何故定着しないか、させる方法

2013/04/25 19:46 に 松本リサ が投稿
一般的衛生管理の実施を定着させることは異物混入対策の強力なパワーになる。しかし多くの工場で、なかなか定着しない、言ってもやらない、継続しない、どうすればいいのかという声を聞く。どうすれば定着するのか、悩んでいる企業は多い。
定着させるためには、何故それをやらなければならないのか、やらないとどういうことになるのかを全員が認識しなければならない。信号を守らないと交通事故に遭ってケガをするか死ぬ、だから面倒くさいが守ることになる。トイレから出るときしっかりと手を洗え、というだけで洗うようになるかというと、面倒くさいから適当にごまかす人も多い。洗わないとどういうことになるかを認識していなければそうなる。

スタンプチェック方式
あるフードサービスでの教育で、トイレから出てくるところを見張っていて、手を洗わなかったら頭をぶん殴ることをやっているところがあり、「何度もぶん殴ると体が覚える」という考え方だという、しかしこれを食品工場のパート向けにやったら直ぐに問題になってしまう、第一「何故なのか」を教えないで体罰を与えても痛いからやるだけで定着しない。
ある総菜工場では、スタンプチェックを行っている。サニタリールームから入場したあと、不定期に突然手のスタンプチェックを行っている。手形状になっている培養板に手を押し付け、汚染状態をチェックするもので、きちんと手を洗ったかどうかが分かる。結果が出たら休憩時に状態を発表し、問題のある人の名前を発表する。別に深刻な雰囲気ではなく、「アラ、今度は私がひっかかっちゃたわ」といった気軽なものなのだが、いつチェックがあるのか分からないのと、発表されてしまうということで、手洗いの習慣が付く。ここでは同時に、手が汚れているとどういうことになるのか、葡萄状球菌があったら、それが急性食中毒につながり、集団食中毒になって営業停止になった事例を発表して、恐ろしさを知らせている。

週にひとつの強力メッセージ
ある魚加工工場では、5Sがなかなか定着しなくて、集中講習会を開いたのだが、それでもうまくいかないので、何故なのか聞き取り調査をしたところ、あまり覚えることが多くて、何をしたら良いのか分からなくなってしまう、といった声が聞こえた。教えなければならないことが多いので、一夜漬けのようにしてしまい、かえって分からなくなっていると判断したので、思い切って1週間にひとつだけを徹底して覚えさせる方式に変えた。
デジタルカメラで問題点を撮影し、A-3用紙に3つのコメントと一緒にしてポスターにして工場入口に1週間貼りだす方法である。コメントの最初はルールで、例えば「作業終了後のかたづけ忘れ防止:当番を決めましょう」で、二番目のコメントは、何故このルールをやらなければならないか、やらなかったらどういうことになるか、恐怖を教えることで「ばい菌が増えて食中毒になります、虫の発生で異物混入になります」三番目のコメントは結論で「当番を決めましょう」という仕組みである。これを1週間貼りつづけておくと、自主的に当番を決めるようになる。そして次の週は「包材の整理整頓」で、そして次の週は・・・という方法である。
メッセージはシンプルであればあるほど印象に残るものである。掲示板にひとつのメッセージなら印象に十分に残るが、2つだと効果は半減する、3つになったら更に伝わらなくなる、まあ、伝わらなくなる率は2つなら二乗、3つなら三乗つまり1/9となり、これ以上は全く伝わらないと考えたら良いだろう。

体験実態方式
ある珍味加工工場では毛髪混入対策を話すのに、数十人が集まる部屋の床をまず徹底的にふき掃除をして、きれいに掃除をした部屋に入れ、着帽をした作業場と同じ状態で起立したまま短時間の話をした。終わったあとでもう一度徹底して清掃をしたら、髪の毛が何本も新しく落ちていた。何もしないで立っているだけで髪の毛は抜け落ちることが分かり、この後直ぐにこれを発表したのである。

グループ相互チェック方式
ある生協では、納入する食品工場を数社1グループにして、2ヶ月に一度順にグループメンバーで訪問をして、指摘事項をお互いに言い合うようにしている。いろいろな味方の指摘が出てくるので、改善に多いに役立っている。

教育は、手を変え、品を替え、しつこく
「手を変え」とは、教える人をいろいろ変えることである。いつも品質管理担当者から話を聞いていれば、また同じことを言っているとか、話が飽きてしまうことになる。そこで、人を変える。例えば、各作業室のリーダーの改善事例、保健所の人に依頼、サニタリー関係資材の会社の専門家に来てもらう、外部講師、本社の責任者やトップ、関連工場長どうしの交換講義、地域消費者団体のリーダー、納入先企業のバイヤー、あらゆるルートの人から交互に話をしてもらったり、現場チェックをしてコメントをもらうといった方法である。
「品を変え」とは、講義だけでなく、ビデオ、スライド、参考資料についていたイラストや漫画、グループごとのディスカッション、今までのマニュアルをわかりやすくするアイデアコンテスト、改善コンテスト、新聞や専門誌の切り抜き利用、食中毒などの事例集の利用、など、あらゆる手段「品」を多角的に使うのである。
「しつこく」は、重要なルールは、何度教えても良い、何度繰り返しても多すぎはしないのである。徹底させるにはしつこく何度でも。
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