拭き取り検査の始め方、進め方

2013/04/25 1:26 に 松本リサ が投稿
ATP検査を購入したが、どう使ったらいいのかわからなくて、使っていない、という質問を時々受ける。予算が無くて買えない所もあるのに、もったいない。
ATP検査だけでなく、シート式、スタンプ式の汚染検査システムは、製造環境の安全性検証に、目で見てではなく、科学的に確認できる。
ここではATP検査での方法の事例を紹介するが、他のシステムでも同じ考え方でいい。

ある総菜工場では、時々行っていたシート培地を使った拭き取りとスタンプ検査で、あまり良い結果が出ていなかった。春になって暖かくなり、食中毒対策を強化しなければならない重要事態になって来たので、すぐに結果が分かるATP検査を購入して対処することにした。

まず、施設内の出来るだけ多くの所を検査してみた。それぞれの製造室がいったいどのような状態になっているかをとにかく知りたかったからだ。検査は、作業終了後すぐではなく、一晩おいて翌朝、作業を始める前に行なった。

購入したばかりのキット百本を、下処理室、調理室、盛り付け室、洗浄室と、広域に検査したが、それぞれの作業室の中には3つのカテゴリーがあると考え、バランスよく検査することにした。
カテゴリーは、
1. 食品が直接接触する部分や面:ナイフ、まな板、調理機器の食品が触れる場所、ミキサーや加熱釜の内側、コンベア等。
2. 人の手が触れる場所:冷蔵庫の取っ手やドアノブ、調理機器の握る場所、機械のスイッチ等。
3. 以上以外の場所:壁、作業台、機器の周りや上部等。
これらに加えて、従事者がサニタリールームから作業室に入って来た時、つまり手洗いが終わった直後に、何人か捕まえて手指も調べた。
不合格のラインだが、食品が直接接触する部分は、200以下、それ以外は1000以下が合格、と言った目安で見てみた。
キット一本約300円なので、3万円かかったが、これでどこがどの程度汚染しているかが広範囲にわかった。

食品が直接接触している場所では、古いまな板の表面、新しいまな板でも縁がひどく汚れているのが見つかった。古いまな板は傷が多いので、その部分が汚れていたのだ。時間をかけて力を入れて洗浄しなければならない。まな板の縁はその後の検査でも汚れているのがちょいちょい見つかった。マニュアルを作って徹底しなければならない。
ナイフでは古い木製のものと、柄と刃が一体になった最新の衛生管理対応の2種が混在しているのだが、驚いたことに最新型の方が汚れている。なぜそんなことになるのか洗浄しているのを見ていたらわかった。最新型はちょっと洗浄するだけで落ちると勘違いして、よく洗っていなかったのだ。古い包丁は、木の柄に差し込んである刃の元の部分を良く洗わなければならないので、きちんと時間をかけて洗浄していたので、きれいになっていたわけだ。これでは反対ではないか。
その他のカテゴリー2と3で問題があったのは、冷蔵庫の取っ手、水道の栓、ドアノブ、機械のスイッチの特に滑り止めの刻みが付いたダイヤル、盛り付け室コンベアの裏側、下処理室にある野菜洗浄後の脱水機の籠、その他かなりの箇所が不合格だった。

今まで施設の環境検査だけでなく、製品そのものの、特に危険がありそうな和え物やサラダ等を中心に細菌検査をしていたが、規格範囲にはなっているものの、あまり良い結果とは言えなかったり、ぎりぎりなのもあった。この広域検査で、どこか特定の場所が悪いわけではなく、施設全体に悪い場所がかなりあり、それらが複合して、製品の成績を悪化させているのだとわかった。

これらの結果を表にして大きく発表したら、安全意識のある従事者達が驚愕した。
緊急に、ドアや取っ手は肘で開けられるタイプに変更できるものはした。水道の栓も取り替えた。手洗いで結果が悪かった従事者は指導した。

次に、カテゴリー1の食品が直接接触する部分、中でも加熱後、冷却から盛り付けが終わるまでの間の工程と、和え物やサラダ等、全行程でが無い製造では、原材料を開けた所からインナーパックまでのすべての工程に付いてを重点的に10カ所を毎朝、1ヶ月間続けてみた。
最初の広域検査でどこが汚れているかがわかっているので、洗浄方法を改善し始めている。改善の方法がわからないまでも、以前よりもていねいに洗浄するようになっている。数値が毎日発表されるので、効果がすぐにわかる。大きな進歩だ。
この間、それまで検討だけしていて実施しなかった泡洗浄を導入した。泡をまくためには、作業室内の整理整頓をしないと出来ないので、これが洗浄のしやすい環境づくりの飛躍的改善になった。
カテゴリー1以外の場所については、毎日10カ所をランダムに検査した。つまり、毎日、カテゴリー1について10カ所、それ以外に付いても10カ所、合計毎日20カ所の検査を続けたわけだ。

善しながら1ヶ月経ったら数値はかなり良くなって来た。常に安定してきれいな所もあるが、未だ不安定な場所もある。そこで、カテゴリー1とそれ以外、それぞれ5ヶ所の検査に頻度を落とした。頻度を落としても、検査する場所はそれまでの経験に応じて変えるので、大きな見落としは無いだろう。

柔軟にあちこちの検査を続けていったら、かなり良くなって来た。そして製品検査の結果も平行して良くなって来た。やはり広域複合の製造環境汚染で以前の細菌検査結果が悪かったのだ。

その後、検査頻度を週3回にしてコストパフォーマンスをあげながら、製造作業の環境は良くなって来ている。
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