PPとCCP

2013/05/19 22:22 に 松本リサ が投稿
PPとCCPが混乱していることが多い。PPは「一般的衛生管理」で、CCPは「重要管理点」と訳されているが、その違いはどういうことになるのか。

CCPは劇的に危害を防止できる工程で、PPは劇的では無いがやらなければ危害につながっていく

加熱調理製品では、75℃という温度をクリアすれば、食中毒菌は死滅する。劇的に危害を防止できるからCCPになる。この後、パッケージするまでに冷却をしなければならない。チルドの製品ならば一般的に10℃以下にまで冷却をしてからパックをすることになるが、冷却する場所が不衛生だと、せっかく菌を殺したのにまた菌をつけてしまうことになるために、冷却室をクリーンにしておかなければならない。サニテーションをし、フィルターを通してきれいな空気を入れることになる。しかし「劇的」に危害を防止することは出来ない、少しは細菌がいるわけだから。だからといって何もしなければ危害に結びついていくことになる。劇的にはならないがクリーンにすることが重要で、これはPPになる。

パッケージをしたあと金属探知器を通す場合、金属異物が入っていればはねることになるので、これは「劇的」に近く、ここはCCPになる。

金属探知器を通したあと箱詰めをし、冷蔵庫に保管する場合、冷蔵庫の温度が甘いと品質劣化して危害に結びつく可能性が出てくるので、冷蔵庫の温度をチルドならば0〜2℃に維持する。この温度管理は「劇的」に危害を食い止めるわけではないが、やらないと危害に結びつく可能性が出てくるので、ここはPPになる。

製造工程の最初に戻って、加熱調理をする前の工程は、製品に異物が入らないようにサニテーションをしたり、細菌が入らないように洗浄をするが、これは「劇的」ではないがやらないと問題のものになるので、加熱殺菌前の工程は全てPPになる。

以上が一般的なPPとCCPの概念である。しかし、食品の製造工程は多岐にわたり、加熱殺菌工程が無い食品はいくらでもある。それならば、加熱殺菌工程が無く、金属探知器もない場合、CCPはなくなってしまうのではないかと考える。

CCPが無いHACCPもある

魚の切り身の製造工場では、原材料となる丸の魚、例えば冷凍の鮭を仕入れ、半解凍して70グラムの切り身にカットをし、解凍しないうちに急速凍結機に入れて完全凍結をし、真空パックにして、外装梱包をし、冷凍製品倉庫に入れる。この場合劇的に殺菌をする工程は無い。したがって、一般的概念に置けるCCPはないことになる、全ての工程をPPで管理することになる。

こうなると、生食の製造では、金属探知器が無ければ本当の意味のCCPはないことになる。寿司、刺し身、サラダ、日本には生食の食品が多いので、HACCPをやっていったら、CCPが無いことがわかり、どうしたら良いのかわからなくなってしまう例も良く聞く。

正しくはどうか、一つはPPだけで管理をするHACCPになる。もう一つは、本来の意味でCCPではないが、工程の中の重要な工程について、PPなのだがあえてCCPにして管理をする方法もある。

例えばチルドの魚を原材料として仕入れ、刺し身用のサク状態に加工をし、飲食店へチルドで出荷する場合、原材料の温度が高く、例えば4℃以上になった場合、ヒスタミンの生成、ボツリヌス菌、腸炎ビブリオといった危害が出て来るので、受け入れ時の温度は重要になる。この場合もし7℃だった場合どうなるかというと、原料魚が何らかの汚染を持っている場合、工場に到着時にそれが増殖していることになるので、直接に危害に結びつく可能性がある。しかし、危害を持っていない場合は問題無いだろう。さて、どちらの場合ももし4℃以下で管理された状態で工場に入荷した場合はどうなるか。微小な危害を持った状態で入荷するものがあった場合、工場内の管理が良くて理想的な状態で加工できれば、危害はあまり増殖することはなく出荷になる。しかし工場内の製造管理が悪い場合、増殖をし、危害に結びつく可能性は出てくる。

ではどうすればよいか。一つは入荷時にサンプルを取って細菌検査をすることと理論的にはなるが、鮮度が売り物であるから、細菌検査の結果が出たときにはもう出荷をしてしまい、早い場合には消費されてしまう。早朝に水揚げした鮮魚が刺し身用のフィレになって航空便で東京に夕方到着し、その夜に「今朝あがった淡路島のハモ」が料理店で出されるのである。

ということで重要なことは「入荷時の温度が4℃以下」ということになり、これで入荷すれば、微小な汚染があっても、工場内の管理さえよければ危害にならないことになる。であるから、ここをCCPにすればよい。4℃以下は危害細菌などを死滅させることは出来ないが、危害を食い止める重要なポイントなので、劇的では無いが、あえてCCPにすればよいのである。

活魚を刺し身用のフィレに加工する工場では受け入れ時「活きていること」をCCPにしても良い。貝類のむき身加工では、むき身にしたあとの洗浄水と冷却水の温度を「5℃以下」にすることをCCPにしても良いし、PPでも良い。しかしあえてCCPにすることで従業員に「重要性」を意識づける考え方もある。

CCPが無い場合、重要なPPをCCPにしても良いのである。実際欧米の魚加工工場で入荷時の温度をCCPにしている工場はいくらでもある。

CCPの数の歴史

CCPの数だが、現在は「5つ以内」とされている。これは規定として明文化されたり決まっているのではなく「HACCP20年の歴史から出て来た数」である。2〜3年程前までは「6つ以内」と言っていたし、それ以前には、重要なCCPと、それほどでも無いCCPとを「CCP1」「CCP2」の2つのレベルに分けていた頃もあった。さらに前には10以上ものCCPを設定していたものもある。以前の資料で見たことのある人も多いだろう。HACCPが進化してくるにつれてCCPは絞り込まれてきたのだ。

最近のCCPの一般的な数は、1〜3ヶ所程度で構築されているものが多い。しかし、同じ製品で同じ製造工程の場合でもCCPは同じ数になるとは限らない。ローストビーフの総合衛生管理製造過程の承認を得ている、ある企業の東京工場と大阪工場では、東京工場のCCPは1つで、大阪工場は3つである。東京工場のCCPは、金属探知器で、大阪工場はこれに加えて加熱調理工程と冷却工程の二ヶ所が加わっている。製造システム、機械が同じなのになぜこうなったかというと、保健所担当者の考え方の違い、指導の違いからこうなったという。もちろんどちらも正しい。東京工場の加熱調理工程と冷却工程はPPで管理するようになっている。牛乳工場のCCPは一般的に、受け入れ検査、加熱殺菌、金属探知器の3つだが、2000年に入って、CCPが加熱殺菌工程一ヶ所の承認が出たという。

CCPが少なくなってきているということは、HACCP計画が簡便化していているのではなく、PPを強化してきている、PPの重要性が増大していることを意味する。

米国などでHACCPの研修を受けると、「一般的衛生管理は重要です、これでしっかりと土台を作って、それからHACCPに取り組むこと」といった意味の解説がある。米国の食品工場のHACCP監査は、半年に一度連絡せずにいきなり工場に入る、という厳しい監査を行なっており、大きな問題があると工場を閉鎖されてしまうこともある。特に食肉加工工場ではUSDA(米国農務省)の担当者が終日工場内を監視しており、その担当者も定期的に交代をするシステムになっている。

監査では手洗いの徹底、冷蔵庫や製造室の温度管理、従事者教育など、一般的衛生管理の監視が厳しい。一般的衛生管理が行われていないと工場そのものが成り立たない、操業できないのである。こういったことから「一般的衛生管理は正しく実施されている」としてHACCPの研修が行われているのである。

この状態にもかかわらず最近特に一般的衛生管理の監視がさらにうるさくなってきている。以前は半年に一度の監視だったのが、半年に二度になったり、レストランの状態をウエブに公開したりといった動きがこれである。

つまり、CCPの数を絞り込んで、ますます集中するようになったと同時に、一般的衛生管理も強化するようになってきたのである。

PPは、一般的衛生管理の項目と、製造工程の二面から

総合衛生管理製造過程などの一般的な総括表を見ると、製造工程ごとに「PP」か「CCP」か、どちらで管理をするかが整理されており、これを見て「製造工程別にPPの内容を構築していく」と考える場合もあるが、工場の現場に入って「床、壁、天井、製造機械、道具、等をリストアップして、それぞれのPPの内容を構築する」、つまりSSOPの構築から行なう、と考える場合もある。どうしたら良いのか最初から混乱している状況も結構目にする。

正しいのは、一般的衛生管理の項目からと、製造工程からと、両面から構築していくことである。例えば総合衛生管理製造過程の場合では、「(7)衛生管理の方法」の10項目について、Codex食品衛生の一般的原則に関する規則では「1.目的」から「10.教育・訓練」まで、全ての項目についての管理を構築する。これに加えて、製造工程を追い、工程ごとの管理を構築する。これによって漏れの無い一般的衛生管理を構築するのである。

例えば、工程からだけで一般的衛生管理を構築しようとすると、Codexの項目での「4.4.2.排水及び廃棄物処理」「4.4.4.ヒトの衛生設備及び便所」「6.3.そ族・昆虫管理システム」「7.施設:ヒトの衛生」「10.教育・訓練」等の重要な項目が漏れてしまう。したがって手順から言うと、一般的衛生管理の構築項目を遵守して構築したあと、HACCPの製造工程ダイヤグラムで、ダブルチェックし、両面から効率的かつ効果的な一般的衛生管理を最終的に構築する方法が良い。

2年の構築では、最初の1年でPPを、次の1年でCCPの構築とPPの定着

一般的衛生管理とHACCPの構築は、多くの事例から平均2年程かかっている、日本国内も海外の例もほぼ同じである。文書や規定を作成するだけならHACCPチームスタッフだけで集中して出来るのだが、現場での実施運営がともなわない。運営が定着するようにするためには、教育訓練も含めてこれだけの時間はかかるのである。

実施を速やかに行なわせるために「罰則」を使って強制的にする考え方もあるが「恐怖」の中で進めては「自発的、積極的、自主的」な「改善」「進化」にはならない。

構築の手順としては、2年かかると覚悟し、最初の1年出一般的衛生管理を構築する。これによって異物混入対策が徹底するので、このクレームが多い工場ではクレームが減っていく。その後、HACCPの構築に入る。HACCPの構築の製造工程フローダイヤグラムから、CCPを決め、工程からPPを追うことで、最初の1年で構築したPPをさらに強固なものにしていく。この2年目で、一般的衛生管理の定着とHACCPの構築をまとめる。という姿がよいだろう。
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