食品工場衛生管理のモチベーションのために

2013/04/25 18:54 に 松本リサ が投稿
モチベーション(従業員の働く意欲、やる気)をどうしたらよいか? という質問が、立て続けに3回あった。

HACCPを構築し始めたが、従業員のやる気が全く出ない。出ないどころか、余計な仕事を増やさないでくれ、といわれているようだ。なぜそんなことをやるのか? という意識がありありとわかる。作業以外になぜ資料を読まされたり勉強させられるのかわからない。と、色々な形で「意欲が湧かない」で、HACCPの導入が進まない企業が多いことがわかる。

HACCPと一般的衛生管理の導入によってどのようになって行くかは、以下の5つのステップになる。
1. クレームを無くす → 異物混入などの「不快」な製品を出さない
2. 製品を安全にする → 食中毒や異物混入によるけが(金属、石、プラスチックなど)を無くす
以上の二つは、本来の目的だ。ところが、これらを成功させると、企業にとって実に魅力的な結果が付いてくる。
3. 製品を安定させる → 品質を安定させる → いつも美味しい製品にする
4. 製品が売れるように → 競争力を高める(取引基準になっていく)
5. 企業力を高める → 効率化、収益性を高める 

加熱料理で、総菜のフライや焼き物製品などでは、一般的に、加熱後中心温度が「75から85℃」というのがCCPの許容限界(CL、クリティカルリミット)になる。
この場合、75℃以下は、食中毒菌の生残という危害があるので「安全限界」ということになる。これに対して上限の85℃以下というのは、これ以上温度が高くなってしまったら、ジューシーでなくなって美味しくなくなる。重量が軽くなる。といった品質上の問題が出るからだ。そんな製品を出荷したら、安全性は問題無くても、美味しくない。美味しくなければ売れない。製品が売れなくなって行けば企業の危機になっていってしまう。
ということで、75℃以上は「安全限界」、85℃以下は「品質限界」になる。

さて、HACCPを始める前、この問題はどうしていたか。経験豊かな人が調理すればうまくいくが、その人以外がやったら不安定になる、という実態のところも多いだろう。科学的に管理されていなければ、製品が不安定になる危険が大きいことが当たり前だ。経験は素晴らしいものだが、工業的になると、フードサイエンスで管理しなければならない。HACCPを始めるに当たって、温度計を初めて使い出したところも多い。
温度計を使い出したら、如何に不安定だったかがわかり、安定した温度に仕上げるために、加熱温度、時間のデータを精密にとり、例えば「80℃、プラスマイナス3℃以内」に連続して製造できるようになったとき、「安全」なおかつ「高品質」が確保されることになる。
そして気が付くことは、
「不良品が減り、ロスが減り、ミスが減り、失敗が減り、工場の稼働率が高くなる」
そして、利益が出て、販売力が増す、ことにつながる。

これを従業員に理解させることが出来れば、やる気は上がるのではないか?


パート、アルバイトに対して、もっと単純なモチベーションも出来る。
食肉と魚のアウトパック製品を造っている工場では「クレーム半減」目標を掲げている。
肉と魚をカット、スライスして、トレイパックしたり、真空パックをして顧客に大量のパックを出荷しているこの工場では、手作業で行なうために、異物混入クレームが多い。変色やドリップなどのクレームも含めると、ある年に80件ものクレームがあった。
そこで、昨年のクレーム件数を半減させることを目標にした活動を徹底的に行うことにした。年が明けて、目標はクレームを40件以下にすることである。
目標を達成するためにまず行なった方法は、そのクレームの原因を徹底的に調査し、原因を探り、二度とその問題が出ない対策をとることである。
クレーム原因の調査というのは言い方を変えると「危害分析」だ。
HACCPを始めて、危害分析の所に差し掛かると、本、資料、ガイドラインから危害を抜き出しているところもあるのだが、実際に重要なのは、その工場から出てしまったクレームなのだ。そのクレームの原因は何で、それは「工場のどこの場所に原因があるのか?」が最も重要である。
クレームが出やすい場所を見つければ、そこの対策に集中できる。
よく言うのだが「クレームの8割は、工場の2割の場所から発生している」
ということは、問題のある2割の場所を見つけ、そこの対策を徹底して、そこからのクレーム発生をゼロにすることが出来れば、クレームの8割が無くなることになる。
クレーム半減作戦は成功し、翌年は更に半減を目標に活発な活動が続いている。
 

ある総菜工場では、食中毒防止と異物混入対策のモチベーションを高めるために、ここでも数値による目標を目指すことにした。
食中毒防止のためには、ATP測定器による測定を、手洗い後の検査も含めて20の項目、検査ポイントで。
異物混入対策のために、工場内で定時に行われる粘着ローラーの毛髪発見、床面に落下している異物や毛髪の発見数値データを、定期的な粘着ローラー検査でとり、何ヶ月でそれを半減できるか、という目標を設定した。
期限を決めず、なるべく早く半減しようという考え方だ。
結果、ATPの方は、数値が悪い場所、つまり汚染が多い場所がすぐにわかるので、3ヶ月で達成した。異物混入の方はやはり多少時間がかかったが、半年ほどで成功した。ここもまた更なる半減目標に挑戦中である。
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