HACCP対応漁港併設魚卸売市場

2013/05/07 22:54 に 松本リサ が投稿
魚卸売市場のHACCP
米国ワシントン州の魚加工工場に行ったら、社長が観光がてら東北の魚卸売市場に行ったという。「日本は新幹線やコンピュータなど、技術大国だから、漁港もすごいのだろうと考えて」という。続けて話を聞いていくと、
「施設に屋根しかなくて風が吹き抜け、カモメがまるでヒチコックの『鳥』のように無数に集まり、糞だらけだった。そこを通ってきた人びとが歩き回っている床には大量多品種の魚が直に置かれていた。ゴミ、汚れ、そしてカモメの糞に入っているカンピロバクターがぬれて光っている床に、魚も一緒に転がっている、日本人は多くの魚を生で食べると聞いているのに。人びとはここでたばこを吸っているだけでなく、吸い殻を床に捨てているのだ、横に魚があるのに。吸い殻が魚に付きそうで、ニコチン風味の寿司になりそう。手かぎという道具で、ゴミを引っかけて捨てたり魚箱を動かしたりして、便利な道具だと思っていたら、それで今度は何と高価なマグロを突き刺して動かした。バイキンとゴミの挿し込み器だ。さらにそれを臭そうな長靴の中に突っ込んでスタスタ行ってしまった」
ああやっぱりと、がっくり来たが、「でも、皆親切な人ばかりで、自宅の広い畳部屋で日本式の宴会をやってくれて、とっても面白かった、日本が好きになりました」という言葉で救われた。
この実態が徐々に改善されつつある。魚卸売市場の改善改革改築が始まりだしているのだ。そのコンセプトはもちろん一般的衛生管理とHACCPである。

1. 高床、密閉式にして、
外部と遮断し、汚染が入らず、内部の温度を10℃といった低温に保つ。外からの虫、鳥、埃、ゴミ、夏場の高温、日光などからの危害を遮断するのである。
高床式にすることで、トラックへの積み込みは衛生的になるが、小規模な顧客も多く、これらは離れた駐車場にある車までキャスターで運ばなければならない。結構な数になるために、施設の横にラインを設置する必要もあるが、この汚染にも注意を払う必要がある。

2. 動線を一方方向にして、
魚介類が入荷して競り場に並べられ、競りが行われたら出荷に行く。この流れが交叉したり戻ってはいけない。
魚卸売市場には、漁港併設のものと、漁港はなくて内陸の卸売市場の2通りがある。漁港併設の場合は、漁船が横付けされて水揚げされる魚を扱うのだが、船からだけでなく、他の場所から陸送で入ってくる魚介類も大きな比重を占めているところも多い。このような施設では、岸壁側と陸送車入荷側の両面の受け入れ場所と動線が必要になる。この形の最新施設に富山県の魚津がある。魚津では、港側と陸送車受け入れ側→仕分けゾーン→せり場ゾーン→出荷ゾーン、となっている。
内陸の魚卸売市場では、陸送車からの受け入れだけで良い。岩手県の金ケ崎町に数年前HACCP対応として出来たメフレ生鮮流通センターがこれで、三ヶ所の卸売りセンターを統合して出来た施設だ。ここは独立した株式会社で、補助金などはいっさい使っていない。ちなみにメフレで手かぎは使用禁止である。

3.加工があるか無いかで、
経営の考え方がだいぶ違ってくる。公的にしろ企業にしろ経営が出来ていかなければ成り立たないが、そのために加工が貢献するかしないかが加工の施設である。
魚介類が入荷して、競りをして販売し、出荷する。これが基本的な卸売市場だ。加工をしないで、価格が決められ、形が変わらないまま出荷される。魚津がそうだ。
これに対して、原材料を、内蔵抜取、カット、スライスなどの加工を加えたり、加熱調理、寿司、総菜や弁当にまで大きく付加価値を付けて販売する施設もある。これだと、キロ当たりいくらから、一個いくらと、価格構造を変えることも出来、大きく利益に貢献することが出来る。但し、施設設備と技術及び営業というノウハウが必要になってくる。また、出荷先別にピッキングして、スーパーマーケットなどの小売店の店に直接配送するサービスもできれば、どんどん取られている産地と小売企業の直接取引の売り上げを戻すことも出来る。これを行なっているのがメフレだ。
どちらがというのは、資金背景、経営コンセプト、マーケティングなど、多くの条件から決まっていく。HACCPとは関係ないように見えるかもしれないが、卸売市場の近代化はHACCPが基本的なキーワードになるが、経営が出来なければ近代化は出来ないことになるので、基本的な重要事項になる。

4. 衛生的な取り扱いと教育の難しさが交叉する
直置き禁止とそのためのパレットや生け簀システム、手かぎの問題、トイレ、たばこ、入場時の個人衛生など、基本的な衛生管理は、食品工場では作業者に対しての教育訓練を徹底し、時間をかけて構築していけばよいのだが、卸売市場は違う環境にある。施設の使用者が顧客であるという点だ。
卸売市場の顧客は、小売店、フードサービスなどで、この顧客が施設内に入って競りに参加し、購入し、お金を市場に支払う。その顧客が施設内を使用するのだ。強いことはなかなか言えないというのが市場経営者の弱いところなのである。卸売市場では、市場側よりも顧客側の方が圧倒的に人数が多い。この顧客達に対して、いかにルールを守ってもらえるかである。

この他、競りの方式〔時間がかかりすぎる問題〕、コンピュータの活用、魚類と貝類の分離〔危害が違うから〕、使用水の問題など、解決すべきものが多いが、今後東京都の豊洲新市場のような超大型から、地方の小型まで、じわじわと近代化が始まっていくだろう。


富山県魚津漁港市場 ↓
漁船からの水揚げ入荷側

船からの水揚げはフィッシュポンプにも対応しているが、頻度はまだ少ない

出荷側

活魚の競り場

鮮魚の競り場
競りが始まるころ、夜明けに、きれいでした

競り

以上は、富山県の施設です。見学公開はしていません。
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