施設の改修の進め方

2013/05/02 19:01 に 加藤光夫 が投稿
HACCPは「方法」であり「モノ」ではない、しかしながら、HACCPの運用を円滑に行うには、やりやすい施設の方が良いに決まっている。風穴だらけの建物でいくら防虫防鼠をしようと七転八倒してもうまくいかない。HACCPを行なうためには、基本的に施設設備はそれまでのままで良い、それまでの状態で「工夫とアイデア」で進めることが出来る。でも、調子が悪い調理機器をだましだまし使っていると、いつ加熱不足などの事故が起こるか不安だ、などと「危害になる可能性が大」の場合は修理なり新しくするなりが必要になってくる。では、どういった考え方で「改修」を進めたら良いのか。

1.まず、動線とゾーニングの検討

拡張してきた食品工場は、気が付いてみると動線とゾーニングがスパゲッティのように絡まり、混乱していることはよくある。改修を考える場合、壁床天井といったパーツの検討を始める前に、まず、現在の動線とゾーニングの実態を把握し、この絡まった状態をできる限り正常に戻す方法を綿密に検討をすることである。

進め方は、まず現状の図面を作る、拡張を重ねていっているとこの図面そのものが無いことが多く、結構これに時間がかかるが、新しく工場の図面を書くつもりで作成をする。この「原図」が出来たら、ゾーニングと動線を記入していく。

ゾーニングはHACCPで言う「一般、順清潔、清潔」といったゾーンで表現できる施設は古い場合は出来ないことが多い。この場合は、製造製品別に動線を記入していく。

ある工場では、もともと鶏肉の処理加工施設だったものが、焼鳥用の串刺しを作り始め、そのうちに加熱調理した焼鳥が始まり、さらに今度は総菜のいろいろな製品が加わってきてしまった、という状況だった。当然動線とゾーニングなどはほとんど無視されてきているので、「と鳥処理」「生の焼鳥串刺しを含む、下処理」「揚物調理」「煮物調理」「焼き物調理」「それぞれのパッケージ」「出庫」というゾーンで整理をしてみた。

これが出来たら今度は「動線」を別の図面に書きだしてみる。原図の上に透明フィルムのシートを載せて、その1枚にゾーニング、さらに別の1枚に動線をそして「従事者の動き」を、色分けで記入をしていくといい。透明シートを原図の上に重ねると一目で状態が把握できる。

さて、工場内の惨憺たる状態を把握したら、今度は整理整頓だ、HACCPの基本と同じ手順である。前述の例で言えば、まず「何をしているのか」という視点から整理整頓してみると、「と鳥処理ゾーン」「調理ゾーン」「パッケージゾーン」になり、調理に「揚げる」「焼く」「煮る」ラインが入ることになる。そして調理製品のための「下処理ゾーン」があり、この中に「鶏肉の下処理ライン」と「野菜など副材料の下処理ライン」がある。そして「調理ゾーン」と「パッケージゾーン」の間に、調理した直後の製品を冷却する「放冷」ゾーンが必要で、この「放冷ゾーン」と「パッケージゾーン」が最も清潔度が必要なゾーンであることがすぐにわかる。

さて、ここまで出来て来たら、後は「ジグゾーパズル」で、ここからが費用とのかねあいになる。現在の施設をある程度改修するだけで「整理整頓」が出来るならば安くすむ、しかし、全くどうしようもなければ清掃の方法や作業場所や従事者の動きや決まり「方法」「ルール」で対応を考えるか、大改修か新築を検討する方向になるだろう。「ある程度の改修」か「ほとんど何もしないでルールで対応」か「大改修か新築」の3つになる。

ここで行き詰まることが多い、どうにもアイデアが出なくなり、出来ないのではないか?となったら、良い方法がある、逆に考えることである。例えばすべての入り口と出口を反対にしてみる、右回りで今まで来ていたのを左回りにしたらどうなるか、一ヶ所の受け入れが常識なのだが両端の2ヶ所から入れて中央から出したらどうなるのか、など、頭はいくら使ってもタダなので、十分に検討したら良い。重要なことは、動線とゾーニングさえしっかりと出来れば、各作業室の中は多少問題があってもケガぐらい済むということだ。逆に言えば動線とゾーニングがどうしようもないということは重症患者で、重症患者の指のケガを手当てしても無駄だということになる。

費用の点は「生産効率」とのかねあいが重要である。今までの生産効率が非常に悪く、人員も無駄にかかっていた、しかし大改装か新築をしたら相当効率が良くなり、現在の人員プラスほんの少しだけで1.5〜2倍の製造が出来そうだ、となれば進める価値がある。

前述からの例ならば、調理製品は最近急速に売れるようになり、今後も成長が大きく見込まれ、しかも精肉だけ販売していたらますます利益率が減るのに、調理製品は利益も大きい。といった状況の中で、アメーバーのように調理製品の拡張を続けてきたのだが、肉と野菜など副材料の下処理はと鳥処理ラインの横で行い、調理作業は工場のあちこちでばらばらに行なうようになってしまい、さらに「放冷」場所も無いので、この段階でのバクテリア汚染が深刻で、その上パッケージラインは清潔ゾーンとはほど遠い。これだと販売先の衛生基準にとてもではないが届かない。

といった状況の中で、もし改修を行なえば、と鳥ゾーンと調理製品のゾーンを大きく2分することで、衛生管理が大幅に良くなり、すべての下処理ゾーンを統一することで、大幅な作業効率アップが見込まれ、放冷室を設置することで調理後のバクテリア汚染の危険が回避され、パッケージゾーンを共通にすることで作業効率と安全性が飛躍的に高まる。といったことになるのなら、改修を進めるべきだとなる。

そしてこの改修の計画を現在の得意先に話をすれば、マーケットが急成長している調理製品、総菜への拡張により、お互いの良い方向が見えることになる「Win Win」だ。こういったことは今まで、魚介類加工、ジュース、ドレッシング、フルーツ加工製品、製氷、日配品、総菜加工、食肉加工品、その他、著者が関係したり多くの事例が物語っている。「特定のメーカーにオーダーが集中する時代」である。もちろん簡単な「改修」でHACCPの実行がやりやすくなる場合もかなりあるので、改修の検討をじっくりと行なうことである。

塗り床は古くなってくると剥げてくる。剥げるとそこに汚れが溜まる。そこで塗り直し修理をすることになる。しかし、塗っても塗っても剥げてくるのでいつまでたっても終わらないので困っているところが多い。そこでどうするか。これは、修理を例えば半年ごとに定期的に行って「維持」する方法がある。しかし、この逆で、半分以上剥がれてしまって、これでは最初からやったほうがまし、などというところも多い。この場合、まだ残っている部分を全部剥がして、コンクリートむき出しにしてしまう方法もある。全部剥がしてしまえばもう剥げるものが無くなるので、この方がかえって清掃がしやすくなる。剥がすにも費用がいるから、それならばこの機会に最新の床工法を検討してみようというのも1つの方法になる。定期的な修理をするか、全部剥がしてしまうか、この機会に最新にするか、程度と費用のバランスで検討したら良い。最近は塗り床でなく、密度の濃い強化コンクリートを使いだしている、色もつけられるので検討してみたら良い。

壁で大切なことは「床から1メートルまでは毎日清掃」である、もちろん水を流して。建物が老朽化していて改修をする場合、毎日の清掃がやりやすく出来るようにするといい。防水でなければならない。もし電源スイッチなど水を嫌うものがある場合、それを1メートル以上の位置に付け替えると清掃が実に楽になる。さらに材質を汚れが付きにくく落ちやすい素材にすればなお良い。そして、床と壁の境目〈幅木〉に「R」を付けて、隅に汚れがたまらないようにすることである。「R」については工事で塗る方法と、最近はアルミサッシで既製のものがありこれを接着する方法がある。

これよりも上は、その工場の特性によって違ってくる。

天井

天井には何も無い方が埃だまりが無くなり、清掃も楽なので良いのだが、製造する製品によってはなかなかそうも行かない。パイプラインや電源ケーブルなどユーティリティー供給も含めて天井部分がどうしても複雑になる場合、天井部分を2重にしてしまう方法もある。費用的には大分かかるが、これが出来るのならば製造室のサニテーションが楽になる。天井と屋根の間に入れた部分は、時々のメンテナンスや衛生管理をしないと、虫や鼠の発生源になる場合があるので注意を要する。天井内部にメンテナンス用の通路(キャットウオーク)をもうければいいのだが、これもかなり費用がかかる。

古く老朽化している中規模以下の施設で、天井部分が複雑になり、埃で困っているところが多い。半年に一度の清掃を行なうことで対応はできるが、ある工場では人の肩位置よりも上から天井部分全てを年に一度白いペンキを塗っているところがある。ペンキを塗るためにはきれいに清掃しなければならないので、これは一石二鳥だ。ペンキはつるっとしているので埃が付きにくいのでこれも良い、白にすると作業室が明るくなるのでこれも良い。パイプ、配線なども全て塗ってしまうのですっきりと仕上がる。古い工場ではためしてみたらどうだろうか。

侵入する虫対策

この対策としては、ドッグシェルターやエアシャッターの設置が一般的なのだが、費用がかかるので困っているところが多い。この対応として最近ブラシを使った侵入虫対策が出て来ている。ブラシ式のほうきを想像してもらって、このブラシを長くして、それをシャッターやドア下のすき間に貼り付けた形にすると、すき間をブラシが塞ぐことになる。シャッターなど曲がっている板でもブラシなので曲がりに合わせてしっかりと当たる。シャッターの開け閉めにも問題がない。これによって虫の侵入を防ぐ方法である。設置をするのには、長さに合わせたブラシを注文して、これをボルトや接着剤で貼り付ければいいので簡単だ。ある大手食品メーカーの工場では、工場内14ヶ所のシャッターに取り付けたところ、一週間当たり、384匹だったのが3匹に減少したということである。

異物混入対策として、露出ラインの上に注意する

製造ラインを最初から工程順に見ていき、食品が直接露出している部分を重点的にチェックしてみる。目的は、その部分、作業場所の上に異物混入の原因になりそうなものが無いかを調査することだ。上にパイプやケーブル、天井の梁、古い空調の吹き出し口、捕虫器などがあると、そこから異物が落下して食品に落ちることになる。簡単な対策は安全なところに移動すればいいのだが、狭い作業場では不可能なことが多い。こういった場合はそのラインの上をカバーするようにしたら良い。例えばコンベアーラインの上が問題ならば、そのコンベアーの危険ヶ所にアクリル板などでカバーを作ることだ。

ラインの上の部分が結露をして、その滴が食品に落ちるような場合、アクリル板で屋根を吊るすといい。相撲の国技館の土俵の上は吊り屋根になっているがあれと同じ方式にするわけだ。こうすると上からの水滴を防ぐことが出来る。アクリル板だと透明なので、汚れたらすぐにわかるし、週か月に一度程度水をかけて清掃することも出来る。

捕虫器が設置された下に、食品を入れるサンテナーなどが置いてあったり、ひどい場合は未包装の食品が置いてあるのを見たこともある。これだと食品の上に虫を集めていることなので、危ない。


株式会社 フーズデザイン 加藤光夫
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