HACCPを飲食店等に取り入れる際に最低限必要とされること

2013/05/06 18:33 に 松本リサ が投稿

1. 難しく考えないで、出来るところから始める


HACCPの目的は食品を安全に顧客に提供するという、ごく基本的なことで、飲食店に置いては、厨房をきれいにすることで、一般的衛生管理という。
一般的衛生管理は、整理、整頓、洗浄、殺菌といった、どこでも程度の差はあれ、食品を扱うところではごく常識的に行っていることを、しっかりとすることだ。
清掃する、洗浄するということは、厨房内の埃、ゴミを出来るだけ少なくすれば、異物混入や、虫の内部発生、細菌の増殖を少なくすることが出来る。従事者についても、作業衣や帽子を着け、手洗いをすることで、人からの危害の持ち込みを少なくすることが出来る。この基本的なことで、料理への異物の混入クレームや、食中毒の元を、かなり少なくすることが出来る。
これらは、家庭の主婦でも行っている当たり前のことだ。
これを厨房というプロの組織の中で、多くの従事者で実施するtめに、科学的な管理をするようにすれば良い。

2. 5つの項目を決めて実施

科学的な管理とは、5つの項目を決めて実施することだ。
5つの項目とは「内容」「頻度」「担当」「確認」「記録」
内容は、清掃、洗浄、調理機器のメンテナンスや調整などの、実施する内容。
頻度は、毎日、毎週、毎月、年に1度などで、これが決まっていないとうまく行かない。5項目のうち一番大事なもの。
厨房の衛生管理のチェックをすると、ダクト、調理機器の裏側など、汚れているところが目立つ厨房があるが、汚れを指摘すると「ああ、そうですねえ」と、初めて気が付く。いつもその場所に居て仕事をしていると気が付かないのかもしれない。床やまな板包丁は毎日洗浄するが、例えばコンベクションオーブンの下や裏側は、なかなか清掃洗浄が大変だ。しかしこの部分に汚れがたまってくると、虫の発生、細菌の増殖の温床になる。ここから厨房内の汚染が始まるのだ。
そこで、この部分を「週に一回」という頻度にして、チェックリストを作って必ず実施するようにすると、厨房内はいつもきれいに保つことが出来る。
天井は蛍光灯は空調口、配管、配線など、どんなにすっきりと出来ているところでもある程度は埃のたまる場所がある。湿度があれば結露となって汚水が下の料理に落ちるかもしれない。そこで天井は「年に一回」とか二回という頻度に設定する。
厨房内だけでなく、ホール、冷蔵庫と倉庫、店舗の周囲まで、頻度を設定する。
担当は、誰が行うかで、当番でも良いし、交代でも良い。誰がやるかを決めないと、誰もやらないことになってしまう。
確認は、二つある。誰が確認するか。確認者は担当者(実施者)とは違う人でなければならない。店長でも良いし、副店長でも良いし、厨房とは関係ない会計やホールサービスの人でも良い。かえって厨房担当者以外の方が、厨房担当者と違う目で見ることが出来るから良いかもしれない。
もうひとつの確認は、確認方法で、目で見て確認する方法(目視確認)と、測定がある。測定とは、ATP検査や拭き取り検査、細菌検査といった科学的な方法で、特に食品が直接接触する場所や面、包丁やまな板といったところを指定する。
記録は、チェックリスを付けることだ。複雑で多くの項目だと記録そのものが負担になるので、一枚の用紙にすべてが記録できる程度のコンパクトなものの方が良い。

3. 一般的衛生管理が主体でHACCPでとどめ

一般的衛生管理を行うことで厨房内はかなり安全になる。このための活動は地道なものだが、衛生管理の活動の8割にはなるだろう。
かなり安全になっても、まだわずかに問題は残っている。
食中毒菌がわずかでも残っていて、それがそのあとの温度管理が悪かったり、増殖したりすれば、食中毒になることもある。
そこで、そのわずかに残っているかもしれない食中毒菌を殺す「とどめ」があれば、安全性は確実になる。そのひとつが加熱殺菌になる。
一般的な食中毒菌は75度C以上に加熱すれば死滅する。ノロウイルスは85度C。これが安全温度だ。
この温度まで加熱をする方法にし、確認することがHACCPだ。
オーブンやフライヤーで加熱料理をする時、中心部分がこの安全温度になるようにする。機械や油の温度と加熱時間を調整することだ。食材の初期温度、厚さや大きさに合わせて調整し、それをマニュアル化しておけば、長年の熟練をした人でなくても、ある程度の訓練をした人で、適切に調理できるようになる。
その上で、一日3回といった頻度を決めて、中心温度計で温度を測って、確実に加熱殺菌調理が行われているかどうかを確認する。これを確実に実施するために、一般的衛生管理と同じように記録を取る。
一般的衛生管理で衛生管理の土台をしっかりさせ、HACCPでとどめを刺すことになる。
非加熱のサラダやサンドイッチなどは、このとどめの加熱殺菌が無い。従ってこれらの安全管理は一般的衛生管理だけで行うことになる。

4. 調理群別に行う

飲食店でも食品工場でも、一般的衛生管理は同じだ。工場でも厨房でも、製造環境をきれいにするためには清掃洗浄といった基本的なことで同じだからだ。しかし、HACCPそのものは違ってくる。
HACCPは食品工場で行う場合、食品毎に異なる。同じ大豆で作る豆腐と納豆では全く製造方法が違うし、温度管理も違う。ラインで製造する食品なので、食品毎、ライン毎に、HACCPを行うのだ。
ところが、食品工場でライン製造するのと違って、飲食店でのメニューは非常に多い。数十から百以上のメニュー(アイテム)がある。これだけのメニュー毎に温度加熱調理のシステムを組み、温度チェックをするのは、顧客からのオーダーが何がいつくるかもわからないことも含めて、難しい。
そこで、飲食店でのHACCPは、調理群別に行う。
フライヤー、オーブンといった、調理機器別に行うのだ。
フライヤーで調理するメニューは、トンカツ、海老フライ、天ぷら、鶏の唐揚げといったものになる飲食店の場合、それらをそれぞれHACCP管理をすると大変なことになる。料理がいつまでたっても出てこなくなってしまうかもしれない。
そこで、フライヤーでの調理をまとめてHACCP管理する。
具体的な方法の例は、フライヤーで調理したメニューを、一日3回、違うメニューで温度測定をする。
昼食時に最初にフライヤーに来たメニューがトンカツだったら、最初にその調理後に駆虫温度を測り、75度C以上になっていたらオーケー。次にまたトンカツが来たらはからなくてよい。そのうちに天ぷらが来たら、それをはかる。トンカツはもう測ったから良いとして、違うメニューが来たら測る、ということになる。
これで2回測った。二回目が昼食時でも午後に入ってしばらくしてからでもいい、とりあえず二階測ったので、今度は夕方まで測定しないで調理しても良い(もちろん時間があれば測って確認してもよい)。
夕方になって、トンカツが来ても天ぷらが来ても一応はもう測ったから温度測定はしなくても良い(もちろんしたほうが良い)。鶏の唐揚げが来たら、これは今日まだ測っていないので測る。
これで、フライヤーで調理するメニューを、3回、違うメニューをそれぞれひとつずつ測って、安全確認できた。
これなら、忙しい厨房作業の中でも出来るはずだ。
中心温度計も低価格になって来たから、フライヤー、オーブン、ガスグリルなど、調理群(調理機器別)毎に温度計を一本備えておけば、規定された一日3回に加えて、測れるとき時々といった形で温度確認が出来る。
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