即効性があるのがHACCP、構築途中で効果が出る

2013/05/19 18:44 に 松本リサ が投稿
HACCPは構築しているときから効果が出る。HACCPの構築を決めてから、勉強をし、準備をし、構築をし、本格的にスタートを始めるまでに、今までの多くの事例から2年ほどかかる。これは米国でも日本でも同じである。HACCPの導入を取引先に希望され、必要に迫られてスタートをするところが最近増えているが、こういった企業に「2年」の話をすると困ってしまうところが多い。しかし心配はいらない、HACCPはこの導入過程でどんどん効果が出るからだ。
例えば、総菜の工場があり、HACCPの導入を開始した。ポテト、ニンジンなどの根菜を原料にかなり使っており、この下処理作業の作業工程を作成しているときに、原材料を洗い、皮を剥き、カットをする作業について整理しているときに、現状ではこの作業を一つの作業室で行なっていた。ところがよく考えてみるとこの下処理作業は、洗浄、皮むき、カット、という3つの作業に別れていることになるので、現状のままでは問題があるのではないかという疑問が出て来た。そこでいろいろ検討をし、調べてみたら、今までにニンジンの皮やポテトの皮などが製品に混入した事故が何回もあり、異物混入のクレームにまでなってしまっていることがずいぶんあったのである。この問題の原因は、同じ作業室の、同じテーブルでこの3つの作業を行なっているところから来ている。

洗浄作業では、特に根菜の場合には泥や異物を落とすわけだから、それらのものが作業室で出ることは当たり前である。その同じ場所で皮を剥き、さらにカットまでしていたのだから、異物混入になってしまっていたのである。そこで、洗浄作業だけを別の部屋で行わなければならないことがわかった。しかしながら狭い工場なので場所が無いので、洗浄作業の場所を同じ作業室の中の最も入り口に近いところに移し、簡単なパーティションで区切って行なうようにした。これだけのことで汚水が作業室全体を汚すことが無くなったことになる。危険性も激減した。これは何をしたかというと、ゾーニングをし、動線を整備したことになる。これが一つの即効性である。

次に、皮を剥いてからカットをする作業である。この作業を大きな同じテーブルで行なっていたのだが、この作業は実は2つの作業に別れている。そこでテーブルを2つに分けて、洗浄作業を行っているところに近い場所で皮むきを行なうようにし。皮むきをしたものを次のカット専用にしたテーブルに移動させて行なうようにした。動線とすれば、最初に洗浄、次に皮むき、皮を剥いてすべてが可食で、皮のむき残しが無いかどうかを確認してから最終的にカット作業をするテーブルに運ぶようにしたのである。これでこの3つの作業の動線とゾーニングが出来上がったことになる。これでそれまでにあった剥いた皮がカットした原材料に入り込む事故が激減した。

この改善は、HACCP構築の最初の段階で出て来た。危害分析の前、HACCPの7原則の手前で出て来たのである。12ステップの手順で言うと、
ステップ4 製造工程フローダイアグラム
ステップ5 施設の図面(ゾーニング、設備配置、動線)
ステップ6 フローダイヤグラムの現場検証
の所なのである。

もう一つ事例を挙げる。スーパーマーケットへスライスやカットをした精肉をトレイパックした製品を納入する工場を「アウトパック工場」というが、あるアウトパック工場では年間に約300件ものクレームが入っていた。クレームの内容は、異物混入もあるが、最も多いのは、変色、ドリップだった。納品したスーパーマーケットの店舗からこのクレームが来ていたのである。数百店舗へ、それぞれの店舗には数百から千パックを越えるパックが納品されているのだから、大変なパック数になり、それから見ると1日一つでは少ないように感じる人もいるかもしれないが、工場の信用からすれば大変な数字である。さらに、一つのパックにドリップや変色があり、他のパックには無いというものではない。同じ品質なのであるから、同時に納品した全部の製品が悪いわけである。変色やドリップは鮮度が落ちているわけだから、日持ちが短くなり、腐敗が早まり、食中毒の可能性が出てくる。

そこでHACCPの導入始め出したのであるが、HACCPの前提条件である一般的衛生管理を構築して行く段階で劇的な改善がすでに出て来た。厚生省の総合衛生管理製造過程は大きく2つのものから構成されていて、一つは土台となる一般的衛生管理で、もう一つがHACCP本体である。一般的衛生管理は工場全体をクリーンにするという重要なものであるが、その中の「原材料の受け入れ、食品等の衛生的取扱い」において「必要量の計画的購入」がある。これは原料の品質や鮮度だけでなく、資金繰りや金利、さらにはコストにもからむ重要なことなのであるが、この調査をやっているときに、在庫が必要以上に多く、それによって鮮度が落ち、品質が劣化し、それが元でドリップや変色になっていることがわかってきた。

そこで在庫を適正レベルまで減らし、在庫の状態が一目でわかるように原料倉庫の整理整頓をし、「適正在庫点検記録」をつけるようにした。この結果約1年後に調べたところ、月間のクレーム数を1年前と比較してみたところ、年間に直して30件程度まで減ったのである。300件のクレームが、30件に激減したのである。これはHACCP本体に行く前の構築作業で出来たのである。この例においても、HACCPは構築作業中にも十分な効果、即効性があることがわかる。

HACCPは、取得することは最初の目的ではない、始めることが重要なのである。取得するまで黙っていることはなく、始め出したら構築を始めたことを発表していいのである、発表すべきである。これがHACCPの構築のパワーにもなる。そして構築途中でどんどん効果が現れるのである。


鶏卵肉情報センター「月刊HACCP」1999/12月号より
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