シドニーのカット野菜工場 ALL STATESのHACCP

2013/05/10 17:39 に 松本リサ が投稿
シドニーのカット野菜工場 ALL STATESは、東京で言えば大森の青果市場のような、大都市シドニーへの供給市場内にある。工場で生産されたカット野菜や加工品は、スーパーマーケット、フードサービス、それに食品工場にも供給している。ハンバーグに入れるオニオンや、スープやソースに入れるニンジン、ポテトなどの加工用原料も生産している。

この工場の特徴は、生産からHACCPを徹底していることである。社長のPhillip Georgeさんは顧客や、訪問者が来るごとに、最初に言う言葉がある。「私の工場は、HACCPを行っている生産者と提携しています。HACCPを行っている工場からの生産物しか仕入れません。そして、工場内も全てHACCPを徹底しています」と、そして「だから、私の工場の製品は安全です、ですから買ってください」となる。


HACCP対応の農場では、定期的に水、土、そしてオーガニックでは与える肥料が検査されている。水や土は、有機塩素系農薬、医薬品、重金属、抗生物質など、100種類以上のものが検査されている。検査頻度は、年に1回のものもあれば、月に1回のものもある。国で検査頻度が決められているものもあるし、農場が自主的に決めているものもある。比較的簡単な検査ならば農場が自分で行い、時々外部の検査機関にも出してチェックをし、自分と、外部の監視の両方を行う。検査が難しかったり、特別の機器を必要とするものも多いが、これらはもちろん外部に出す。

農場から工場までの間だが、基本的には、農場で収穫したものは、4〜6℃に冷やして保管し、この温度で運搬をし、カット野菜の工場に入ったらこの温度で一時保管される。加工作業を行う部屋は10℃程度である。特に厳しい温度管理をする部屋では4〜6℃といった保管温度と同じところもある。

1. ポテトの原料
オーストラリアの青果の流通では、まだ木枠、木箱が多い。ビールでもいまだに木箱に入ったものを見ることがある。ポテトも大型の木製のコンテナーに入れられ、そのままの状態で工場に入ってくる。
作業の最初の工程は洗浄だが、自動洗浄器に入れられ、洗浄されたものが次の皮むき、そしてカットの工程室に入っていく。このポテトの洗浄室は、この後の工程の部分と明確に分けられている。

2.皮むき工程
ポテトの皮むき工程室。この工場の製品は、一般的な皮むきをした後、10キロの袋に入れて出す製品もあるが、あるホテルチェーンの要望によって、一個100グラムのポテトだけを選別して袋入りにする製品もある。

3.皮むきポテトの製品
10キロのプラスチック袋入りポテト。軽く脱気した状態でパックされている。この後4〜6℃に保たれた出荷倉庫に行く。

4.スライスポテト
さらに加工度を高めたスライスポテト製品。これはレストランチェーンや食品工場行き。こういった製品を入れておくコンテナーは、ステンレス製で、網でかこったものを使っている。冷気がよく行き渡るように、空気が流通するためにもいい。

5.ダイスカットポテト
5ミリ角、1センチ角など、顧客の注文に応じてカットをする。パッケージも、数キロから数百グラムの広範囲のパッケージに対応できる。

6.ボイル加工室
6基のボイル槽があり、メッシュ槽に入れられた材料を、クレーンで釣り上げ、メッシュ槽のままボイル槽に入れる。規定の温度に達したら、クレーンで釣り上げて、急速冷却機に持っていく。なるべく人間の手を入れない、人間を介さないことによって、汚染、異物混入を押さえている。

7.急速冷却機
大型の急速冷却機に、ボイルやスチームなどの加熱処理をしたものを入れる。床などを見てもわかるように、この工場はかなり古いのだが、効果的なSSOPによって、クリーンに保たれている。

8.野菜の一次処理室
各種の野菜を処理するので、人手が多くかかる部屋である。作業員の規定は、ブルーの防寒作業衣に、長靴、ロングエプロン、ゴム手袋、腕のプラスチックカバー、ヘアネットである。部屋の壁と天井は汚れのつきにくい材質で、接続部分にはシールがされ、洗浄が効果的にできるようになっている。

9.2次加工室
一次作業で、余分な部分のカット、根などのカット、皮むきなどをされた野菜類はこの2次作業室に行き、さらに細かくカットなどの加工が行われる。カットした野菜を一次入れるカートの底は、床から50センチほど離れている。食品を入れたカートやサンテナー、コンテナーなどは、床に直接置かないのは常識だが、頻繁に使うこのコンテナーカートは衛生的な構造になっている。電源などの供給は、天井から直接機械に下ろし、ごみ、バクテリアの増殖、付着を出来るだけ少なくするようになっている。

10.カットピーマン
カット野菜で重要なことは、温度管理、清浄度管理、カットする機械の衛生と切れ味の管理、そして清浄な水である。

水について
この工場全体で使う水は、CLO2で消毒をしている。CLO2(二酸化塩素)だが、この工場の裏に「純粋二酸化塩素溶液」のタンクがあり、それを自動混合機で規定量原料水に混合して、全工場に供給している。このCLO2についての工場長のコメントは「HACCPをやっている方なら十分ご承知の通り、我が工場でもHACCP導入のための最近の常識で、CLO2を使っています。これは、安全で、殺菌効果が素晴らしく、おまけに消臭にもなる素晴らしいものです。米国のUSDA,FDA等で、HACCPシステムのための推奨にもなっていることはご存知の通りです」と言っていた。その通りなのだが、日本ではまだこのCLO2は、あまり知られていないようだ。

11.カットピーマンのパッケージ
これは業務用の大型のパッケージ。プラスチックのサンテナーに入れられて出荷倉庫に保管される。

12.サラダ用スティックカット
ピーマン、ニンジン、カリフラワー、セロリ、オニオン、ベビーコーン、それにもやしが入っている。サラダやソテー用。

13.スライサー
オニオンのスライスを行っている。この作業室に入った途端、見学者はオニオンで目が突然やられるが、しばらく居ると慣れてくる。不思議なものだ。

14.葉野菜のカット作業
量の少ないカット作業は、機械や流れ作業ではなく、人手でやっている。野菜の形によっては、全て手作業になるものも多い。葉野菜は大体手作業になってしまう。

15.オニオンの皮むき作業
手むきで、剥いたオニオンが手前にある。この場所について著者は工場担当者に「オニオンの皮が入る危険があるのではないか?」と聞いたら、「確かにその通りなので、改善する。しかし、この場所は国内向けの作業なので、輸出用は別にあって、厳しくしている」と言っていた。オニオンの皮は、ハンバーグに入れるソテーオニオンに入ることがあり、時々問題になるのである。

16.皮をむかれたオニオン
オニオンの皮は、むき残したものだけではなく、端境期のオニオンでは、表面の皮の中にあるものが時々あるということだ。

17.ダイスカットオニオン
パッケージの上に貼ってあるラベルは、製造日、ロット番号などの情報を入れてある。

18.真空パック工程
この工程の作業者は、長靴では無くスニーカーである。床から一段上げて水から離している。

19.金属探知器
最終的にパッケージされた製品は、この金属探知機を通ってからサンテナーに入れられ、出荷保管庫に行く。

20.スチロールボックスでの出荷
出荷先によっては発泡スチロールボックスに入れられるものもある。これは、配送先での温度管理に心配がある場合、配送した後、すぐに冷蔵庫に入れられない危険があるときに使っているようだ。右はキャセロール(煮込み料理)用のミックスベジタブル。左はサラダ、ソテー用の製品。

21.保管庫の温度計
保管庫は、大体3つの温度帯になっている。1℃、4℃、6℃である。野菜の種類、パッケージの形、生の場合とドレッシングを入れたサラダなど、加工形態によって分けている。もちろん記録は常時自動的に行っている。

22.自動倉庫
鮮度保持効果を持ったコストの高い保管庫は、立体倉庫になっている。品質とコストを何とか両立させる努力がある。

23.味付けサラダ
ボイルエッグ、サラミ、ドレッシングを入れたサラダ。このような加工度の高い製品は、別室で組み立てられる。

24.ミートソース向けのダイスカットキャロット
これは、ソース工場で、グラインドしたビーフ原料に入れられる、5ミリにカットしたダイスカットキャロット。ソース工場では定期的にカット野菜の工場に行き、チェックしている。購入側が、製造工場を定期的に視察調査をしているのである。こういった監視体制は、HACCPの中に必ず入れられていて、その頻度と監視ポイントは、お互いのミーティングの中から、効果的で、重要なポイントを見つけて決定される。この「効果的」というのが重要で、監視する部分があまり多くても、効率が悪かったり、集中できないなど、問題も出る。大事なことは、「集中して監視して、効果的なポイント、方法」を見つけることである。CCPを決める考え方と同じである。

25.ソテーオニオン
これは、ハンバーグ工場でハンバーグに入れられるソテーオニオン。オニオンの表皮が入る危害があるので、カット野菜工場ではもちろん監視しているが、ハンバーグ工場に入ってからも、目視でスクリーン検査をしている。ダブルチェックになる。このように、供給者側も、購入者側も、両方で危害を理解していて、お互いに監視しあうことによって、効果的なHACCP体制ができることになる。

※鶏卵肉情報センター「月刊HACCP」98/9.10月号より
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