄を行っても、微生物はある程度は残り、増殖すると食中毒につながっていく。低温による増殖防止は、一般的なガイドラインは10℃でも、効果を完全にするためには5℃以下にしたほうがよい。冷蔵保管を0〜5℃に管理する場合と10℃ではたった5℃の差であるにもかかわらず、ずいぶん安全性に違いが出てくることになる。

高温で微生物を殺すための温度と時間は以下のようになっている。
   75 1分以上で細菌完全に死滅(厚生労働省、都立衛生研究所) 
   74 牛乳の高温殺菌(15秒) 
   72 コンベアオーブン、スチーマーなど、機械調理での一般的調理肉中温度 
   70 細菌死滅のための安全温度(都立衛生研究所) 
   68.3 O-157、8秒で死滅(米国でのデータ) 
   65.5 O-157、32秒で死滅(米国でのデータ) 
   63.3 ハム、ソーセージなどの食肉加工製品、この温度で30分 
   62.7 O-157、2分07秒で死滅(米国でのデータ) 
   60.0 O-157、8分20秒で死滅(米国でのデータ) 
42℃が「病原性大腸菌の増殖、この温度まで非常に早い」という状態なので、この温度から60℃までの間というのは非常に微妙だ。
ある総材店舗ではホットデリケース(保温陳列販売ケース)で唐揚げ、ホットドッグ、ハンバーガーなどを暖めながら販売しているが、この温度が問題になった。バクテリアの繁殖が無く、殺菌できる状態が良いのはもちろんだが、高すぎると料理は硬くなり、ジューシーではなくなり、売り物にならなくなってしまう。適切な温度は60〜63℃といったところである。
実際に温度を測定したところ、63℃程度になっている場所と、45℃といった危険な温度帯に近づいてしまっている部分があった。ケースの中の温度ムラがかなりあるのである。そこで、中の通気と、置いてある商品の置き場所を、ホットケースの温度設定と一緒に見直したところ、全体に安定した温度にすることが出来た。安全で美味しい商品が売れるようになったのである。

2,オゾンによる環境衛生

オゾンは、放出と、オゾン水という、二つの使い方がある。
作業室の清掃と洗浄をした後にも、微生物はある程度残っており、これが翌朝の作業開始までに増殖し、空中浮遊菌も含めた危害の要因になる。これを、作業終了後、無人になってからにオゾンを使うことで、翌朝までにかなりの殺菌をすることが出来る。
オゾン水は、手洗いの場合は最後にオゾン水を使い、殺菌の仕上げにすることが出来る。シンクでは、湯水で洗浄剤を使って洗った後の仕上げにオゾン水を使うことが出来る。
ある魚加工工場では、生ゴミがかなり出るところから、上記の使い方に加えて、ゴミ置き場にもオゾンを入れ、臭いを押さえ込んでる。このゴミ置き場の温度は冷蔵庫と同じにしており、相乗効果がある。

3,衛生を考慮したエンジニアリング

新築した工場がうまく使えなくて困っているので見て欲しい、ということで診断に行った。三階建ての非常に頑丈な造りで、かなりの費用がかかったと思われる。しかし、中を見回ったところ、幅木がRになっているなど、見かけはHACCPのことを考えているように見えるのだが、大きな欠陥がいくつもあることがわかった。
包材の倉庫がほとんど無いうえに、動線を考えていないために、包装室にうまく持ち込めず、一方通行のドアを逆行するか、大きく外側を回っていかなければならない。空気の流れが、清潔ゾーンから準清潔ゾーン、そして一般ゾーンに流れていかず、逆行してしまっているところが多い。従事者の出入り口の位置が悪いために、交叉汚染の危険がある。製品倉庫の位置が悪いために、出庫に手間がかかるうえに、やはり交叉してしまう。これらの欠陥を指摘したら「だから使いにくくて仕方がなかったんだ」と理解してくれたのだが、大金をかけてほとんどを改修しなければ直すことは出来ない。
食品工場のエンジニアリングは、製造する食品の製造工程と特性を元にしてコンセプトを作成し、この後に図面に落とし込むことが必要だ。製造工程を書き、それぞれの工程の衛生度を決め、どのような区分けにするかを決め、各作業室に入れる機器と人員が決まってから初めて図面に落とし込み、シュミレーションをし、現場での作業効率と衛生管理を十分に計画に入れて進めていかなければならない。こういった考え方で進められるエンジニアリング会社を選定する必要がある。要するにHACCPをよく知っているエンジニアリングでなければ、ばく大な費用が無駄になる可能性があるのだ。

4,微生物検査による検証

検証は基本的に三つある、運営の検証で、この中に製造室の清浄度の検証があり、例えば毎日微生物や落下塵の検査をする。次は物の検証で、製品の安全性を、例えば製品ロットごとに確認する。三つ目は計画の検証で、構築して運営中のHACCPが正しいか、例えば年に一度検証する。このうち最初の二つは、微生物検査を行うことで、科学的に検証が出来る。
まず、製造室の清掃と洗浄を「しっかり」行うということは、内容、頻度、担当、確認、記録、の、5項目を決めることである。担当は作業を行う人で、確認は、担当者以外の人がきちんと行われているかどうかを、目視か測定装置で確認し記録する。この確認で、微生物は目に見えないので測定を併用するとよい。微生物が基準値以下かどうかを定期的に確認をすることが、正しく清掃洗浄が行われているかの確認になる。
製品の安全性を検証するためには、ロット毎、あるいは連続して製造しているならば例えば2時間ごとにサンプルを取りだし、微生物検査をする。この検査は工場内で行うと同時に、例えば毎月1サンプルでも外部に出して同じ検査をし、工場内での検査が正しいか検証をすることも必要である。
また、原材料の微生物検査をして、安全性を確認してから製造に回すといった方法は、以前から牛乳で行われてきているが、迅速に結果がわかる微生物検査技術も発達してきているので、今後は多くの食品でも行うことが出来るため、大いに期待される。


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