パート・アルバイトにクレンリネスを定着させるための重点チェック項目

2013/04/25 2:13 に 松本リサ が投稿
教育の時間を設けているか、その担当者が居るか
ある企業で、ある月突然異物混入クレームや品質クレームが続発した。なぜか理由を調べてみたら、外国人従業員を数十名一気に入れていることが原因と分かった。現場が忙しかった為、なんにも教育せずに現場作業を始めさせたのだ。これによるおわび行脚の時間とコストは膨大なものになってしまった。
PA(パート、アルバイト)スタッフが入った際、現場に入れる前に、必ず基本的な教育を行なわなければならない。その為の時間は顧客への影響を考えると、企業イメージにもかかわる重大なものだ。

ある企業では、PAスタッフが入ると、20分間の教育ビデオを見せ、レポートを書かせ、理解度を確認した上で、初期の現場に投入する。理解度が基準以下だと、再び同じビデオを見せて、認識出来るまで繰り返す。
ビデオの内容は、企業のやっていること、クレンリネスとは何か、クレンリネスをしっかり行なわないとどういうことになるかを具体的に。例えば異物混入クレームや食中毒になるといった具体的なことだ。
危害、クレームの元は何かを教える。その為の教材と担当者。
特に、食中毒菌と異物について認識してもらう。
食中毒菌については特に、人に由来する黄色ブドウ球菌とノロウイルスについて重点的に教える。
黄色ブドウ球菌は、ヒトの、フケ、ニキビ、ケガ、手荒れ、鼻の穴の中、といったところに居て、それが食品に入って、食品中で増殖すると、急性食中毒になる。

ノロウイルスは、元々は牡蠣などの二枚貝だが、今では人の糞便を通じでどこにでも拡散してしまう深刻な食中毒元だ。ノロウイルスを持っている人が、トイレに入って、良く手を洗わないと、億単位のノロウイルスが手に付着している。それがトイレの取っ手、ドアノブ、水道の栓、作業場へのドア取っ手、冷蔵庫の取っ手など、あらゆるところに付着し、それを介して多くの従業員の手に移り、広く拡散してしまう。それが食品に入ってしまうと、百個程度のウイルスが人の口に入ったら、食中毒になってしまう。そしてその人のトイレ後の手洗い不足で、更に拡散という事態になってしまう。

このことを教えなければならない。

個人装着物の禁止
指輪、腕輪、時計は、装着部分に汚れが溜まり、それが異物混入や食中毒の元になってしまう。

ある学校給食に納入しているところが、黄な粉をまぶしたパンを作っていて、黄な粉と砂糖を混ぜている従業員が指輪をしていた。その指輪の間にノロウイルスが付いていて、児童数十名の集団食中毒になってしまったことがある。
食品から、小さな透明なピンのようなものが出て来たと、異物混入クレームがあった。
調査したグループは、全員男性で、これが何かわからなかった。
しばらく調べたが、この何だかわからない異物は、バックルーム内には絶対に無く、顧客側での混入ではないかと推定した。そこにひょこっと女性の従業員が来て「あら、これは透明ピアスですよ」と言った。
これは、開けたピアスの穴がふさがらないように付けるもの。
それでは、バックルーム内で、これを付けている従業員がいるかどうかだ。
とはいっても、時計、指輪など「異物細菌の付着するようなものは工場内に入れてはいけないとなっているので、無いはずだ。「そんなの、言わなくても、持ち込み禁止と判断するだろう」と考えたが……
調査の結果、青ざめた。数人が、ピアスカバーをして作業をしていたのだ。
ピアスカバーは、持ち込んではいけないもののリストにはなかったからだ。
このような事例を交えて教えるとよく分かる。

クレンリネスの基礎、個人衛生
帽子、マスク、ユニフォームの装着訓練を行なう。まず、なぜ帽子をかぶらなければならないのかの認識を教える。
帽子を被らないと、毛髪が落ち、毛髪混入クレームになる。頭のフケには黄色ブドウ球菌があり、これが食品に入って増殖すると、急性食中毒になる。だから帽子をしっかり被らなければならない。毛髪が落ちやすくなっていてはならない、その為にこう被る、と、鏡も使って、出来るまで教える。
なぜマスクをするか。鼻の穴の中には、三分の一の人が黄色ブドウ球菌を持っている、それが落ちたらこれも食中毒の元になる。作業中は声を掛けたりすることが出てくるが、この時唾が飛んで食品に入っても不衛生だ、だからマスクをする。
ユニフォームをなぜ付けるか。働く為の規律だけではなく、衣服から埃やゴミが落ちて、それが食品に入ったら、異物混入クレームになる。ユニフォームはそれを防御する方法だ。
長靴も、きれいなことを確認してからはかなければならない。長靴の底にゴミが挟まっていると、歩いている時に外れて床に近い低い位置にある食品に入ることもある。
こういったことを、訓練担当者が教える。その為の教材、教育マニュアルがなければならない。

粘着ローラーの使い方
粘着ローラーは、ユニフォームに付着した毛髪や埃、ゴミを除去する強力な方法だ。体の上の方から下にかけて、念入りにかける。
どのぐらい効果があるかを認識してもらう為に、新しいテープでかけさせ、かけ終わってからテープをはがして、どの程度付着しているかを見せてみる。
じっと目を近づけてみると、実に多くの埃やゴミが付いていて、毛髪も付いていることがある。これだけのものがローラーをかけないでおいたら食品に入る可能性があると分かれば、ローラーをしっかりかけるようになる。
粘着ローラーでもうひとつ大切なことは、手洗いの前にかけることだ。ローラーの柄は多くの人が握るわけだから、当然汚染されている。ローラーをかけてから手洗いをしなければならない。

手洗いの方法を教える
ある企業では、手洗の方法は手洗いシンクにイラストで表示してある。そこでその通りに一度手洗いを行なってもらう。終わったらATP測定器で検査をする。
ATPというのは、汚れの程度が数値になって現われる機器だ。綿棒のようなふき取り棒で、手のひらや指の間を拭き、機械にかけると数秒後に数値が表示される。一般的に千以上は汚れている。
ATPは元々ナイフ、まな板、ミキサーの内側など、食品が直接接触する部分の汚れを検査して、例えば「五百」以下だったら洗浄し直し、といった形で使用するのだが、これを手洗いの効果確認にも使うことが出来る。
この検査をすると、ほとんどが不合格になる。ある時、最初に洗ったら「七千」以上になってしまった。二度目に再手洗いをしても「四千」程度、三回目にやっと千のレベルに達した。
この手洗いの訓練は、一人一人でなくても、集団で行なえる。数人、数十人の前で、代表者が全員の目の前で手洗いをする。しっかり洗っているのに数値は悪い。あの洗い方でダメなんだ。ということにびっくりする。
ATPでなくても、蛍光性のクリーム状のものを手に付けてから洗い、そのあと暗視ボックスの中で蛍光灯で見ると、落ちていない部分が光る、という方法がある。これだとどの部分が洗われていないか、手洗いの癖が分かる。
これで個人衛生の基本レベルをほぼ訓練し、現場に投入出来るようになる。これらの教育訓練の為のスタッフ、およびこれに要する時間は、食品衛生事故を起こさない為の重要なものだ。小売りではPAスタッフが事故の元になることが多いのだから。

力量が決まっているか
個人衛生の教育訓練が終わり、最初に入ってもらう現場で、どのような仕事から始めるかのプログラムは決まっているだろうか。
基本的には、初期レベルを一週間、それが終わってから基本レベルに入ることが出来、基本レベルを例えば一ヶ月終えると、専門レベルに入る、といったシステムだ。
例えば、生鮮売り場なら、初期レベルは、段ボールやゴミの処理、基本レベルは洗浄やトリミングなどの下処理、そして専門レベルはパッケージといったものだ。これを「力量」という。
力量の内容というのは例えば、
  • マスター→ベテランで教育ができる
  • 準マスター→1人で仕事が出来る
  • ジュニア→新人、まだ1人で出来ない
といったものだ。
クレンリネスは、ジュニアで出来なければならない。しかし、清掃、洗浄については、そのレベルに応じて準マスターになる。例えば陳列ケースや、食品加工機器の清掃は、危険度もあるので、準マスターレベルということになる。

力量は、社員でも、PAスタッフでも、同じ
例えば手作業のラップ包装は、社員よりもパートの人の方がきれいで早い、あるいは惣菜の調理や盛り付けのきれいさと早さでもそのようなことはいくらでもある。クレンリネスや個人衛生だけでなく、全てにおいて力量は平等になる。
また、力量はPAスタッフの時給にも反映させる方法がある。これによってやる気やプライドといった仕事の質にまで良い影響が出れば良いことだ。

クレンリネスのためのマニュアルは揃っているか
マニュアルなどなくても、体で覚えればいい、などといった時代ではない。先輩を見て覚えろ、というのは、熟練技術者の世界でも少なくなってきている。重要なのは、そのマニュアルがあるかだ。
マニュアルの作り方は、まず、現在どのような方法で行なっているかから始める。

あるところで、食肉のバックルームで使うチョッパーの洗浄をマニュアルにしようとした。最初に文書で作ろうとしたのだが、解説が難しく、写真で行なおうということになった。そこでデジタルカメラを持ってきて、洗浄作業の工程を写真にとり、そのあと全ての写真をベタ印刷し、それにコメントを入れ出した。そうしたら、ホッパー(肉を押し出すら旋状の芯が入っているところ)の隅に汚れが残っていたり、洗浄したあとどうやって翌朝まで細菌増殖させないで保管したら良いのかといった問題が出てきた。写真を撮ってキャプションを入れようとした時、これらが分かったのだ。
そこで、これではダメだ、ということになり、ではどうしようと考え始めた。
マニュアルを作り出す段階から、改善が始まったのだ。
試行錯誤した結果、洗浄用のブラシを換えたり、洗浄後は機械に組み立て戻さないで、ホッパー部分を冷蔵庫に入れて、翌朝まで保管するようにした。冷蔵庫で保管すれば、洗浄後すぐに帰れるし、低温なので細菌増殖しない。
結果、洗浄が合理的で安定し、分かりやすいマニュアルが出来たので、これを準マスターレベルに教える洗浄マニュアルにした。

定期的な教育の時間をとる
進入のPAスタッフの教育訓練はスポット的だが、これとは別に定期的な教育の時間をとることが必要だ。
例えば、ある企業は、毎週木曜日の昼休みの後五分間、教育の時間をとっている。昼食は二交代にするので、二回行なう。このようにしても、昼食時間が五分長くなるだけだ。
教えたことはイラストにしたり標語にしたりして、そのあと一週間、休憩室に張り出し、忘れないで、一週間の間に定着するようにしている。この時教える内容は、一つだけだ。例えば「ドアは手で開けない、肘開け」。なぜならば、手で開けると取っ手を汚すから。肘で開ければ汚れない。と教える。
これを毎週やって行けば、年に50もの基本的クレンリネスが定着するようになる。

時々、認識の検証を行なう
アンケートを時々取り、どの程度認識しているかを確かめると良い。
なぜローラーをかけるのですか?
ローラーと手洗いはどちらが先ですか?
食中毒の元は人のどこにありますか?
といった基本的な質問用紙に記入してもらうと、理解度、実施度が分かるし、この質問に答えられなければ再教育することが出来る。
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