HACCP自主認定制度の勧めとISO9000s

2013/05/19 18:29 に 松本リサ が投稿
厚生省のHACCP承認制度は、乳、乳製品、食肉製品、魚練り製品から進められていて、これから、缶詰、レトルト、清涼飲料水が加わっていく。最終的には全食品が対象となるのだが、いつ頃全てになるのかははっきりとしていない。現在のペースでいくと、当分先になると予想される。しかし、食品業界、フードサービス、流通業界においては、食品の安全性に対する要望は急務で、HACCPの理解が深まるにつれて、導入の要望は急増していくのは間違いない。

HACCPが加速をしてきている背景には、業界団体が主体となって進めている「HACCP認定マーク」も影響している。これは、HACCP承認工場で製造した製品に対して独自のHACCPマークを表示をし始めていることである。最初に出てきたのは、牛乳関係のの4団体が行っているマークで、牛乳パックの裏側に表示をしてある。見たことが無い方は、スーパーマーケットの牛乳売り場に行けばある。このマークと一緒に、HACCPの制度についての簡単な説明も入っているために、最終消費者に対してもHACCPというものの概念が伝わり出したことになる。同時に、スーパーマーケットのバイヤーにおいても、こういったところからHACCPの認識が急速に出てきている。スーパーのバイヤーは、牛乳パックにHACCP承認マークが入っているものと、そうでないものがあるために、HACCPマークが入っていないメーカーに対して、HACCPの対応はどうなっているのかという問い合わせが出ている状況である。

HACCP承認マークは、牛乳パックだけではない。次にスタートをしているのは「魚肉練り製品」で、対米輸出も含めた承認工場がグループを作り、製品へのマーク表示を始めている。さらに、夏頃を目指して昨年11月に最初の承認グループが出てきている食肉製品で、ハム、ソーセージへのHACCPマークの表示が、99年の夏頃から始まる予定である。また、卵に入り込む病原菌のサルモネラによる食中毒が増加していることに危機感を抱いた食品衛生の専門家らが集まった「日本鶏卵HACCP認定機構」が99.5.8に発足したが、生産現場で衛生管理状況を検査する。早ければ来夏には認定マーク付きの卵が市場にお目見えする。

これに対して、中小メーカーでは、費用の点や、スタッフ不足といったところから対応に苦慮している面があるようである。しかしながら、HACCPというのは、中小レベルでも十分対応できるし、厚生省の基本的考え方では、現在ある施設設備のままで、HACCPは導入できるものである、ということがある。HACCPの導入は、知恵、工夫、アイデアといった、いわばソフトウエアで出来るのである(しかしながら、もし工場の大改装や、新工場建設になるのならば、最初からHACCP対応の設計にするのがもちろんいい)。したがって「大手が導入できて、中小は出来ないから、不当な圧力」という考え方は、間違えている。もちろん、HACCPの認識のスピードが上がってきているために、行政の対応、遅れはあるのだが、これを理由にしているのも間違いである。なぜならば、食品の安全性の確保は、自主的に進めるべきものだからである。

先日あるお茶のメーカーから、お茶に対する厚生省の承認はいつごろになるのか?という質問が来たが、これはいつ頃になるのかはまったくわからない。しかし、これに対する回答は、承認対象になるのを待つよりも、自主的にHACCPを導入し始めればいい、ということを言った。なぜならば、安全な製品を出すことは、メーカーの義務だし、そのために行う現在もっとも効果的なことは、HACCPだからである。そして、販売先のユーザーからもHACCPの導入を求められているからである。こういった質問はいろいろな業種からきているが、全てに対して「自主HACCP」を薦めている。

では、この基準はどうしたらいいのかだが、厚生省の現在の承認制度と同じ方式で行えばいい。7原則、12手順で進め、承認制度と同じ申請書を作成する方法で行えばいいのである。現在承認の対象になっていなくても、「承認を申請できるレベル」を目指していくのである。この上で、自主認定制度を作るのである。

そして、この自主認定制度を、例えばフードサービス企業やスーパーマーケットが、製品の納入メーカー、サプライヤーに対して行うのである。生協、共同購入組織、コーペラティブチェーン、ボランタリーチェーンなどが行うのである。あるいは、メーカーが工場に納入しているサプライヤーに対して行うのである。こういった考え方で既に一部の業界団体が独自の制度を始めている。これを今度は、スーパーや、フードサービス企業が、サプライヤーに対して行うのである。最近の動きでは、外食や小売業者が、サプライヤーに対して「HACCPを導入してほしい」と要望をし始めているが、これをさらに一歩進めて、自主的な認証制度にまでしていくのである。

こういったところからISO9000sを考えると、ISO認証機関が、独自のHACCP認証制度を構築することも可能になってくる。ただ、ISOとHACCPの大きな違いは、HACCPは安全性であり、安全性を確保するために、製造技術のレシピや手法、技術など、製造手法のノウハウの深いところまで突っ込まないと出来ない点である。温度管理をしているかどうかまでは、品質管理体制の維持に入れることが出来る、しかし、HACCPは、温度は何度がいいのか、それをどういう基準で、どういった測定方法で、どういった頻度で測定したらいいのか、基準から逸脱した場合にはどうしたらいいのか、緊急処置はどうするか、さらに恒久処置まで決めなければならない。想定、分析する危害も多岐に渡る。さらに、食品工場ごとにまったく違うし、食品別にまったく違う。10トン製造する工場と、100トン製造する工場では違ってくるし、同じ大豆から製造する豆腐と納豆でも違う。加熱工程のある食品と、無い食品でも違う。この点から、従来のISOの構築作業の延長線でHACCPの導入は出来ない。最初からHACCPの手法で行わなければならない。さて、自主的HACCPの導入により、結果として何が出てくるかであるが、自社の扱う食品の安全性が高まることになる。品質、安全性が、自社の関連する企業群で良くなり、製品の鮮度が良くなり、ロスが少なくなり、各工場の効率が良くなり、稼働率が高まり、結果として利益が出て来るだろう。このことはまた販売力が高まることでもある。

月刊「ISOS」99/6月号より

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