たった1枚の仕切り板で異物混入撲滅

2013/04/04 19:52 に 松本リサ が投稿
アラスカのアンカレッジは石油関係のお金持ちが多いので、おいしい店も多い。
アンカレッジに行くのに昔はアジアとヨーロッパを結ぶ拠点だったので多くの便がトランジットしていたが、直行になってからは見向きもされなくなり、今はさびれた飛行場になってしまった。現在行く手段はソウル経由があるが、夏の間だけ日本からいくつものツアーを束ねた直行のチャーター便が飛んでいる。
ある夏、35年ぶりにこのチャーター便でアンカレッジに着いた。
アンカレッジは食品衛生関係者、とりわけフライトケータリングにとっては食中毒事故の教訓の街でもある。
日本を発ったJALジャンボジェットがアンカレッジでサンドイッチを積み込み、これを食べた乗員乗客の半分以上が北極上空辺りで急性食中毒になってしまった。トイレは大変なことになったのだろう。
原因は製造工場の従業員がペットのインコに手を噛まれてケガをしていて、黄色ブドウ球菌がサンドイッチに挟むハム1枚1枚を汚染したのだ。このケガを知りながら何の注意もしなかったそのリーダーの知識欠如も含めて、個人衛生と教育について学ぶ良い教材になっている。何しろこの事実を元に作家の深田祐介が短編小説を書いてしまったのだから。(男たちの前線 (新潮文庫) [文庫]内の「アラスカの喇叭」古本だけ、教材として持っておくべき)

さて、アラスカ湾からクサビのように深く入り込んだ入江を見渡せるアラスカ美味しいもの大好きクラブ員集合のようなレストランでローストビーフを頼んだら、分厚い肉の横に皮をわざわざ入れたマッシュポテトがアスパラと共にたっぷりと添えてある。

ポテトの皮入りマッシュポテト、美味しいもの好きな人はこれがよくわかる。

夜10時過ぎまで青空の白夜の中、ポテトの皮を齧りながら、日本でこんなポテトサラダがスーパーやコンビニで売られていたら「皮が入っている」どころか「ゴミが入っている」とクレーム続出になるだろう。

昔はこんなクレームは無かった。ポテトサラダには時々皮が入っていたし、これも美味しさの一つだった。しかし今では、特に大都市で素朴な味を知らない人々が多い中、異物混入クレームになってしまう。
ある惣菜工場では手作りでポテトサラダを作っていた。いつの頃からかポテトの皮の混入に対してクレームが来出し、次第に増え、対策を立てないとあちこちの取引先から納入停止になりかねなかった。

ここではブランチングしたポテトを4人の作業者が大きな作業台でポテトの皮をむき、カットし、次の工程に送っていた。一人一人が皮むきとカットを一緒にやっていて、作業者の横にはむいたポテトの皮が次第に溜まっていく。作業台は次第に混み出し、皮が混入してミキシング工程に行ってしまうのだ。

そこで、作業を二つに分けることにした。2人が皮むきだけ、それを受けてあとの2人がカットだけ。この改善で混入は無くなったかのように見えたが、少なくなっただけで、まだ時々クレームが来る。

同じ作業台でやらないで、別々の作業台でやれば良いかもしれないが、作業室が狭いし、半分の大きさの作業台を新たに2台も買いたくない。移送の手間もかかりコストアップになってしまう。
そこで、中央の下の部分に半円の切り込みを入れた高さ20センチほどの仕切り板を持って来て、真ん中に置いた。


最初に皮をむく2人は皮をむいたら、半分ひっくり返しながら、つまり全部むけているかどうかを確認しながら、中央の穴をくぐらせてカット作業を行う2人の方に送り込む。
受けたカットの2人は、半分ひっくり返しながら、もう一度皮が付いていないかをダブルチェックしてからカットし、コンテナに入れる。
皮むきの2人の側にしか皮は溜まらない。皮が残っていないかを皮むき側とカット側の両方が確認するためにかかる時間は無いと同じ。この認識が重要だ。カット側にはもう皮は無いので、皮の混入は無くなる。
この改善で皮の混入は皆無になった。
かかった費用は仕切り板1枚だけ。
仕事を2つに分けたのは工程管理とゾーニング。
確認作業は教育と認識。

たった1枚の仕切り板で異物混入を撲滅した。
知恵を使えば低費用で画期的な改善が出来る。
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