HACCPシステム導入の必要性と手順

2013/05/19 18:41 に 松本リサ が投稿
導入の必要性は3つある。一つ目は、食中毒菌が強くなっていることである。3大菌は、O-157に代表される病原性大腸菌、サルモネラ、それに腸炎ビブリオで、日本ではこれらで、96年に約8割、97年には約7割を占めている。大元は、食肉、卵、魚に多い。O-157が発見されたのは1982年で、生焼けのハンバーグでの事故からだ。その後も事故は絶えず、日本では1986年の学校給食事故で一気にその名が知られた。最初の頃のO-157は、肉から離すと数時間で死滅してしまったのだが、最近のO-157は、水さえあれば8週間も生きているのがいるし、抗生物質が効かないタイプも出て来ている。サルモネラで問題になっているのがサルモネラ・エンティリテディス(SE)というもので、以前はほとんどなかったのだが、最近は卵の黄身の中に最初にいて、その確率も高くなっている。さらに、生食による寄生虫事故も多い。

2つ目は、取引に基準になりつつあることで、HACCPというのは食品衛生管理を統合したものと言ってもいい面があるので、HACCPをやっていないということは、衛生管理がおろそかだという見方にもなる。HACCP先進国の米国では、小売業もフードサービスも、HACCPを行っていないところからは仕入れないというのが基本になってきた。

3つ目は、企業力である。HACCPを導入すると、ロス、ミスなどが無くなり、稼働率が良くなり、効率が良くなる。要するに儲かるのである。と同時に安全性と品質が高まり、よく売れるようになる。売れて儲かるようになるのが、HACCP導入の効果である。

手順

HACCPの構築は大きな2段階になる。まず、土台となる工場の基本的な衛生管理を行うPP(一般的衛生管理プログラム)とGMP(適正製造基準)を構築し、その上で製品ごとにHACCPプログラムを行う。PP,GMPを構築することで、工場全体の科学的、立体的な衛生管理ができる。PP,GMPだけで安全な食品の製造がかなり出来ることになるのだが、このうえに今度は製造する製品ごとに、どのように危害をなくすことが出来るかを徹底的に行うのである。

土台となるPP,GMPは、10項目あるが、大きく分けると、工場全体と使用する機器の衛生管理、人の衛生教育と衛生管理、それに食品そのものの衛生管理になる。


1.対象を決める

以上の上に、今度は製品ごとにHACCPを行うのである。プロジェクトチームを編成(1.HACCPテームの設置)したあと、まず、対象を決める。どの製品、どのラインに導入するかになる。たとえば総菜工場だったら、最初から全製品をやろうと思っても多すぎてどこから手を付けたらいいかわからないだろう。そのために、もっとも多く製造している製品、たとえばチキンの唐揚げで行う(2.製品についての記述)。唐揚げで出来たら、豚カツやてんぷらも応用すれば出来る。これによって、フライラインのHACCPが出来る。次に焼き物の、まず焼き鳥あたりからはじめる。次にサラダを行えばサンドイッチも出来、生ものラインが出来ることになる。そして、製品をどこに販売するかもなど確認する(3.意図する用途の確認)。

2.製造工程を整理

最初の対象が決まったら、その製品の製造工程を整理する(4.フローダイヤグラムの作成)。鶏肉の唐揚げならば、原料肉の入荷 > 一時保管 > つけ込み > 衣付け > フライ > 冷却 > パッケージ > 一時保管 > 出荷、ということになる。これによってそれまでただだ単に唐揚げを製造している、といったものから、製造している作業がばらばらに分解されて、各工程で何を行っているかが明確になる。そして、現場で工程通りになっているかを確認する(5.フローダイヤグラムの現場検証)。このときに動線が交差していたりすると交差汚染危害の原因になるので、発見したら修正する。その場で直せない場合には、リストアップして、工場改装などの計画に持っていく。こういったことも構築作業中に行うので、HACCPは即効性があるのである。

3.危害をリストアップ

次に、この工程別に危害をリストアップしていくのである(6.各段階に係る危害分析と危害制卸のための除去法の検討実施(原則1))。危害には3種類あり、生物的危害(食中毒菌、寄生虫、カビなど)、物理的危害(異物)、科学的危害(薬品、添加物など)である。このリストアップのためには、その工場特有の危害である過去のクレームや事故も重要である。記録に残っているものだけではなく、現場で発見や解決が完了したものなども、聞き取り調査などをして集めることである。

4.対策を構築し、検証も行う

対策には2通りある。PP,GMP、あるいはSSOP(衛生標準作業)などの一般的な注意などで行えるものと、特に重要な部分である。安全な食品を製造するために行うためには多数のチェックポイントがあるが、これらを全て重要なものと位置づけたら、大変なことになってしまう。そこで、安全にするために特に重要な部分(CCP)を選び、そこを集中して管理するのである(7.CCPの決定(原則2))。CCPは一般的には5ヶ所以内と言われているが、2ヶ所程度のところが多い。この絞り込んだポイントを徹底するのである。

次に、それぞれのCCPで、何を基準に管理をするかを決める(8.CCPについての管理基準の設定(原則3))。たとえば温度、時間などである。そして、その基準を何で監視をするのか、肉中温度計とか、機械に内蔵している時計などになる(9.CCPについての監視方式の決定(原則4))。さらに今度は、もしその基準を逸脱したらどうするか、廃棄するとか、再加熱するなどになる(10.逸脱発生時に採るべき修正措置の決定(原則5))。その後HACCPが正しく行われているか、もっと効率的な方法が無いかを常に検証することになる(11.HACCP方式の検証方法の決定(原則6))。

5.記録を取る

温度が正しければその数値を、逸脱した場合にはその数値と、どのように対処したのかの記録を取る。記録はCCP部分だけではなく、PP,GMPについても、出来るだけ残しておくと、分析と対策に非常に役立つ。現場での作業を円滑に進めるために、コンピュータなどを使った機械による自動記録を出来るだけ導入したほうがいい。CCP部分について保健所が手書きを推奨している場合は、CCP部分についてのみ機械の自動記録と、手書きの記録のダブルチェックを行うといい。

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