HACCPは自主認定の方向、対象じゃないからではない

2013/05/19 22:33 に 松本リサ が投稿
厚生省の総合衛生管理製造過程の対象になっていないから、まだHACCPは始めなくても良いのだろうか?」「いつごろ我が業種は対象になるのだろうか?」という質問をよく受ける。この答えは「そんなこと関係なく、早く進めたほうが良いですよ」ということである。HACCPとは、当たり前の衛生管理を、少しずつ進めていき、同時に取引を有利に導くもの、である。手を洗う、掃除をするといった、食品を扱ううえでの最も基本的なことを、少しシステマチックにした方法に「5S運動」がある。「整理、整頓、清掃、消毒、躾」である。これをもう少し進めていくと、厚生省の総合衛生管理製造過程になる。総合衛生管理製造過程は一般的衛生管理と、HACCP本体で構成されている。一般的衛生管理を家庭で説明すると「きれいな台所を作る」ことであり、HACCPはその上で「おいしくて安全な料理を作る」ことになる。食品の安全性が求められているところに、当たり前の衛生管理を少し高度にしていくことは、食品のビジネスを行なう上で当然のことである。しかもこれを進めることによって、売り上げが増え、利益が増え、取引が有利になっていくのであるから、自主的に進めたほうが良いことは明白である。そのために、勉強をする、考える、行動し始めることである。少しずつで良い、HACCPは構築過程で効果が次々に出てくるのだから。このようなものを始めるのに対象業種になるかならないかを考えるまでもないことである。自主的に進め、進めだしたことを社内、取引先、販売先に宣言することである。これがまたHACCPを進めるパワーになる。対象業種になっていなくても関係ない、納入先に言われなくても関係なく、自主的に進めることである。自主管理で企業力を高めることなのである。
日本でもすでにHACCPが取引基準になりつつあり、そのために、民間での第3者の認証が出て来始めている。まず、ISOの認証機関である。ISOを基本としたHACCPになるわけだが、ISOは「品質」なのだが、HACCPは「安全」なので、この違いに注意しなければならない。例えば、百グラムの蒲鉾があり、これが105グラムだった場合、重量に対する品質上の考え方は、規定の重量かあるいはある程度プラス、ということになる。20%も重すぎると問題にはなるが、5%では問題にしないかもしれない。しかし、HACCPでは大問題になることがある。

というのは加熱するときに規定よりも大きくて、食品の中心まで完全に加熱できず、そこに病原菌が生き残り、それが流通過程で増殖をして食中毒の原因になってしまう可能性が出てくるのである。多くの面でこの品質と安全の違いが出て来る可能性が十分にある。こういった背景から作成する書類も含めて、ISOで作成したものはそのままHACCPに使えないものが出て来る。逆にHACCPで作成したものはISOの方に使っても問題は出ない、安全性は品質に当然勝るからである。こういった点に注意しなければならない。ISOとHACCPのどちらを先にやるかでは、構築途中で効果が出て、安全性まで追及するHACCPを先に持ってきたほうが良いだろう。HACCPを構築してからISOに進めば、HACCPをそのままISOに組み込める。最終的に大きなISOの中にHACCPが組み込まれたものになる。

この他に、食品の組合、団体などがすでに自主的な認定を始めているところが出て来ている。企業においては流通小売り、生協、フードサービスなど、チェーン展開している組織企業などが独自の基準、調査を行い、自主認定的な活動を行い始めている。安全な食品を仕入れたいので、こうした活動は消費者のために大切になる。こういった自主認定は、HACCPがハイスピードで進行する、つまり食品の安全性が向上するということになるので良い方向である。ただ、HACCPはあくまでもソフトウエアであり、運営で行なうのであるから、建物と設備さえ対応すればHACCP導入になる、といったハード面だけでHACCPを導入したことにする考え方になってしまってはならない、この考え方が一部に出て来ているのは問題である。HACCPの自主認証は、あくまでもHACCPは運営であるという考え方で進めなければならない。

農水省では生産のHACCPを進めると同時に、JAS(日本農林規格)へのHACCP導入準備に入っている。これはISOと一緒になったHACCP構想である。またISOの本部では、98年からISOにHACCPを組み込もうという案を進めている。これには米国の反対があり、99年10月現在でいまだ方向に対する結論が出ていない状況である。

米国でのHACCP対応機器の認定では、プライベートな協会が3つほどある。洗いやすいか、安全に食品が製造あるいは扱えるかなどを調べて認定するわけだ。米国ではこれらの協会の認定の無い機器は購入しないのが一般的である。こういったシステムも今後日本で必要になってくる。


鶏卵肉情報センター「月刊HACCP」2000/1月号より
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