クレームをハザード(危害と危害要因)分析に活かす

2013/04/25 2:18 に 松本リサ が投稿
東日本のある洋菓子工場で、個パックをした製品からカビが出て、クレームになった。これはヒートシールをした製品が十数個入った箱の中から、4個もまとめて出た。他の箱からのクレームはない。
カビの出たパックをよく見ると、シールの一部にしわが寄っていて、ここがピンホール状になってカビになったようだ。
クレーム、問題が出た場合、第1ステップは、その原因を探る。この場合にはシール不良だ。

第2ステップは、その元となった製造工程を見つけることで、この場合は、パッケージの工程だ。製品をシールパックする作業工程、あるいはそのパッケージマシンと推定された。
ともかく現場に行ってみた。
パッケージマシンはかなりの年数使っているものだが、いくら古くても正常に動いていればよい。また、従事者の使い方が正しければよい。何かしら問題が発生したので、シールがうまくできなかったのだろう。
担当者に「シール不良は今まで出たことがありますか}と聞いたら、「ごくたまに発生するが、箱詰め工程で発見され、このようなクレームになったことはない」ということだ。
では、更に突っ込んで聞いてみる。
「時々発生した時は、どうして発生したのか、原因は?」
答えは「機械が汚れているとうまくいかないことがある」
ということは、今回のクレームでは、汚れていた可能性があるかもしれない。
機械の清掃は、どういった頻度で行っていたかというと、製品が替わった時に行っていた。汚れは、カスや油だ。
では、製品が替わらないまま、長時間同じ製品をパックしていた場合は、ずっとパッケージを続けており、そうなると汚れが次第にたまり、パッケージ不良になることもあるわけだ。
では、清掃はどうやってやっているかだが、かなり古いすり減った金ダワシと、バーベキューに使うような鉄串を使っていた。これで機械を磨き、串で機械の隅に溜まったカスを掻き出していた。
また、機械を開けてみてみると、シールをする場所で、製品が動かないように押さえつけるパッドがかなり減っていてぼろぼろだ。1/3は無くなっている。

ステップ3は、原因が確定、あるいは推定されたら、その対策をとれるかどうか考え、実施して様子を見ることだ。
この例の場合、どうも機械の清掃に問題がありそうだ。
著者の事務所には製本機があり、綴じるための糊が塗られている帯に熱を加えて糊を溶かし、紙束に回し押し付けて製本する。昔使い始めた頃しょっちゅう製本不良が出て困ったのだが、原因は、糊が機械の一部に付着して汚れ、それがある程度溜まると、そこに引っかかってしまうことがわかった。そういえば最初「とにかく、一番大事なことは、機械の清掃です」と言われていたことを、製本不良が続発し出してから思い出した。

洋菓子工場のパッケージマシンでは、メーカーからそういわれていないかと聞いたら、そうだという。また、時々メンテナンスに来た時、そろそろここは取り換えたほうが……とも言われていたという。忙しいのと、費用がかかるため、長い間そのまま使われ続けていたようだ。
そこで、実施してみた。
まず、機械のすり減った部分とパッドを取り換えた。
次に、金ダワシでは機械に細かい傷を作り、汚れやすくさせてしまうし、金属異物混入の危険もあるので、適切な大きさと形のプラスチックブラシを探して取り換えた。抜けにくいタイプのものだ。
バーベキューの串だが、これも機械を傷つけるし、完全に取れる形ではないので、手作りのブラシを作っているメーカーに事情を話して、オリジナルを作ってもらった。スペア分も組めて数本(数年分になるだろう)。
次に、頻度だが、製品が替わった時はもちろんそのままだが、同じ製品を続けて長時間パッケージし続ける場合、「2時間」流したら、清掃をすることにした。この頻度はしばらくやってみると、ちょうど適切だったことがわかった。2時間使うと、適度に汚れるのだ。
改善後、しばらく製造を続けているが、以前は時々パッケージ前の目視で出て来ていたシール不良は無いようだ。このままこの方法を維持するべく、作業手順書を変更した。
今でもよくわからないのは、なぜ、ひとつの箱だけに、数個ものパッケージ不良がまとめて入っていたかだ。いくつもの箱に分散してもしカビの出た個パックが入ってしまっていたら、多数のクレームになってしまっていただろうに。
これは推測だが、長時間パッケージマシンを動かし続け、最後ぎりぎりになってから、機械の汚れによってシール不良が数個まとめて出て、それが、最後の箱にまとめて入ったのではないか、ということだ。「これでおしまい」というところで、油断が出て、目視発見されなかったのかもしれない。悪い時には悪いことが重なる、マーフィーの法則だったのかもしれない。
実はこれと同じような事故は、他の2〜3ヶ所の工場でもあった。基本的には同じ問題だ。
クレーム、問題を、ハザード分析に投入して解決改善するステップはこういうことだ。
この一連の問題発生から改善までの手順は、ISO22000の「7.10.2 是正処置」に相当する。不適合(クレームの発生)をレビューし、その傾向(汚れによるパッケージ不良)をレビューし、原因を特定し、再発処置を評価し、実施し、その是正処置が有効だったかをレビューし、正しかったことが確認されたら、作業手順書を換え、維持する。
これは、CAからPDCAサイクルになる。

問題発生から解決までのプロセスにこの方式、考え方を使ったらどうだろうか。
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