HACCPは、ロケットの部品の安全性管理から

2013/05/19 21:50 に 松本リサ が投稿
HACCPは宇宙食の製造から出てきた、のであるが、実はその前に、ロケットの部品製造のための管理、というのが大元である。チャレンジャーの爆発は記憶に新しいが、著者の記憶によると、Oリングという部品が原因の一つだったということである。「華麗なる失敗」と呼ばれたアポロ13号は、月に向かった宇宙船で、液体酸素を撹拌しようとスイッチを入れた途端に爆発をし、絶体絶命の危機に立たされた。NASA数千人のスタッフの歴史的なバックアップで、無事地球に帰還したのだが、この原因は、ケーブルの破片がタンクに入り込んでいて、スイッチを入れた途端にスパークをして爆発したということである。どちらの原因も部品にあり、ロケット、宇宙船の場合は、大変な部品点数になる。スペースシャトルは、25万点の部品で成り立ち、それぞれの部品はさらにビスなどの小さい材料で成り立っているという。
こういった中で宇宙船の事故を防ぐためには、部品の安全度が根本的な問題となるのだが、NASAでは、部品を作るメーカーに対して、製造段階毎のチェックをして、それを積み重ねたうえで製造を進め、その製造履歴まで残しておき、記録とともに部品を納品する方法をとった。たとえば、プラスチックとビスとステンレスで出来ている部品だったら、それぞれの元の材料の精度、強度、サイズなどをチェックして、合格だったら合格の記録をし、その後で組み立て、組み立てたあとのテストで合格をしたら、その記録をし、最終的にすべての記録と、記録を行った担当者のサインなどすべての記録とともに、部品を納品する、ということになる。プラスチックの部品ならば、プラスチック原料の強度や、整形したあとの厚さ、サイズなど、あらゆる性能をチェックしたあと、一つの整形された部品素材となるわけである。そして、最終的に大変な数量の部品が記録と一緒に集合してスペースシャトルになるわけである。

このような方法を確立した中で、乗務員の食べる食品の安全性を考えた場合、この部品と同じ方法で製造したらいいのではないか、というところから食品のHACCPシステムが出てきたわけである。

最初のころの宇宙食は、製造した食品を徹底的に検査をし、十分に安全性を確認していたわけだが、生産効率としては最低だった。というのは、製造した製品の大半を検査に使ってしまい、最終的に宇宙にもって行ける食品の量は少し残ったものをもって行ったに過ぎなかったのである。しかし、食品メーカーとすれば宇宙食だからこれでいいわけなのだが、一般に販売する食品の安全性確保のためにこの方法を取り入れることは、その非効率性から無理だったわけだ。そういったところにHACCP方式が考えられてきたわけだ。HACCP方式にすると、いくつもの安全性を確認する関所を自分で作り、その関所を無事通過する確率を製造技術や工夫で高めることによって、最終的に無駄になる製品を飛躍的に少なくすることが出来る。

HACCP方式によって、安全な食品を製造することが出来るようになる、ということがわかってきてから、最初にこの方式を一般の食品に導入することを考えたところ、最初に必要なのは食肉である、ということは明白になっていった。というのは、米国での食中毒の8割方は、サルモネラと病原性大腸菌で、この2種類のバクテリアは、どちらも食肉を由来としているのだ。
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