食肉における温度管理 鶏卵肉情報センター「養豚情報」2000/3より

2013/05/09 19:01 に 松本リサ が投稿
食肉を扱う上で温度管理は、食肉の鮮度を保つために重要なものである。ハイグレードの食肉では高品質だからこそ温度管理が重要になり、これが価値を保持することになる。温度管理について解説をする。

食肉に関する温度

食肉に関する温度は3つある。
  1. 環境温度
  2. 肉中温度
  3. 肉表温度
の3つである。

環境温度は、肉を保管してある冷蔵庫の温度、あるいは肉をカッティングしている作業場の温度、つまり肉の周りの温度である。肉が凍り初める温度、つまり肉の氷温は−1.7〜1.8℃である。肉を冷蔵しておくにはこの温度から0℃の間に冷蔵しておくのが一番いい。肉の氷温よりも低くなってしまうと、肉の水分が凍り初めてしまうので、肉の品質にも影響が出てくる。

冷蔵庫以外の環境温度は、作業場の温度や物流中の車の中の温度がある。作業場の環境温度については、店のバックルームでは、17〜18℃程度がいい。出来るならば、もっと低いほうがいいに決まっているが、余り低いと作業者の労働環境に影響してきてしまい、「寒いからあの職場には行きたくない」ということにもなりかねないので、適度に決める。また、早く作業をするようにしないといけない。

店はこの程度でいいが、集中して作業をするセンターではこうは行かない。米国のセンターでは4℃ぐらいだが、日本でも10℃以下には出来ればしたい。ハイグレードポークも出来るだけ低温で作業をしたい。ハイグレードポークをと冷パックまでしているアウトパックセンターがあったら、この豚肉は高品質なので、特に温度管理を徹底している、と説明したらいい、これがまた営業にもなるのである。

物流中の車の中も、冷蔵庫と同じ温度が理想だが、冷凍車で冷え過ぎたり、温度が甘くて、店に着いたら肉の温度が上がっていたりすることになるので、時々チェックしたほうがいい。

肉表と肉中温度だが、肉を屠殺した後、ずっと0℃の状態においておけば、肉表と肉中野温度は両方とも0℃になっているはずである。しかし、途中で温度の変化があった場合には、一次的にしても、肉表と肉中野温度は変わってしまうことになる。例えば、一度仕入れた肉を、冷蔵庫から出し、バックルームの中に長時間置きっぱなしにしておいた場合、肉の表面の温度は高くなってしまう。

しかし、肉中は、大きなブロックならば、そんなにバックルームの環境温度に影響されなくて済む。

その肉を、少しカッティングして、残りのブロックを冷蔵庫に戻し、時間を置くと、肉表温度は元の0℃に戻ってくる。ところが、一度肉中と肉表の温度差が出た場合、ブロック肉の中にスミが入ってしまったりする。ブロック肉をカットしたとき、表面の1センチぐらい下が変色していることがあるが、この原因は温度変化したあとまた元に戻った肉が原因のことが多い。目で見てわかるようならまだいいが、その場で目で見てわからない場合にも、商品化した後にその商品の痛み、変色は早い。

この逆の場合もある。3℃以上の高い温度の中に長時間置いてしまった肉を、トラックで長時間運んでいる間に、肉表温度が下がった場合、店について温度を測定すると、肉表は0℃になったいても、肉中はまだ温度の上がったままである。この温度差でも、同じようにスミが入ったり、カッティングした商品に痛み、変色は早い。

食肉の変敗

肉の変敗を説明するために、鮮度劣化での色の変化が著しい牛肉で説明をするが、牛肉の変色というのは、複雑な化学変化をたどる。このすべての過程を科学的に解明したらノーベル賞ものだとも言われているが、概要は次のような過程をたどる。

屠殺直後から、肉が商品になるまでの間は、肉は赤紫色である。原料肉をカッティングすると、カットしたときは赤紫色だが、切り身にしてしばらくすると明るい明赤色になる。これは肉のミオグロビンが酸素に触れてオキシミオグロビンになり、色が出るのである。ミンチでも、チョッパーから出たミンチが、しばらくすると発色するのはこのためである。輸入牛肉をスライスした後、より発色させるためには、トレーに入れてからすぐにパックしないで、5分位でも冷蔵庫の中にいれておくといい。

この商品になった肉が時間が経ち、鮮度が落ちていくと、酸化をし、メトミオグロビンになって褐色になっていく。時間が経つと、肉の表面が乾き、肉が酸素と結び着かなくなってしまうのである。その肉がさらに時間が経って酸化が進むと、肉は腐ってしまう。一般にグリーンミートと呼ばれる肉になってしまい、食べられない。これは牛肉の場合だが、豚肉でも肉のもともとの色がピンクなだけで同じような形になる。

肉を販売するために一番いい色にしておくためには、まず鮮度のいい肉を使うことと、カットした肉をバクテリアが付かないように少し酸素に触れさせて発色させ、その後乾かないようにパックすることである。空気に触れさせるのに余り長い時間置いておくと、肉が乾いてかえってよくないことにもなるので、短時間、ほんの少し触れさせるだけでいい。

常には勧めないが、臨時に冷塩水処理をする場合。ハイグレードポークの場合内蔵に使うといい。

冷塩水処理の目的は3つある。
  1. 肉の表面に着いたバクテリアを洗い流す。
  2. 多少の発色をさせる。
  3. 肉を急速に冷やす。
冷塩水を作るには、一番原始的には、バケツやシンクに水をはり、これに塩と氷を入れる。塩水濃度は0.8〜1%程度にする。「生理食塩水」と言って、肉には塩分があり、その肉の塩度に合わせたところに肉を入れると、肉の中に入っている肉のおいしさである「エン」というものが冷塩水の方に出ないでいい。

塩度を計る方法としては、塩時計を使えばいい。今では安いものが出ているので、冷塩水処理をするところに1本用意したらいい。いつも塩時計で計ってていると作業が遅くなるので、シンクならばその中に塩何グラムを入れるかは決まるので、その重量をメモしておけばいい。毎日大量に冷塩水処理をするのであれば、冷塩水処理機を入れたほうがいい。

肉を冷塩水にいれると、冷塩水は0℃ではなく−1℃といった温度に冷えているので、肉は急速に冷える。しかも空気ではなく、肉に直接触れる水であるから、その急速冷蔵の効果は大きい。何かの問題で一度温度の上がってしまった肉を急速に冷やすのにも効果がある。

冷塩水は、肉の表面に付着したバクテリアを洗い流す。消毒ではないので殺菌は出来ないが、除去することが出来る。ここで注意する点だが、冷塩水を汚れたままずっと使っていると、除去したはずのハクテリアは、冷塩水の中にいるわけであるから、ある一定の汚れになったら、取り替えなくてはならない。冷塩水は、多少の発色効果もあるので、冷却することと、バクテリアを除去することとあいまって、効果を出す。

冷塩水処理をしたほうがいい肉は、内蔵肉や輸入チキンの解凍、ひき材、トリミングをした後、トリミングミートはいくら注意しても温度が上がってしまい、バクテリアも付着してしまうので、このようなときには冷塩水処理をしたらいい。ハイグレードポークの場合、内臓肉をと畜後すぐに冷塩水処理をすると鮮度が長持ちする。同じ時間で顧客が食べた場合、冷塩水処理をしたほうが原理的にはおいしい、肉は鮮度と熟成だが、内臓肉の場合は鮮度が命だからだ。


豚肉ではと畜後すぐには死後硬直で食べてもおいしくないが、4日目ぐらいから食べごろになる。その後どれだけおいしさを保つことが出来るかは、と畜後如何に早く冷却をして、それを継続出来るかが品質を決めることになる。ハイグレードポークの場合は特に温度管理を徹底して、付加価値を高めるのがいい。これを宣伝することもいいだろう。と築後の洗いを徹底し、素早く冷やすと豚肉でも熟成が出来る。3週間熟成をした豚肉で高品質の加工肉をつくっている小さなメーカーもある。牛肉での熟成はわかるが豚肉では信じられないという人がいたら、それを行っているところを紹介するので、見に行ったらいい、多分見せてくれると思うので。

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